我々は、AIを人が学ぶ時代からAIが人を学ぶ時代の真っただ中にある(コースラ&ディアマンディス)
ピーター・H・ディアマンディス氏がメイン・ホストを務めるシンギュラリティ大学のイベント「Abundance Summit」で、2025年3月11日に収録されたコースラ・ベンチャー(Khosla Ventures)の創業者であるヴィノッド・コースラ氏(Vinod Khosla)とのファイアサイド・チャットのコンテンツを紹介します。トークのサブテーマには、以下が含まれています。ご参考下さい。
AIとロボティクスの未来
AIと経済・消費モデルの転換
AIによる科学と創造の進化
AIとプログラミングの未来
エネルギー革命と気候変動
交通の未来と都市構造の再設計
資源の制約と技術による解放
◆ ヴィノッド・コースラ氏(コースラ・ベンチャーズ創業者)の略歴
シリコンバレーの重鎮であり、コースラ・ベンチャーズの創業者。ニューデリーのIITで電気工学の工学士号を、カーネギーメロン大学で生体医工学の修士号を、そしてスタンフォード大学経営大学院でMBAを取得。サン・マイクロシステムズの初代CEOとして、オープンシステムや商用RISCプロセッサの先駆者でもある。現在は投資家として、そして投資家育成するメンターとして、ソフトウェア、AI、ロボティクス、3Dプリンティング、ヘルスケアなど、社会に影響を与えるテクノロジーの発展に注力。
1. ファイアサイド・チャット

[ピーター・ディアマンディス]
ようこそ、ヴィノッド。

[ヴィノッド・コースラ](Khosla Ventures)
ありがとうございます。

[ピーター・ディアマンディス]
本当に久しぶりですね。
[ヴィノッド・コースラ]
久しぶりですが、豊かさを信じている人々に会えるのは素晴らしいことです。
[ピーター・ディアマンディス]
そうですね、

[ヴィノッド・コースラ]
こうして多くの方々がそれを信じているのを見ることができて、本当にうれしいです。おめでとうございます。私の好きな言葉のひとつに、「懐疑主義者は決して不可能を成し遂げなかった」というものがあります。

[ピーター・ディアマンディス]
その通りです。
[ヴィノッド・コースラ]
そこがスタートポイントです。
[ピーター・ディアマンディス]
本当に。そして、私はもう何十年もあなたを知る機会に恵まれてきましたし、一緒に案件に関わることもありました。でも、あなたのビジョンにはいつも感銘を受けます。そして皆さんに知っていただきたいのは、ヴィノッドは優れた投資家であるだけでなく、起業家であり、企業を築く人でもあるということです。あなたはいくつもの素晴らしい会社を築いてきました。

[ヴィノッド・コースラ]
ありがとうございます。
[ピーター・ディアマンディス]
ちょっと、ひとつ読ませていただきたいのですが――
[ヴィノッド・コースラ]
正直に申し上げて、40年間、一度も自分のことを投資家と呼んだことはありません。
[ピーター・ディアマンディス]
そうですね。
[ヴィノッド・コースラ]
なぜなら、私は投資家という人たちがあまり好きではないからです。
[ピーター・ディアマンディス]
それでは、幅広い質問を用意しています。できるだけ多くの質問にお答えいただければと思います。そして、ぜひ皆さんもヴィノッドへの質問をメモしておいてください。2023年12月に、あなたは2040年までに100億体の二足歩行ロボットが存在し、それらが自動車産業以上の役割を果たすようになると予測されました。そして6か月前には、ロボットの価格が1万ドル程度になり、スマートフォンと同じくらい不可欠な存在になる可能性があるともおっしゃっていました。そのあたりのお考えを聞かせてください。
[ヴィノッド・コースラ]
非常に大きなビジネスになるはずです。それに関連して、状況認識の観点からですが、皆さんの中で、状況認識(the situational awareness)に関する論文を読んだことがある方はいらっしゃいますか?読んでいない方は、ぜひ読んでください。
[ピーター・ディアマンディス]
ええ。そして、もし全文を読む時間がない場合は、その論文をNotebook LMに入れて、ポッドキャストで聴いてみてください。
[ヴィノッド・コースラ]
それは良いアイデアですね。
[ピーター・ディアマンディス]
本当に素晴らしい論文なんです。
[ヴィノッド・コースラ]
ええ、素晴らしい内容です。私が伝えたいのは、こうした二足歩行ロボット、もしくはそれに類する様々な形態や構成のロボットのビジネスは、20年以内に自動車産業を超える規模になるということです。そして自動車産業はそのことに気づいていません。ですから、仮に10億体の二足歩行ロボットが存在するとして、それは過小評価かもしれませんが――
[ピーター・ディアマンディス]
同意します。
[ヴィノッド・コースラ]
第一に、これらのロボットは、現在世界の70億人が行っている肉体労働の総量以上の作業を担うようになります。そして、ロボットの数は10億体よりもはるかに多くなる可能性もあります。彼らは一日8時間働いて休憩を取るのではなく、24時間体制で稼働します。
[ピーター・ディアマンディス]
そうですね。
[ヴィノッド・コースラ]
つまり、労働力の総量は劇的に増加します。そしてAGIによって、人間の思考力や専門知識も大幅に向上し、それがほぼ無料で提供されるようになります。その話はあとでまた戻ってきてもいいですが、これはあまりにも大きな機会であり、本来なら最も理解しておくべき自動車業界の人たちでさえ、ほとんど誰もそのことに気づいていません、イーロンを除いては。彼はロボットに取り組んでいますね。
[ピーター・ディアマンディス]
ええ。イーロンは、ロボットがテスラにとって最大の事業分野になると言っています。Optimusがその中心になると。
[ヴィノッド・コースラ]
私もそう信じています。
[ピーター・ディアマンディス]
あなたは以前の予測で、AIを活用したチューターや医師によって、専門知識が24時間体制で無料になると述べられていました。それを踏まえて、ここにいる医療や教育関連の企業を経営しているアバンダンス・メンバーにとって、どのような影響があるとお考えですか?
[ヴィノッド・コースラ]
では、こう言わせてください。2012年に私はブログを2本書きました。1本目は「私たちは医者を必要としているのか?(Do We Need Doctors?)」というもので、少し会話調にしたタイトルでした。そして今はっきりしているのは、医師は医療において補助的な役割を担うようになるということです。人とのつながりの部分では役割を果たし続けるでしょうが、それは限定的です。そして2本目のブログは「私たちは教師を必要としているのか?(Do We Need Teachers?)」というものでした。ちょうど今日、北京でAIチューターを子ども向けに導入するという中国政府の記事を見ました。
これを書いたのは2012年のことです。おそらく、どんな分野の専門知識であっても――AI医師、AI教師、AI腫瘍専門医、AI構造エンジニア、AI会計士など――すべてがAIによって実現可能になります。そしてちなみに、私たちはこれらすべての分野に投資しています。米国の労働統計局のデータで、10万人以上が働いている職種にはすべて投資すべきだと考えています。
その影響については、まず時間軸の話が必要になります。これからの5年間、皆さんはこう考えるべきです。すべてのプロフェッショナルがAIのインターンを5人持つことができる、と。医師なら、スタンフォード大学の医学部を卒業したような5人のAIインターンをスーパーバイズできます。会計士なら、新卒のジュニア会計士を雇っているのと同じように、5人のAI会計士インターンを雇えると想像してください。彼らが3年、5年、10年でどれだけ成長するかは分野によって異なり、それを予測するのは難しいです。
けれども、この「まず専門知識を活用する」というモデルは考えるうえで非常に良い出発点になります。そして、もっと興味深い問いとして、私は医療分野の取締役会にこう質問しています――「もしあらゆる専門知識が無料になったら、どんな医療システムを設計しますか?」と。これが正しい問いの立て方だと思います。

[ピーター・ディアマンディス]
まさに、それは正しいモデルです。
[ヴィノッド・コースラ]
医療提供者であるなら、どのような立場でも、このモデルが出発点になります。さらに少し踏み込んで言えば、国家レベルの政策として、農業従事者と腫瘍専門医がAIによって同じレベルの専門知識を持っているとしたら、どのように人に報酬を与えるべきでしょうか?非常に興味深い問いだと思います。
[ピーター・ディアマンディス]
あなたは、インターネットにおいて最もコンシューマに近い存在となるのは、コンシューマの代理として行動するエージェントになるとおっしゃっています。でも、私のエージェントがGoogleの広告に興味を持つとは思えませんし、白い歯の人が出てくる歯磨き粉のCMにも関心はないでしょう。もしエージェントが購買を担うようになったら、広告はどうなっていくのでしょうか?
[ヴィノッド・コースラ]
実は、それについては少し意見が違うかもしれません。
[ピーター・ディアマンディス]
そうですか。
[ヴィノッド・コースラ]
最初に言えるのは、この分野全体において確かなのは、予測不可能であるということです。私が言っていることも含めて、予測は外れる可能性があります。
[ピーター・ディアマンディス]
つまり、未来についてわかっている唯一のことは、おそらく間違っているということですね。
[ヴィノッド・コースラ]
そうです。未来は不確実です。私たちは段階的に理解していくしかありません。
[ピーター・ディアマンディス]
ええ。
[ヴィノッド・コースラ]
でも、そもそも広告とは何でしょうか。広告は、人々を感情的に動かして、30ドルのリーバイスで十分なのに300ドルのジーンズを買わせるための情報なんです。これはAIが適切にフィルターをかけられるものです。だから、広告の性質そのものが、私は変化していくと思います。もっと本来の情報を提供するという方向に戻るはずです。現在の広告は、本来の目的からずれてきています。私が資本主義に対して不満を持っている点のひとつは、多くの場合、資本主義が人々に買うつもりのなかったものを買わせるということに力を注いでいる点です。それが今の広告の姿です。でも、本来はそうではありませんでした。
人々に欲しくもない、買うつもりのなかったものを買わせると、結局彼らは不幸になります。それは社会全体の幸福にはつながりません。でも、情報というのは価値があります。そして、人々は他のビジネスモデルにシフトしていくと思います。
たとえば、ChatGPTは非常に大きな成功を収めています。コンシューマが月に20ドルを払うとは誰も思っていませんでした。でも実際には、GoogleやFacebookよりも一人当たりの売上は高くなっています。実は、もっと早くこのモデルを試すべきだったと思います。十分な価値を提供できていれば、という話ですが、AI登場以前は、GoogleやFacebookは確かに多くの価値を提供していました。
では、この先どこまで行くのでしょうか。ChatGPTの月額200ドルのプランは驚くほど価値があります。使ったことがある方、どれくらいいらっしゃいますか?かなりの方が手を挙げていますね。Deep Researchを使ったことがある方は?あれは本当に素晴らしいです。圧倒的に価値があります。
ちょっと面白い話をしましょう。私のスタッフのチーフはウイルス免疫学の博士で、あるアプリケーションについて調査をしてもらっていました。発生生物学(developmental biology)のための基盤モデルについてです。彼女は18ページにわたるレポートを作成してくれて、どの疾患領域に取り組むべきかという提案までしてくれました。彼女がレポートを仕上げたあと、私は彼女に「Deep Researchに投入して、考える時間を与えるだけで良い」と言いました。すると偶然にも、Deep Researchから返ってきたのは同じく18ページのレポートで、しかも同じ2つの疾患領域を推奨していたのです。これは本当に衝撃的でした。

[ピーター・ディアマンディス]
本当にすごいですね。そのDeep Researchにはいくら払ったんですか?
[ヴィノッド・コースラ]
大したことはないですし、十分にその価値があります。まだ使ったことのない方にはぜひ試していただきたいです。ちなみに今、非常にテクニカルな例を話しましたが、私がOpenAIのCFOと話したとき彼女は小売業者と話をしたそうです。
[ピーター・ディアマンディス]
あなたはOpenAIに大きな投資をして、支援されていますね。
[ヴィノッド・コースラ]
はい。2018年に出資を決めました。
[ピーター・ディアマンディス]
そうでしたね。
[ヴィノッド・コースラ]
そしてやはり、何かを信じるということが大事なんです。私はそのテクノロジーを信じていました。それで、これまでの40年間のベンチャーキャピタルの経験の中で、過去最大、しかもそれまでの2倍規模の初期投資を行いました。それほど大きな投資をしたのは初めてでした。なぜなら私は本当に信じていたからです。そして、それは結果的にうまくいきました。
[ピーター・ディアマンディス]
本当にうまくいきましたね。
[ヴィノッド・コースラ]
でも私が伝えたいのは、ある小売企業のCEOがOpenAIのCFOと話をしていて、「自社の小売事業にどんな商品を加えるべきか」という大規模な戦略レビューをちょうど終えたところだったという話です。その電話の最中に彼女がDeep Researchを立ち上げて、その結果をすぐに彼に渡したんです。ほんの数十分で届いたレポートを見て、そのCEOは、「正直言って、自社の戦略チームがここ数か月かけて作成したものよりも、はるかに優れたレポートだ」と言っていました。今、私たちはまさに大きな転換点にいます。
[ピーター・ディアマンディス]
ここことは私がいつも人々に伝えていることのひとつです。つまり、皆さんはこのテクノロジーを、自分たちのポテンシャルのほんの一部しか活用できていないということです。取締役会の会議で、それを常に開いていますか?経営会議で活用していますか?チームに課しているのと同じ課題をAIにも与えていますか?

[ヴィノッド・コースラ]
ええ、そしてもうひとつ加えたいのは、このテクノロジーの活用範囲は本当に広いということです。たとえば、小売店が次に追加すべき商品は何かといった実務的なテーマから、科学会議での私が個人的に関心を抱いている特定のテーマのことまで。私はその会議で、理解できないことがあればすぐにChatGPTに尋ねて説明してもらいます。そのおかげで、議論をしっかり追えるだけでなく、的外れでない質問もできるようになりました。
[ピーター・ディアマンディス]
本当に、スーパーパワーと言えます。私が特に気に入っているのは、「まったく別の視点から見てほしい」と頼めることです。たとえば、「スティーブ・ジョブズだったらどう答えるか?」といった形で。
[ヴィノッド・コースラ]
ええ。
[ピーター・ディアマンディス]
私たちは、組織内にある知識や意見に縛られがちです。でも、なぜ自らをそんなふうに制限しなければならないのでしょうか?
[ヴィノッド・コースラ]
一番良い例が、「37手目」の例ですよね。
(訳注)2016年にGoogleのAlphaGoがプロ棋士のイ・セドル九段と対戦した際、第2局でAlphaGoが打った37手目のことか?
[ピーター・ディアマンディス]
ええ、もちろん。
[ヴィノッド・コースラ]
「37手目」のようなアイデアは、何世紀にもわたって人類が思いつかなかったものでした。なぜなら、私たちは常に前例の延長でしか物事を考えず、枠の外に出ることがなかったからです。ですから、これは人類にとって大きなアクセラレータになるのです。もうすぐAIが科学そのものや科学者の役割を担うようになったら――
[ピーター・ディアマンディス]
将来的にノーベル賞の多くは、AIと人間のパートナーシップ、あるいはAI単独の成果によって受賞されることになると思われますか?
[ヴィノッド・コースラ]
AI単独という可能性もあると思います。そうなるでしょう。ただし、それを私たち人間が・・・
[ピーター・ディアマンディス]
それを認めるかどうか、ですね。
[ヴィノッド・コースラ]
AIがノーベル賞を受賞するにふさわしい存在だと認めるかどうかは、人間側の限界にかかっています。でも、それは多くの創造的な分野でも同じことが言えます。
[ピーター・ディアマンディス]
そうですね。では、プログラミングについて話しましょう。大規模言語モデルが文章以外で最も成功を収めているのは、おそらくプログラミングの分野ですよね。これからのプログラミングは、プログラマーがいなくなる未来なのか、それとも全員がプログラマーになる未来なのか、どうお考えですか?
[ヴィノッド・コースラ]
その両方だと思います。公平に言えば、私たちはCognition AIという企業に投資しています。Microsoftのようにプログラマーのためのコパイロットを提供するのではなく、Cognition AIは実際にプログラミングそのものをしてくれるのです。まさに先ほど説明したようなモデルで、現在はインターンプログラマーですが、経験を積むことで、より高いレベルの開発ができるようになります。一方で、私たちはReplitにも投資しています。
[ピーター・ディアマンディス]
どの会社ですか?
[ヴィノッド・コースラ]
Replitです。
[ピーター・ディアマンディス]
ああ、はい。
[ヴィノッド・コースラ]
Replitでは、プログラミングの知識も、使っている言語の名前さえ知らなくても構いません。英語で話すだけでコードを書いてくれるのです。たとえば、お子さんから「太陽系のモデルを作りたい」と聞かれたら、コードを一切触らなくてもReplitがそれを実現します。
また、これはすでに始まっていることですが、大企業に勤めている従業員であっても、IT部門を通さずに自分自身のアプリケーションを作れるようになります。大企業で働いた経験がある方なら、IT部門やセキュリティ審査を経なければならない煩雑さをご存じでしょう。それを一切気にせず、自分のアプリを英語でプログラムできるというのは、非常に解放感があります。
私がよく言うことですが、これまではコンピューターを使う人間がコンピューターを学ばなければなりませんでした。SAPやOracle、Workdayなどのアプリケーションの使い方を習得する必要がありました。でもこれからは、人間がコンピューターを学ぶのではなく、コンピューターが人間を学ぶようになります。人間がアプリケーションの仕組みに合わせて順応する必要はなくなるのです。そして、メニューという概念も、いずれ消えていくと思います。
[ピーター・ディアマンディス]
私は、初期のPalmPilotを思い出します。当時は、私たちがPalmPilotに合わせて特定の言語や使い方を覚えなければなりませんでした。でも、やがてコンピューターのほうが私たちに適応できるようになったのですね。
さて、エネルギーについてです。エネルギーというのは、本当に多くの分野に影響を与える最も重要な要素のひとつです。健康にも、AIにも、あらゆるものに影響します。あなたはこれまで数多くのエネルギー分野への投資や支援をしてきましたが、短期的および中期的には、今どのようにお考えですか?
[ヴィノッド・コースラ]
私は、エネルギーや気候変動に対して、かなり楽観的に見ています。エネルギーについてですが、ちょうどOpenAIに出資を決めた2018年、その年に私は他にも2つ、とても誇りに思っている投資をしています。ひとつはCommonwealth Fusionへの投資です。
[ピーター・ディアマンディス]
はい、そうですね。
[ヴィノッド・コースラ]
たまたま同じタイミングでした。意図的ではありませんでした。私は、AIには将来もっと電力が必要になると結びつけていたわけではないので、そこまで先見の明があったわけではないんです。そして3つ目は、もうひとつ私のお気に入りの投資案件で、時間があればぜひご紹介したいのですが、AIを使った公共交通です。これによって、従来の公共交通に対するすべての前提が覆されるのです。運転手付きの車があったとしても、それより便利な公共交通機関の方が優ります。それが私たちが向かっている世界です。私は、2050年までにほとんどの都市では自家用車が公共交通に置き換えられると思っています。でもまずはエネルギーについて話を続けましょう。
[ピーター・ディアマンディス]
Commonwealthは核融合の企業ですね。最後に調べたときには、ベンチャーキャピタルから資金提供を受けている核融合スタートアップが40社ほどあると知って、本当に驚きました。そんなこと、以前なら想像もできませんでした。

[ヴィノッド・コースラ]
ええ、2018年までは想像もできなかったんです。それ以前は、誰も核融合には投資したがらなかったんですよ。私たちが出資したときも、「馬鹿げてる。核融合はいつでも50年先の技術なんだ」と言われたことを覚えています。
[ピーター・ディアマンディス]
ええ確かに、核融合は「いつも50年先の話」と言われてきましたよね。
[ヴィノッド・コースラ]
そうなんです。そして、私が米国のエネルギー省を訪問したときも、彼らは核融合をエネルギー源として扱いたがりませんでした。でも、私たちは投資を決めたのです。
おそらく、これから5年以内には、核融合が可能かどうかの問い自体がなくなるでしょう。私の現在の見方としては、2030年までに実現可能なことはすべて実現すべきです。2030年には、核融合が経済的に可能かどうかについて議論する人はいなくなると思います。議論があるとすれば、それがどれくらいのコストになるかという点だけです。
[ピーター・ディアマンディス]
では、Commonwealthについてもう少し教えてください。今どの段階にいて、何を実証しているのでしょうか?
[ヴィノッド・コースラ]
詳細には踏み込みませんが、彼らは「正味のエネルギー出力」、つまり――
[ピーター・ディアマンディス]
生み出すエネルギーが使うエネルギーを上回るという実証を目指しているわけですね。
[ヴィノッド・コースラ]
2027年の初頭には、正味のエネルギー出力、つまり投入エネルギーを上回る出力の実証を予定しています。その直後には、最初の発電所の建設を始める計画です。すでに建設予定地も発表されています。
時間の都合上、要点だけ申し上げますと、彼らは核融合発電所を一から建設するわけではありません。私の予測のひとつは、炉を融合ボイラーに置き換えることで、米国内のすべての石炭火力・天然ガス発電所を再利用できるということです。
[ピーター・ディアマンディス]
そのビジョン、素晴らしいですね。
[ヴィノッド・コースラ]
たとえば、環境保護団体の中には、石炭火力をすべて停止すべきだと主張する人もいますが、私はそれらを融合ボイラーに置き換えることで再稼働できると考えています。タービンの交換や蒸気の条件など、技術的な詳細はもちろんありますが、10年もかかる許可申請や送電網の接続、電線の敷設などは不要です。既存の施設をそのまま活用して改修すれば良いのです。だからこそ、私はとても楽観的に見ていますし、このことは問題にはならないと思います。
そして、もうひとつ誰も語っていない技術があります。
[ピーター・ディアマンディス]
ぜひ教えてください。
[ヴィノッド・コースラ]
地熱発電です。
[ピーター・ディアマンディス]
ああ、そうですね。
[ヴィノッド・コースラ]
私たちはこれまで、軽く触れる程度でした。
[ピーター・ディアマンディス]
より優れた掘削技術が必要です。
[ヴィノッド・コースラ]
そうなんです。
現在、世界中にあるほとんどの地熱井戸は、温度が200度から250度程度です。それではある程度の電力しか得られません。でも、その井戸をさらに掘り進めて400度や450度の高温まで到達すれば、同じ井戸から10倍の電力を得ることができるのです。この超高温地熱は、天然ガスよりも安価になるでしょう。そして私は、これが2030年より前に実用化されると思っています。そして私たちは、2つの異なる取り組みを進めています。
最大の課題は、高温での掘削です。それは、金属は高温になると柔らかくなり、硬い岩を掘ることができないためで、また、硬い岩はフラッキングが難しいこともあります。しかしながら、どちらの技術も急速に進展しており、その発電能力にはきっと驚かされることになると思います。
[ピーター・ディアマンディス]
次は培養肉の話にいきますか?それとも交通についてでしょうか? 今一番ワクワクしているのは何でしょうか?
[ヴィノッド・コースラ]
今、一番興奮しているのは交通ですね。
[ピーター・ディアマンディス]
では、その話に進みましょう。未来の「A地点からB地点へ移動する」とは、どんな姿になるのでしょうか?
[ヴィノッド・コースラ]
では未来の交通についてお話しします。まず最初に、どうあるべきか、から始めたいと思います。そして、自動運転車の本来の役割についてです。
私たちがUberを都市に導入したとき、何が起きたでしょうか?渋滞が悪化しました。自動運転車を導入すると、その渋滞はさらにひどくなると予想されます。つまり、車が道路を埋め尽くすことになるのに、誰も運転していない――そういう状況になるんです。もちろん、自動運転車はクールですし、誰もが一度は体験してみるべきだと思います。実際に運転不要で目的地まで行けるのは感動的です。ですが、問題は渋滞です。
では、どうすればいいのか? 答えは、個人の乗り物である運転手のいない公共交通機関(Driverless public transit that is personal vehicles.)です。
たとえば、あなたがレストランで夜1時に仕事を終えたとします。そのタイミングで、あなた専用の車が迎えに来ます。運行スケジュールを調べる必要もありません。なぜなら、ドライバーがいないからです。つまり、あなたが乗るタイミングで車を稼働させるコストはゼロに近いのです。
この車は、時間帯や信号に関係なく、途中で他の人の乗り降りもなく、まっすぐあなたを目的地に届けます。だからこそ、運転手付きの車よりも常に早く到着します。これが自動運転車の正しい使い方です。その一方で、最終区間、いわゆるラストマイルにおいてはWaymoのような乗り物が役に立つ場面もあると思います。
ではここで、基本的な問いをひとつ。都市で最も限られているものは何でしょうか?
その答えは、道路の幅です。それ以外は変えられるんです。
建物を壊すわけにはいきませんから、もし市街地の道路の通行量を10倍にできたら、渋滞は解消されます。そして実際、私たちが設計している自動運転システムでは、これが可能です。自転車専用レーン幅の軽鉄道(Light Rail)より多くの輸送力を持つシステムが作れるのです。
このシステムは、通常の道路、あるいは区切られた専用エリアでも走行可能です。他の交通と干渉しない設計がポイントで、これにより最大の通行量を確保できます。
1本の通りに対して、実質的に10本分の輸送力を持たせることができる。既存の車両も通常通り通行できます。これは混雑料金よりもはるかに良い解決策ですし、ニューヨークには自家用車が通れない14番街がありますよね。さらに、都市部の住宅問題にも対応できます。郊外に住んでいても、30分の通勤時間をかけられるのなら、選択肢は一気に広がります。
[ピーター・ディアマンディス]
素晴らしいですね。それでは、Q&Aに移る前に最後の質問をさせてください。私はスティーブン・コトラーと一緒に『アバンダンス』を執筆して以来、資源の制限は存在しないとずっと主張してきました。テクノロジーとは、希少だったものを豊富にする力なのです。あなたもその考えに賛成ですよね?
[ヴィノッド・コースラ]
100%賛成です。そしてぜひ誰かに、いつも聞かれるあの質問をしてほしいですね。「でも鉱物や金属、鉱石の量には限りがあるのでは?」と。
実は、制約があるように見えるのは、私たちが正しく探していないから、もしくは適切なツールを使って探していないからです。そこで私たちは、地中の鉱物や金属を探すための別のプロジェクトも進めています。いま私たちが採掘しているのは、基本的に地表に近く、たまたま見つけたものだけなんです。
[ピーター・ディアマンディス]
そうですね、ほとんどは偶然見つけた、取りやすいものですよね。
[ヴィノッド・コースラ]
その通りです。でも、地表の1キロ下まで掘ることができれば、リチウムでもコバルトでも、あらゆる鉱物資源が豊富に見つかるでしょう。
[ピーター・ディアマンディス]
本当に驚きです。それでは皆さん、ヴィノッド・コースラさんに大きな拍手をお送りください。

2. オリジナル・コンテンツ
オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご覧になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。
Peter H. Diamandis
(Original Published Data : 2025/04/01 EST)
[出演者]
Khosla Ventures
ヴィノッド・コースラ(Vinod Khosla)
Founder
ピーター・ディアマンディス(Peter H. Diamandis)
3. 関連コンテンツ
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