あなたの“強み”教えます
青年・ミナトは、就職してからずっと悩んでいた。
「自分には強みがない」と。
会社の研修で“自己分析”を求められても、紙は真っ白のまま。
周りは「コミュ力」「計画性」「リーダーシップ」など、次々と書いていく。
ミナトは焦った。
ある日、彼は街角で奇妙な看板を見つけた。
《強み鑑定所 あなたの才能、見つけます》
半信半疑で入ると、白衣を着た老人が座っていた。
「強みを知りたいのかね?」
「はい。でも、僕には何も…」
老人はミナトの言葉を遮り、机の引き出しから分厚いファイルを取り出した。
そこには、ミナトの名前が書かれている。
「えっ、なんで僕の…?」
「わしは“成果”しか見ない主義でね。君の行動をずっと記録していたのだよ」
ページをめくると、ミナトが気づきもしなかった出来事が並んでいた。
・新人歓迎会で、緊張していた後輩にそっと飲み物を渡した
・資料の誤字を誰より早く見つけて修正した
・締切前、黙って残業してチームの作業を手伝った
・壊れたプリンターを直した
・落ち込んでいた同僚に、何気なく声をかけた
「これ…全部、僕がやったこと…?」
「そうだ。強みとは“できたこと”の中にしか現れん。君は成果を出しているのに、自分で気づいていないだけだ」
ミナトはしばらく黙り込んだ。
自分が“当たり前”だと思っていた行動が、誰かにとっては助けになっていたのだ。
「強みとはね」
老人はゆっくりと椅子から立ち上がり、言った。
「自分が“自然にやってしまうこと”が、誰かの役に立った時に初めて姿を現す。つまり、強みは成果の中にしかないのだよ」
ミナトが顔を上げた瞬間、老人も店も消えていた。
ただ、手元には一枚の紙だけが残っていた。
《あなたの強み:人をさりげなく助ける力》
ミナトはその紙を胸ポケットにしまい、会社へ向かって歩き出した。
足取りは、来た時よりずっと軽かった。

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