しれネコと いたずらかぜさん🌬️🍃
ある朝。
しれネコは鼻歌を歌いながら、お洗濯をしていました。
「きょうは いいてんき にゃ〜♪」
しろくまは、その横でタオルをたたんでいます。
「今日はすぐ乾きそうだね。」
そのときでした。
びゅううううーーーーーっ!!
風が元気いっぱいに吹いてきました。

「あっ!」
タオルが一枚。
シャツが一枚。
帽子がころころ。
そして……
しれネコの大切なパンツまで、
ふわ〜〜〜っと空へ。
「あーーーーっ!!」
「ぼくのラッキーパンツーーーー!!」
しれネコは全力ダッシュ。
しろくまも追いかけます。
パンツは木を越え、
川を越え、
花畑を越え、
まるで楽しそうに飛んでいきます。
「待ってぇぇぇーー!!」
ようやく捕まえたと思ったら、
また、
びゅーーーーーん!
「まだ飛ぶんかーーい!」
しれネコは芝生にころん。
しろくまもころん。
二人は草だらけです。
その様子を、
どこからか
くすくす……
くすくす……
と笑う声が聞いていました。
見上げると、
木の枝の上に、
ふわふわ透き通った小さな子が座っています。
髪の毛は雲。
服は木の葉。
歩くたびに小さな風鈴の音。
「こんにちは!」
「ぼく、かぜさん!」

しれネコはぷくーっとふくれました。
「こんにちはじゃないにゃ!」
「パンツ返してにゃ!」
風さんは目をまん丸にして笑います。
「ごめん、ごめん!」
「でもね。」
「今日はみんな下ばっかり見て歩いてたから。」
「空を見てもらいたかったんだ。」
「え?」
しれネコは空を見上げました。
真っ白な雲が、
アイスクリームみたい。
大きな鳥が輪を描いて飛び、
木の葉が光を浴びて踊っています。
「わぁ……。」
「きれい。」
しろくまも、
思わず見とれていました。
風さんは笑います。
「ぼくね。」
「物を飛ばすために吹いてるんじゃない。」
「みんなの気持ちを、 ちょっとだけ上へ向けたいんだ。」
しれネコは少し照れました。
「でも……。」
「パンツは飛ばさなくてもいいと思うにゃ。」
「それは……。」
風さんも照れました。
「つい。」
三人は大笑い。
そのあと、
森を一緒に歩くことになりました。
風さんは歩くたび、
いろんなものを教えてくれます。
「ほら。」
「このタンポポ。」
ふわっと綿毛が飛びます。
「次の町へ行くんだよ。」
「こっちは?」
「花のにおいを運んでる。」
「この葉っぱは?」
「秋になったら旅に出る。」
しれネコは驚きました。

「風って忙しいんだにゃ。」
「うん。」
「世界中を毎日歩いてる。」
「泣いてる子にも。」
「笑ってる子にも。」
「会えなくなった人を思ってる人にも。」
「ぼくは同じように吹いてる。」
しれネコは、
少しだけ黙りました。
風さんは静かに続けます。
「悲しい日は。」
「風が冷たく感じる。」
「嬉しい日は。」
「同じ風でも気持ちいい。」
「ぼくは変わらない。」
「変わるのは、 その人の心なんだ。」
しろくまは小さくうなずきました。
夕方になりました。
帰ろうとした、そのとき。
また、
びゅうううううーーー!!
「あーーーーっ!」
またパンツが飛んだ。
「またかーーーー!!」
しれネコは追いかけます。
風さんも大笑い。
森のみんなも大笑い。
ところが今回は、
風さんがふわっと指を鳴らすと、
パンツだけが、
くるくる回って、
しれネコの頭に
ぽすっ。
帽子みたいに乗りました。

しれネコはしばらく気づきません。
「パンツどこーー?」
森のみんなは笑い転げています。
しろくまはお腹を抱えて、
「頭!頭!」
しれネコが鏡を見ると……
「うわぁぁぁ!」
「ぼく、パンツ帽子になってるーー!」
その日いちばん大きな笑い声が、
森いっぱいに広がりました。
帰り道。
夕焼けの空を見ながら、
しれネコはつぶやきます。
「風って。」
「いたずらばっかりかと思ってた。」
しろくまは笑いました。
「でも今日は、 大事なものも運んでくれたね。」
「うん。」
「空を見る時間。」
「笑う時間。」
「そして、 少しだけ軽くなる気持ち。」
そのとき、
どこからか、
やさしい風が吹きました。
びゅう。
「また来るねー!」
風さんの声だけが聞こえます。
しれネコは空に向かって大きく手を振りました。
「でも次は!」
「パンツ以外でお願いするにゃーー!!」
風は、答える代わりに、
木の葉を一枚だけ、
くるりと踊らせていきました。
おしまい。 🐾
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