呼吸が通ると、背骨は静かに動き出す|臨床note④
呼吸は、
胸や肺だけがふくらむ運動のように見えます。
けれど実際には、それだけではありません。
呼吸に合わせて動いているのは、
胸の前側だけではなく、肋骨も、背骨も、そのまわりの筋肉もです。
私たちは、胸郭全体で呼吸しています。
胸郭とは、肋骨、胸椎、胸骨、そしてそれを支える筋肉を含んだ、呼吸のための立体的な器のようなものです。
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呼吸が浅くなると、
この器の動きは小さくなります。
とくに動きが落ちやすいのが、胸椎まわりです。
胸椎の動きが乏しくなると、
肋骨の広がり方にも偏りが出ます。
すると呼吸は、胸の前側だけで何とかしようとする形になりやすい。
肩が上がりやすくなり、首まわりにも余計な仕事が増えていきます。
見た目には息をしていても、身体の奥では、呼吸の広がりがかなり小さくなっていることがあります。
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臨床の場では、ときどき
「背中で呼吸する感じがする」
「背中にも空気が入るような感じがある」
そんな言葉を聞くことがあります。
もちろん、
実際に空気が背中に入るわけではありません。
でも、呼吸によって生まれる内側の圧の変化は、背中側にも確かに伝わっています。
ふだん意識が届きにくい背中側に、この感覚が戻ってくると、背骨の動きも少しずつ変わっていきます。
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呼吸は、ただ空気を出し入れするだけの機能ではありません。
体の内側の圧を変え、中心にリズムを生み出す運動でもあります。
その圧の変化が、背骨にとっては、可動性と安定性の両方を助ける支えになります。
だから背骨を動かそうとして、無理に伸ばしたり、強く捻ったりしなくてもいいことがあります。
むしろ、呼吸が全体に通りやすい状態をつくる。
刺激が満遍なく伝わるように寝返りを打ったり、ゴロゴロと転がったりする。
そうしたシンプルなことの方が、背骨が自然に動き始めるきっかけになることも少なくありません。
身体は、知恵の輪のようなものです。
どこを先にほどけば全体がゆるむのか、
その順番をよく知っています。
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呼吸のリズムが通ってくると、長らく凪いでいた背骨に、もう一度うねりが戻ってきます。
それは派手な変化ではありません。
けれど静かに、確かに、身体の中心から変化は始まります。
呼吸が変わると、背骨が変わる。
背骨が変わると、身体の使い方も変わっていく。
だから呼吸は、ただの空気の出入りではなく、
身体の中心にもう一度流れを取り戻すための、とても大切な入口なのだと思います。
