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10兆ドルの機会をもたらすコグニティブ革命の道のり(セコイア・キャピタル)

 老舗ベンチャーキャピタルのセコイア・キャピタルは、彼らが「コグニティブ革命」と定義するAI革命における主要な5つのトレンドとして、「不確実性へのレバレッジ」「現実世界での測定」「強化学習」「物理世界におけるAI」「知識労働者あたりの計算量」を挙げています。
 さらに、彼らの向こう1年半の投資テーマとして、持続的な記憶、シームレスな通信プロトコル、AI音声技術、AIセキュリティ、そしてオープンソースの重要な位置づけについてが提示されており、これらがコグニティブ革命の進展を加速させるであろうことを展望しています。ご参考下さい。






1. Sequoia プレゼンテーション

 

 セコイア・キャピタルはAI革命を信じており、これは産業革命と同じか、それ以上の変革だと考えています。
 この短いプレゼンテーションでは、このコグニティブ革命がどういうもので、なぜそれが10兆ドルの機会をもたらすのか、これから4つのセクションに分けてお話しします。

 最初のセクションは、人工知能に関する私たちの見解です。続いて、コマーシャル機会についてです。そして、AIの現状で見られるいくつかの投資トレンドについてお話しします。最後に、今後1年から1年半の間に、どのような投資テーマがあるかについてお話しします。

 私たちは、人工知能が産業革命に似ていると考えています。特に、産業革命の3つの重要点を挙げたいと思います。まず、産業革命のきっかけとなった蒸気機関の発明です。次に、必要な部品をすべて1つの屋根の下に集めた初めての工場システム。そして、私たちが今日知っている最初の工場組立ラインです。

 このスライドで注目すべきは、これらの出来事の間の時間です。最初の蒸気機関から最初の工場まで67年かかっています。しかも、その最初の工場は蒸気機関を使わず、水力で動いていました。そして、その最初の工場から、私たちが今日知っている工場組立ラインまで、さらに144年かかっています。なぜこんなに時間がかかったのでしょうか。特に、この144年の間に何が起こっていたのでしょうか。

 私たちは、これほど時間がかかった理由は、「分業化の必要性」にあると考えています。
 ある程度の規模を超えて複雑なシステムが成熟するためには、汎用的なコンポーネントや労働力と高度に専門化されたコンポーネントや労働力を組み合わせなければなりません。言い換えれば、汎用的な技術を取り入れ、それを専門化して、特定の成果を生み出すことが行われるのです。

 私たちは今、コグニティブ革命の中にいます。
 蒸気機関は、1999年の最初のGPU、GeForce 256だったと言えるかもしれません。そして、AIのトークンを生成するために必要なすべてのコンポーネントをまとめた最初のAIファクトリーは、2016年の出来事でした。
 では、このコグニティブ革命におけるジョン・ロックフェラー、アンドリュー・カーネギー、ウェスティングハウス、そしてウェッジウッドは誰でしょうか。私たちは、この専門化の必要性を担っているのは、今日のスタートアップであり、これから生まれるスタートアップこそが、それらのアプリケーションを構築していくと考えています。

 では、お金の話をしましょう。

 このスライドは、以前、当社のイベント「AI Ascent」でも使ったので、もしかしたらご覧になったことがあるかもしれません。左側にある3,500億ドルの円は、クラウドへの移行が始まった頃のソフトウェアへの支出を表しています。

 そのとなりの小さな60億ドルの部分は、サービスとしてのソフトウェアへの支出です。当時、サービスとしてのソフトウェアは、オンプレミス・ソフトウェア市場でのシェアを伸ばしただけでなく、市場全体を拡大させ、今日では6,500億ドル以上に成長しています。私たちは、人工知能においても同様のことが起こり、さらに大きな機会が生まれると考えています。

 それは10兆ドル規模に相当するサービス市場であり、今日AIによって自動化されているのは、そのうちのわずか200億ドル程度です。このことは、パイのシェアを拡大するだけでなく、パイそのものを拡大させる10兆ドルの機会をもたらすというものです。

 次に、このスライドは初めてご覧になるかと思います。これは、当社の社内メモの一部で、サービス職種を一番右の列で並べ替えたものです。

 この列は、米国の国勢調査局による従業員数と年間賃金の中央値を掛け合わせたものです。ご覧の通り、これらは非常に大きなTAM(獲得可能な最大市場規模)を示しています。そして、セコイア・キャピタルがこれらの分野に投資していることにもお気づきでしょう。
 例えば、認定看護師の分野ではOpen EvidenceFreed、ソフトウェア開発者の分野ではFactoryReflection AI、法律分野ではHarveyCrosbyFinchなどです。

 セコイア・キャピタルでは、特に市場におけるTAMについて考えることが好きです。創業者のドン・バレンタインは、常に市場、市場、そしてその重要性について話していました。
 このグラフは、S&P500企業の時価総額を示しています。非常に大きな会社がいくつかあることにお気づきでしょう。一番左にあるのが、時価総額4兆ドル以上のエヌビディアで、ここに示されているパーセンテージは過去1年間のパフォーマンスを示しています。

 このスライドには、Kirkland & Ellis法律事務所Baker Tilly会計事務所は載っておらず、これらの企業は数十億ドルの売上を上げていますが、載っていません。
 私たちは、コグニティブ革命が市場を拡大し、このスライドにAIを中心に構築されたサービス分野の多くの大規模な独立系公開企業を含める機会をもたらすと信じています。

 次に、人工知能のコグニティブ革命の中で、私たちが今まさに気づいている5つの投資トレンドについてお話しします。

 1つ目は、不確実性に対するレバレッジです。
 私たちは仕事が、「タスクに対するレバレッジが最小で結果の確実性が100%の状況」から、「タスクに対するレバレッジが100%を超え、結果の確実性がはるかに低い状況」へと移行していることに気づきました。

 もしあなたが営業担当者で、見込み客である一連の顧客アカウントを管理しているとします。今日では、それぞれの機会を監視しながら、すべてのアカウントを自分で管理しているかもしれません。しかし、AIエージェントの未来では、数百のAIエージェントを使いこなすことができます。顧客ごとにAIエージェントを配置し、その進捗を追跡し、変化を見つけ、その顧客との再エンゲージやパートナーシップを拡大する機会をあなたに示してくれるでしょう。 

 このAIエージェントは、あなたがすることとまったく同じように行動するわけではありません。何かを見落としたり、間違いを犯したりするかもしれません。そこで人間が介入し、それを修正するのです。
 このケースにおいては、100%以上のレバレッジ、いや、さらに不確実性を許容すれのであれば、1,000%のレバレッジすらもたらされることが可能だと考えています。そしてそれは、あなたがやっている仕事とは全く同じではないのです。

 次に、私たちは、「現実世界での測定」へと移行していることに気づきました。
 人工知能の歴史のほとんどにおいて、私たちは学術的なベンチマークを使用していました。私が10年以上前にAIエンジニアだった頃は、コンピュータービジョンの研究のベンチマークとしてImageNetを使っていました。しかし今日では、その卓越性を証明したいなら、現実世界でそれを証明します。

 Expoを考えてみてください。自社の人工知能が世界最高のAIハッカーであることを示したかった彼らは、これを単に学術的なベンチマークで証明するのではなく、現実世界に出て行き、HackerOneで、そのウェブサイトに登録している世界中のすべてのハッカーと競って、脆弱性を見つけ出すことにしました。

 そして彼らは、現実世界のデータ上で、競って勝ち、世界ナンバーワンのハッカーであることを示すことができました。そして私たちは、これが新たなゴールドスタンダードであることに気づきました。もはや学術的なベンチマークだけでなく、現実世界での測定が重要視される世界になっているのです。

 3つ目は、強化学習です。AI業界は、長い間、強化学習について語ってきました。

 私たちは、この1年で強化学習が主役になっているのを見てきました。大規模な推論研究施設だけでなく、私たちのポートフォリオ企業も、この恩恵を受けているのを目にしています。例えば、Reflection AIは、強化学習を使って、コーディング分野で最高のオープンソースモデルのいくつかをトレーニングしています。

 私たちが気づいた4つ目のトレンドは、物理世界におけるAIで、それは本当に現実のものとなっています。
 それは人型ロボットだけでなく、人工知能を使ってプロセスを創造したり、ハードウェアを創造したりすることでもあります。例えば、Nominalは、人工知能を使ってハードウェアの製造プロセスを加速させ、さらに、配備後の品質保証にも人工知能を使用しています。

 最後に、新しい生産関数(production function)が「コンピュート」であることに気づきました。それは、「知識労働者あたりのフロップス」で表されます。
 もし当社のポートフォリオ企業を調査したとすれば、彼らは「知識労働者あたりのフロップス」が最低でも10倍に増加すると予測しているでしょう。これは、知識労働者あたりの計算消費量が最低でも10倍になるということです。なぜなら、先ほど説明したように、知識労働者は、1つ、あるいは数十、数百、数千のAIエージェントを使用する可能性があるからです。

 より楽観的に見れば、知識労働者あたりのフロップス消費量が1,000倍、あるいは10,000倍になる未来もあると考えています。これは、推論を行う企業だけでなく、その推論を保護する企業やこの新しい生産関数を使って、より多くの労働者へ行き渡らせようとする企業にとっても、非常に強力なこととなります。

 次に、5つの投資テーマについてお話しします。 これらは、私たちが今後1年間で投資していく重要なテーマです。

 最初のテーマは、「永続メモリ」(Persistent memory)です。
 永続メモリは、少なくとも2つのことを意味します。1つ目は、長期記憶です。AIが、長期間にわたって共有された文脈を記憶することです。そして2つ目は、人工知能のアイデンティティの持続です。

 つまり、エージェントが、ある程度の期間、自身の個性やスタイルを保つことです。
 AIが、より多くの仕事に参入するためには、これを突破することが極めて重要になります。生産性を向上させる分野に進出する人工知能は、長期記憶を持ち、組織や機能全体の文脈を理解する必要があります。

 私たちは、持続的メモリの分野には、スケーリング則に相当するものがないことに気づきました。
 ベクトルデータベースやRAG、あるいは、より長いコンテキスト・ウィンドウなど、多くの試みがなされてきましたが、この課題はまだ突破されておらず、今後大きな機会が控えています。

 次は、「シームレスな通信プロトコル」です。今、MCPには多くの期待が寄せられており、それは当然のことです。
 しかし、インターネット革命を振り返ってみましょう。TCP/IPはゴールではなく、スタート地点でした。そして、この通信革命において、私たちはAIを実際に互いにシームレスに通信させる機会が存在しており、私たちは、これが多くの重要なアプリケーションを生み出すと考えています。そして、その1つには「ショッピング」が挙げられます。

 現在、AIを使って商品を購入したい場合、AIでいくつかの調査を行い、お気に入りのワンクリック決済プロバイダーでその注文を実行するかもしれません。しかし、将来的には、シームレスな通信プロトコルのおかげで、AIがそれを行うことができるようになると考えています。

 AIは、プロセス全体を通して、最安値を見つけ、あなたのために購入を実行し、それを完了させることができ、その過程で、他社よりも利用しやすい環境を提供してきた企業の競争優位性を低下させることになるでしょう。

 3つ目のトレンドは、「AI音声」です。私がAIビデオを挙げなかったことに驚かれるかもしれませんが、それには意図があります。 1年後にはAIビデオが到来するかもしれませんが、AI音声は今、まさに現実のものとなっています。それは、その精度が向上し、音声の品質が日常的に使えるレベルにまで高まっただけでなく、遅延が減少したことで、AI音声とリアルタイムで会話ができるようになったからです。AI音声には、多くのエキサイティングなアプリケーションがあります。

 これには、AIフレンド、AIコンパニオン、AIセラピストなど、消費者向けのアプリケーションのすべて含まれます。私個人としては、企業向けの他のAI音声アプリケーションに非常に期待しています。企業では、商品を発送するために物流に取り組んでいる場合、それらの物流の多くは、依然として音声を通じて行われています。

 今や、こうした物流調整の多くを自動化する未来に向けて実際に取り組むことができます。もしあなたが、大量の債券を売買したい場合、店頭取引デスクとの音声通話で行うでしょう。企業分野におけるこうした業務はすべて、AI音声技術を活用することで加速させることが可能です。

 次は、「AIセキュリティ」です。 私たちは、AIセキュリティの分野に巨大な機会があると見ています。それは、開発レイヤーからコンシューマーまで、あらゆるレベルに存在しています。開発レイヤーでは、大規模な基盤モデルの研究施設やAI研究施設が、安全な方法でテクノロジーを開発するのをセキュリティ面から支援するという機会があります。次に、ディストリビューションの段階では、安全な方法で配布され、悪意のあるアクターがそのプロセスに介入しないようにします。

 そして、ユーザー自身がプロダクトを利用したり、新しいアプリをバイブ・コーディングしているときに、誤って脆弱性を残してしまわないようにすることです。
 具体例としては、AIから端末でソフトウェアをダウンロードするように指示された消費者がいるとします。その消費者は、端末にあまり詳しくないかもしれませんし、AIもそのソフトウェアが、その消費者の他の環境に脆弱性を引き起こす可能性があることを知らないかもしれません。

 私たちは、AIが個人とAIエージェントの両方を保護する世界に突入しようとしています。実際、物理世界とは異なり、このデジタル世界では、人間一人につき、そして、エージェント一つにつき、何百ものAIセキュリティエージェントを配置できる未来が私たちには見えます。そしてそれは、物理世界とは異なり、物理的な空間や同じコストに制限されることはないのです。
 人一人あたり、エージェント一つあたり、膨大な数のAIセキュリティエージェントを持つことができるのです。

 最後に、オープンソースは、AIの旅において極めて重要な局面にあると考えています。
 もし2年前に尋ねられていたら、私たちは、オープンソースが最先端の基盤モデルと競争し、ひょっとすると勝利する可能性もあるだろうと答えていたでしょう。

 しかし今日では、その立場ははるかに不安定に見えます。しかし、私たちは、オープンソースが、最先端の基盤モデルと競争し、最高のモデルのいくつかを提供することが非常に重要であると考えています。より自由でオープンな未来のために、誰もが構築できることが重要だと考えています。
 私たちは、誰もが優れた製品を構築するために、オープンソースモデルを利用でき、AIの未来が、資金力のある巨大企業だけに限定されないよう、その未来の構築を支援したいと考えています。

 これらは、私たちが考えている5つの投資テーマです。では、これらの投資テーマを、進歩へと変えることができたらどうなるでしょうか。

 私たちは、何年もかかるであろう認知による組立ラインまでの時間を進歩によって、わずか数年にまで大幅に短縮することができると信じています。

 ご清聴いただき、誠にありがとうございました。
このコグニティブ革命を、ぜひ一緒に構築していければと思います。





2. オリジナル・コンテンツ

 オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご覧になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。

Sequoia Capitalより
(Original Published date : 2025/08/28 EST)


[出演者]
  Sequoia Capital
    コンスタンティン・ビューラー(Konstantine Buhler)



御礼

 最後までお読み頂きまして誠に有難うございます。
役に立ちましたら、スキ、フォロー頂けると大変喜び、モチベーションにもつながりますので、是非よろしくお願いいたします。 

だうじょん


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 本執筆内容は、執筆者個人の備忘録を情報提供のみを目的として公開するものであり、いかなる金融商品や個別株への投資勧誘や投資手法を推奨するものではありません。また、本執筆によって提供される情報は、個々の読者の方々にとって適切であるとは限らず、またその真実性、完全性、正確性、いかなる特定の目的への適時性について保証されるものではありません。 投資を行う際は、株式への投資は大きなリスクを伴うものであることをご認識の上、読者の皆様ご自身の判断と責任で投資なされるようお願い申し上げます。


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