草原が持つ生物多様性の価値
シンク・ネイチャーが公開した「歴史の古い草原分布地図」の記事を読み進めていると、ある方の名前が目に入り、思わず背筋が伸びました。
記事では、100年以上にわたり人為的な管理が継続されてきた「歴史の古い草原」の分布が、日本で初めて地図として公開されたことが紹介されています。
私が目を留めたのは、共著者の Tanaka Kenta 氏のお名前です。
私は前職で、農研機構との椀子ヴィンヤードの生態系調査を通じて、日本の草原が持つ生物多様性の価値を知りました。
日本では、自然というと森林に目が向きがちですが、単位面積当たりの希少種の数は、草原の方が多いことが知られています。かつて草原は、家畜の飼料や茅葺き屋根の材料、肥料などとして利用されていたため維持されてきました。しかし、その利用価値が失われるとともに急速に減少し、さらに戦前・戦後の大規模な植林がその減少に拍車をかけました。
東北大学のネイチャーポジティブ拠点に参加した際、この草原を研究テーマとしておられたのが田中先生でした。少しずつお話しする機会が増え、「いつか草原をテーマに一緒に活動や研究ができれば」と思い、打ち合わせ依頼のメールを書いていたその最中に、先生の訃報が届きました。
このような素晴らしい研究について、もっと直接ご教示いただけたかもしれないと思うと、今でも残念でなりません。
現在は、酒匂川の河川敷で草原を守る小さな活動ができないか、農研機構から東京農業大学へ移られた先生と準備を進めています。
この記事で紹介されている地図は、自然共生サイトの候補地を見つけるうえでも非常に有効なツールになる可能性があります。
自然共生サイトの候補地は、ヴィンヤードや河川敷だけではありません。ゴルフ場や企業が保有する広い緑地など、草原としての価値を持つ場所は全国に数多く存在するはずです。
この地図が活用され、そのような場所が適切に評価され、自然共生サイトとして保全・管理される取組につながることを期待します。
