4月のオプション取引まとめ──「分析」は足りていた、足りなかったのは「実行」だった話
結論:4月は構築できたポジションは合格点だが、HPEで約$30の取り逃しが発生しました。 原因は分析ミスではなく、「条件が揃っているのに、もう少し良い価格を探して躊躇した」という実行の遅れです。
合計プレミアム:$194.80(手数料控除後・4銘柄合計)
3月は「流動性で銘柄を選ぶ」という基準を加えて約定精度を改善した月でした。4月は同じ流動性の話が、銘柄レベルではなく「行使価格レベル」で再び問題になった月です。
HPE(ヒューレット・パッカード・エンタープライズ)自体は流動性のある銘柄ですが、その中の特定の行使価格(24P)は総建玉が4枚しかなく、指値が通らずに失効。翌日に株価が急騰してから慌てて24.5Pで仕掛け直し、結果としてプレミアムが半減しました。
「銘柄選定はできた」「条件も読めていた」「それでも取り逃した」──このギャップをどう埋めるか、というのが今月の判断ログです。
この記事は「ホイール戦略の銘柄選定はできるようになったけど、実行で迷う方」向けの判断ログです。投資判断は自己責任でお願いします。
先月の取引記録はこちら:
戦略ルール(おさらい)
4月も前提ルールは変えていません。
ホイール戦略として、一ヶ月おきにプット売りまたはコール売りを繰り返します。指標は「デルタ0.25前後 × IVランク30%以上(25%くらいの確率で権利行使されそうな、そこそこ高いオプション料を選ぶ)」で考えています。
銘柄は固定せず、価格・IV・セクターバランス・流動性で判断します。最終目標はディフェンシブ2〜3銘柄、シクリカル2〜3銘柄で景気循環4局面をカバーすることです。
やっていることや考え方をまとめた記事
<用語の略称>
キャッシュ・セキュアード・プット:プット売り。以下、CSP
カバードコール:コール売り。以下、CC
4月時点のポジション概要
【今月変化があった銘柄】
ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE:情報技術):CC(23C)が4/17で権利行使され、$23で100株売却 → 第3サイクル完了。新規にCSP開始するも、行使価格選定で取り逃し発生
クラフト・ハインツ(KHC)→ ギャップ(GAP):エネルギー枠の代替として3月に採用したKHCから、シクリカル枠としてGAPへスイッチ
ケンビュー(KVUE:生活必需品):CC継続、行使価格18Cを維持
【先月から継続している銘柄】
シリウスXM(SIRI:通信):CSP継続、行使価格を21Pから23.5Pへ引き上げ
ホーメルフーズ(HRL:生活必需品):プレミアム再投資で9株買い増し(計23株)
4月の取引結果(一覧)
※いずれも手数料$2.30控除後の実質受取額ベースです。
KVUE:CC 18C
指値 $0.37 → 約定 $0.37/受取プレミアム $34.70/満期 2026/05/22/利回り 約1.93%SIRI:CSP 23.5P
指値 $0.50 → 約定 $0.50/受取プレミアム $47.70/満期 2026/05/22/利回り 約2.03%HPE:CSP 24.5P
指値 $0.30 → 約定 $0.34/受取プレミアム $31.70/満期 2026/05/22/利回り 約1.29%GAP:CSP 26P
指値 $0.83 → 約定 $0.83/受取プレミアム $80.70/満期 2026/05/22/利回り 約3.10%
今月の合計プレミアム収入:$194.80(税引前・ドル建て)
HPE|取り逃しの構造を分解する
ここが今月の記事で一番のポイントです。
4/17満期の結末──第3サイクル完了
まず前提として、3月に売っていたHPEのCC(23C 04/17満期)は、株価が$23を上回ったまま満期を迎え、権利行使になりました。$22.5で取得していた100株が$23で売却され、株式売買益+$50が確定。これでHPEの第3サイクル(22.5取得→23売却)が完了しました。

HPEは2025年10月にCSP 21Pから取引を開始しました。
第1サイクル(CSP 21P→CC 23C権利行使)、
第2サイクル(CSP 22.5P→CC 23C権利消滅で株保有継続→新CC 23C権利行使)と回し、
今回が第3サイクルの完了になります。約半年で3サイクル回せているのが、高速回転枠としてのHPEの位置づけです。
ここまでは想定通りの展開です。問題は、その後のCSP再開で起きました。
4/20の失敗──24Pで指値が通らず失効
HPEのCC権利行使を受けて、次のサイクル(第4サイクル)に向けてCSPを仕掛けようとしました。
4/20時点の株価は$27.09。デルタ0.25前後を狙って24Pを選定し、指値で発注しました。

行使価格:24P(仲値$0.380)
出来高:0
総建玉:4
IV:47.83%
デルタ:-0.1739
結果、この注文は約定しないまま失効しました。理由は単純で、24P自体の流動性がほぼなかったからです。出来高0、総建玉4枚という板の状態では、指値が通る可能性は元々低かったわけです。
ここで気付くべきだったのは、隣の24.5Pの板の厚さです。
24P:総建玉4
24.5P:総建玉2,395 ← 圧倒的に板が厚い
24.5Pなら仲値$0.655、デルタ-0.2369で目標に完全にマッチ。条件は揃っていました。それなのに、なぜ24Pを選んだのか。「もう少しデルタを抑えたい」「24なら割当でもいいかな」と、最適化を考えた結果だったと思います。
4/21の修正──株価急騰でプレミアム半減
翌4/21、株価は$27.94まで上昇(前日比+$0.85)。慌てて行使価格を24.5Pに変更して再発注しました。

行使価格:24.5P(仲値$0.295)
出来高:9
総建玉:2,399
IV:45.00%
デルタ:-0.1470


指値$0.30で発注 → $0.34で約定。実質受取は$31.70。約定自体はスムーズでした。
問題は、取り逃したプレミアムの大きさです。
4/20の24.5P仲値 4/21の24.5P仲値 差分 プレミアム $0.655 $0.295 −$0.36
仮に4/20の段階で24.5Pを選んでいれば、$0.65前後で約定できた可能性が高い。実際の約定$0.34と比べると、約$30の機会損失です。一晩で半分以上減りました。
何が問題だったのか──「銘柄の流動性」と「行使価格の流動性」は別
3月の記事で「流動性を最優先に銘柄を選ぶ」という話を書きました。CVE→KHCのスイッチで約定精度が改善した、という内容です。
ところが今月、HPEで同じ問題が形を変えて出てきました。HPE自体は流動性のある銘柄(株式の出来高は十分、オプションの板も全体としては厚い)ですが、特定の行使価格(24P)だけは総建玉が4枚しかなかった。銘柄レベルの流動性チェックでは見落とされる、ピンポイントの落とし穴でした。
3月の学びを「銘柄選定」レベルでは活かせていましたが、「行使価格選定」レベルではまだ機械的に適用できていなかった、ということです。
もう一つの問題──「最適化しすぎ」
24Pを選んだ判断には、もう一つ別の問題が混ざっています。「24.5Pより少しデルタを抑えたい」「24なら割当されてもいい」と考えた、つまり最適価格を探そうとして躊躇したわけです。
これは分析の問題ではありません。条件は揃っていました。デルタは少し控えめだが許容範囲、IVは十分高い、プレミアムも基準を満たしている。それでも「もっと良い場所があるのでは」と考えて、結果として実行が一日遅れた。
ホイール戦略はプレミアム(時間価値)が収益源です。一日遅れるだけで、時間価値は確実に減ります。今回はそれに加えて株価急騰が重なったので、減り方が劇的でした。
今回の失敗を一行に圧縮すると
「総建玉の薄い行使価格を選び、最適化を優先して1日遅れた」
ここから引き出す再発防止ルール:
行使価格の総建玉が薄い場合、隣の総建玉と比較する
条件(デルタ・IV・プレミアム)が揃ったら、最適化せずに即発注
「翌日でいいや」は禁句にする
このルールは「今月の学び」セクションで詳しく書きます。
GAP|①業績相場枠を埋める新規採用
GAPは今月の新規採用銘柄です。3月までエネルギー・素材枠が空白で、①業績相場のカバーが弱いという課題がありました。VIXが落ち着いてきたタイミングで、シクリカル方面からGAPを採用しました。


GAPは前から、機会があったらスクリーニング対象に入れていた銘柄です。一般消費財セクターで、価格帯($27前後)も拘束資金が管理しやすい水準。3月のKHCで生活必需品のディフェンシブ枠は埋まっているので、その対になるシクリカル枠として組み合わせる発想です。
4/20の失敗──25Pの失効
実はGAPも、4/20に一度失効を経験しています。25Pで指値を出したのですが、総建玉3という低流動性で約定しませんでした。
25P:総建玉3 → 失効
26P:総建玉5 → 翌日約定
数字だけ見ると大差ないように見えますが、価格設定(仲値ど真ん中)と組み合わせて見ると、26Pのほうが板に乗る確率が高かったということです。
4/21の修正──26Pで約定
翌4/21、行使価格を26Pに変更して再発注しました。


指値$0.83(時価より12.12%低い、仲値ぴったり)
約定$0.83(指値通り)
実質受取:$80.70
利回り:約3.10%
GAPは4銘柄の中で最も高い利回りを叩き出しました。デルタ-0.3270はやや高め(目標0.25より上)ですが、プレミアム獲得を優先した判断です。
HPEとの違い──こちらは「修正できた」
GAPもHPEも、初日に失効して翌日修正したという点では同じです。ただ、GAPは行使価格を1段上げ(25P→26P)て修正することで、プレミアムを増やす方向に動いています。HPEは株価急騰でプレミアムが減る方向に動きました。
両方とも「総建玉を意識した修正」という意味では同じ判断です。違いは、HPEの場合は1日の遅れが致命的だったということ。プレミアムが時間で減る・株価で減る、両方が同時に起きたわけです。
SIRI|CSP継続、行使価格を引き上げ
SIRIは通信セクター枠としてCSPを継続中です。
3月は21PでCSPを売っていましたが、株価が$25.48まで上昇したため、行使価格を23.5Pに引き上げました。
行使価格:23.5P(仲値$0.495)
出来高:2
総建玉:1
IV:42.20%
デルタ:-0.2383


指値$0.50(仲値より少し上)で発注 → $0.50で約定。実質受取は$47.70、利回り約2.03%。
総建玉が1枚という低流動性枠に見えますが、寄付き直後(9:30:02)に約定しているので、板に乗ったタイミングが良かったと判断しています。デルタ-0.2383は目標の0.25レンジ内、IVも前月(34.06%)から42.20%へ上昇しており、好条件で取れました。
SIRIは2月から開始して、これで3ヶ月連続でプレミアムを取れています(うち2回権利消滅、1回継続中)。通信セクター枠として安定的に機能しており、AT&T卒業後の後継として定着してきました。
KVUE|CC継続、買収進行下のプレミアム取り
KVUEはCCを継続中です。
行使価格:18C(仲値$0.370)
出来高:20
総建玉:22
IV:23.71%
デルタ:0.4144


指値$0.37(仲値ぴったり)で発注
→ $0.37で約定。実質受取$34.70、利回り約1.93%。
3月時点では株価がまだ$18台で、18Cは権利消滅で終わりました。4月は株価$17.61まで下落した状態で、デルタ0.4144はやや高めです(目標0.25より上)。
CCの行使価格を18Cで維持しているのは、買収条件$21まで上昇すれば自動的に株が手放される設計だからです。プレミアムを取りつつ、買収成立時の出口も確保している、という狙いです。
HRL|プレミアム再投資で9株買い増し、計23株に
HRLは獲得したプレミアムを元手に粛々と買い集めています。

4月は9株を$21.255で購入(4/22 01:55 JST)。3月時点の14株から計23株になりました。
3月までは月2〜5株のペースでしたが、4月は9株と一気にペースを上げています。理由は2つ:
4月のプレミアム収入が$194.80と潤沢だった
HRL株価が3月の$23.04 → 4月$21.255と下落しており、安値圏での仕込みのチャンスだった
100株まで残り77株。先は長いですが、プレミアム→現物→将来の配当+CCプレミアムという複利の流れを意識して、引き続き買い集めていきます。
4月のまとめ
HPE:CC権利行使で第3サイクル完了(株式売買益+$50)→ CSP再開で取り逃し約$30
GAP:①業績相場枠の新規採用、25P失効→26P約定で利回り3.10%確保
KVUE:CC継続、買収進行下でプレミアム取り
SIRI:CSP継続、行使価格を21P→23.5Pへ引き上げ
HRL:9株買い増し、計23株(プレミアム原資の比重を上げた)
景気循環4局面への対応(振り返り)
①業績相場(一般消費財、資本財、エネルギー、素材)→ GAP(一般消費財)
②逆金融相場(公益、生活必需品)→ KVUE
③逆業績相場(ヘルスケア、生活必需品)→ KVUE
④金融相場(情報技術、不動産、金融)→ HPE
3月まで①が空白になっていましたが、GAPの採用で4局面すべてが埋まりました。SIRIは通信(ディフェンシブ寄り)として②③の補強、HRLは将来のディフェンシブ枠として買い集め中、という構成です。
セクター分散としては「再現性のある型」に到達した感覚があります。あとは、この型を機械的に毎月回せるか、というのが次の課題です。
今月の学び(持ち帰れるポイント)
1. 「銘柄の流動性」と「行使価格の流動性」は別問題
3月に「流動性で銘柄を選ぶ」という基準を加えましたが、4月のHPEで同じ問題が行使価格レベルで再発しました。HPE全体は流動性のある銘柄ですが、24Pだけは局所的に総建玉が薄かった(総建玉4)。
選定フローの改訂版:
銘柄の流動性チェック(出来高、全体の総建玉)
行使価格の流動性チェック(その行使価格の総建玉、隣の行使価格との比較) ← 追加
デルタ・IV・プレミアム水準の確認
「銘柄レベルで合格」と「行使価格レベルで合格」は別ステップとして分けて確認する必要があります。
2. 分析は足りていた、足りなかったのは「実行」
4月のHPEは、デルタ・IV・プレミアム水準のすべてが基準を満たしていました。それでも取り逃したのは、「もう少し良い価格があるかも」「他銘柄と比較したい」と最適化を考えて、実行が一日遅れたからです。
ホイール戦略の収益源はプレミアム(時間価値)なので、躊躇するコストは時間でじわじわ効いてきます。今回は株価急騰も重なって、半日〜1日の遅れがプレミアム半減という形で出ました。
改善方針として、エントリールールを固定化してみます:
デルタ:-0.15 〜 -0.25
IV:30%以上
総建玉:絶対数ではなく、隣接行使価格との比較で判断(極端に薄いストライクは避ける)
上記すべて満たしたら、最適化を考えずに即発注
「最適価格」より「条件一致で即実行」を優先する。これが4月の最大の学びです。
3. 失敗の修正は早ければ早いほどいい
4/20に失効した注文は2つあります(HPE 24P / GAP 25P)。両方とも翌4/21に修正しましたが、結果は対照的でした。
HPE:株価急騰でプレミアム半減(−$30の機会損失)
GAP:行使価格を上げる方向で修正できたので、利回り3.10%を確保
GAPはたまたま株価が動かなかったので修正が効きましたが、HPEは1日で状況が変わってしまった。「翌日修正」が常に有効とは限らないということです。
理想は、寄付き〜前場の段階で約定確認まで終えて、ダメだったらその日のうちに行使価格を変えて再発注する、という時間制限を設けることです。「翌日でいいや」と思った瞬間に、機会損失のリスクが乗ってきます。
4. 「いい場所は見えている、あとは打つだけ」
今月のポートフォリオ構築自体は、振り返ってみるとよくできていました。セクター分散は4局面コンプリート、ボラティリティも分散、攻守バランスも取れています。プレミアム合計$194.80も合格点です。
ただ、HPEの取り逃しが象徴しているのは、「分析できる段階」と「実行できる段階」が別だということです。条件を見つけられるようになっても、即打てなければ意味がない。
5月以降は、エントリールールを明文化して、条件一致で躊躇なく打つことを意識していきます。
ホイール戦略は「再現性のある作業」であるほど機能します。再現性を損なう最大の要因が「迷い」だとすれば、迷いを減らすのは分析の精緻化ではなく、ルールの明文化と実行の徹底です。
5月以降も、価格・IV・セクターバランス・流動性(銘柄+行使価格)を見ながら、ホイールを回していきます。
同じように銘柄選定はできるけど実行で迷う、という方の参考になれば嬉しいです。
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