35歳、本屋で儲けることにした。
本日(6/18)で35歳になった。金の話をしよう。
本を紹介する「積読チャンネル」という YouTube を1年半前に始めた。本を紹介し、自身が勤める書店「バリューブックス」で買ってもらうことを狙うチャンネル。
今風に言えば「BookTuber」、わかりやすく言えば「ジャパネットたかた」だ。
動画の公開数は128本。基本的に1動画で1冊を紹介している。
紹介した本の売行は累計で2万8,000冊、売上は6,000万円。紹介していない本もあわせて同時購入してくださる方も多いので、動画で売った本の売上は1億円を超えている。

これは積読チャンネルの販売ランキングのトップ5。
1位は「積読チャンネル」の相方である堀元さんの本なので外れ値だが、それでも多くの人が僕の勤めるバリューブックスで本を買ってくれて、本当にありがたい。
最近は日々の動画更新に追われ、過去を振り返る暇がない(上記の数字もいま計算した)。
1年に1度の誕生日、これまでを振り返り、これからに眼差しを向けてみたい。
こんにちは、YouTuber です
※ 去年の記事 ↑
34歳は、YouTuber になることを決めた年だった。
どうやらある程度の適正があったようで、楽しく忙しく YouTube で本を売っていった。チャンネル登録者も増え続け、更新頻度も週1から週2に増加。
うまくいくのは嬉しいものの、私生活も YouTube の時のような荒いしゃべりになり、収録の合間には写真やサインを求められる。大きな違和感があった。
「YouTube は自分にも視聴者にも魔法をかけてしまうんだな」と気がつかされた。どこにでもいる中年のヒゲ眼鏡がしゃべってるだけなのに、YouTube の画面は見えないキラキラ加工を演者に施す。
先日、ただの会社員が(自分の決断なのだが)YouTuber になってしまった苦悩を語る会を上げた。居酒屋で3時間半、というショート全盛期に常軌を逸した尺で。
ふだんの「本の紹介」とは一線を画す内容なので再生してもらえるか不安だったのが、現時点で約20万再生されている。これまで公開した動画の中でぶっちぎりの速度だ。
みんなも思うところがあるんだね……
おつかれさまです。本当に。
流される人生だった

とにかく本に関する情報をかき集めていた。
むかし、親しい年上の男性から「お前は荒波をかき分けて進むんじゃなくて、筏をつくって器用に流されていくタイプだな」と言われたことがある。
「た、たしかに!」という腹落ちは今もずっと続いている。
遠くに目標を据えて熱量を保持しながら走り続ける人たちは、とても眩しい。
僕にはそうした"確固たるもの"はなく、それでいて、周りのみんなと同じように就活を頑張る甲斐性もない。
それゆえぽーんっと無職で社会に放り出されるわけだが、入りたかった会社に手紙を書いたりイベントで社長に直談判したりといった「一般には取られない手段」を活用することで何とか筏を漕いできた。

https://str.toyokeizai.net/-/book/thirddoor/
「本の業界で生きる」ということだけを決めて、あとは流され、流され、ここまでたどり着いた。
振り返ってみれば、YouTube で本を売る、というのも僕なりの筏なんだろう。
あまり書店員が選ばない「YouTube で本を売る」という戦場にとりあえず身を投げて、何とか毎日をサバイブしている。
人生初の目標、「稼ぐぞ」
"流される場所" を決めたあとは死なないように頑張ってきたわけだが、最近になって初めて目標のようなものが芽生えてきた。
それは「稼ぐぞ」だ。改めて言葉にするとバカみたいな目標だ。
僕にはあまり物欲がない。
好きな本が読めて、好きな音楽が聞けて、定期的にコンビニでマウントレーニアが買えれば十分幸せだ。

こんなキャッチコピーだったん?
まぁ現代ではそれすら贅沢な暮らしと判断される向きもあるだろうけれど、「いい車に乗りて〜!」とか「キャバクラで豪遊して〜!!」といった欲望は皆無だ。
そんな自分が、35歳にしてはじめて「稼ぎたい」と思い始めている。
理由は2つだ。
自分だけの人生ではなくなった

僕には家族がいる。
妻と2歳になる息子だ。
正直、子どもが生まれるまでの間は、夫婦といえども「独立した個人が一緒に住んでいる」ぐらいの感覚だった。
ただ、子どもが生まれたことで、はじめて自分の人生に「誰かの人生」の重みが加わった。
「望んだものはなんでも与えられるように」とは全く思っていないのだが、それでも最低限(その線引きは難しい)の安全性は保証して、この世界で思うようにその手足を振るってほしい。

また、僕は常に YouTube の準備や収録に追われている。家を空けている時は当然妻のワンオペか、妻の実家にお世話になっている。
妻は「別に全然平気だよ〜。その分仕事がんばって〜」と言っていて、その言葉通りパパは YouTube 業に精を出す所存なのだけど、きちんと家庭に豊かな暮らしを届けたい。
今月、新しく車を買った。中古車だし、なんの変哲もない車だけど、ローンを組んで購入した。
というのも、我が家にあったのはメルカリで買った軽自動車と、

妻のおじいちゃんから譲り受けた軽バンだけだったからだ。

妻からはよく「もうちょっと普通の車に乗りたい」と言われていたのだけど、「まだ走れるし、また今度考えようか〜」とのらりくらりかわしていた。車に興味ないし。
でも、ようやく「そういうことじゃない」と気がついた。
僕の人生は僕だけのものじゃないからだ。
コスパなんかどうでもいい。車に興味がない僕は一切口を出さないと決めて、妻が乗りたい車を決めて、試乗して、購入するに至った。あと数日で納車だが僕はまだ現物を見てすらいない。
妻は「シガーソケットから充電しなくていいんだよ!Bluetooth スピーカーを持っていかなくても音楽ながせるんだよ!シートヒーターもついてて外からエンジンかけられるから暖かいんだよ!」と喜んでいる。
なんかめちゃくちゃ苦労をかけていた気になってきた。

僕という人間は僕のままだが、僕の人生は他人と混ざっていく。
それが家族だ、という広辞苑に載っていそうな当たり前をようやく痛感しながら思う、「父ちゃん、もっと稼ぐからな」と。
収録で家を空ける時は、実家のお父さん・お母さんと一緒にいい宿にでも泊まっておいで。そんな言葉をかけれるぐらいには稼ぎたい。
「本屋は儲からない」に飽きた
本屋は儲からない。
動画内でもしょっちゅう嘆いているが、そりゃあまぁ儲からない。
大学を卒業して本の業界に入る時に言われた。
「本の業界って儲からないでしょ?」
本の業界で働いているとよく聞かれる。
「本の業界って儲からないんですよね?」
「そうですね〜!バリバリの斜陽産業です!」と返していたし、正直気にしていなかった。僕は本が好きでこの業界に来たまでであって、「儲かるか/儲からないか」という尺度なんて考えたことすらなかった。
ただ、最近は違う。本屋でバリバリ儲けたいと思っている。その理由は「飽きた」だ。
本業界は儲からないんだよね、本業界は大変なんでしょ、本を読む人は減ってるもんね、Netflix に比べて本って高すぎるよね、本屋は儲からない、本屋は儲からない、本屋は儲からない……
$${\huge\bf{うるせ〜〜!!} }$$
$${\huge\bf{いい加減飽きたわ} }$$
$${\huge\bf{その話!!} }$$
人に言われるだけでなく、僕自身も毎日思っている。どんだけ売っても全然儲からねぇな、て。
デートでずっと同じこと言うやついたらむしゃくしゃしない?
「いつか海外行きたいんだよねぇ」
「あー、海外行きたい。でもお金ないなぁ」
「海外行ったら楽しそうじゃない?」
$${\huge\bf{行けや!!} }$$
$${\huge\bf{今すぐ有給とチケット} }$$
$${\huge\bf{取ってこい!!} }$$
同じだ。本屋が儲からないことにもう飽きた。
ゴリゴリ稼ぐ本屋を作って京極夏彦の本ぐらいの分厚さの札束でビターン!と頬をはたいてやりたい(誰の?)。
「本屋の新しい未来を作りたい」とかじゃない。そんなだいそれた存在じゃない。
ただ、もう飽きたんだ。儲からないことに。
「斜陽産業なんです〜」って言ってる自分にも飽きた。何遍同じこと言うんだお前は。
「積読チャンネル」でもっと本を売ってやる。何千冊も売るからな。

「ん〜、そんなに必要ですか?」と言ってくる出版社の在庫をすっからかんにしてやる(出版社のみなさまいつもお世話になっております)。
「Amazon の予約数を上げた方がリアル書店も仕入れるので、バリューブックスさんで予約をするのはちょっと…」と言ってくる出版社の本も、積読チャンネルの影響力を上げてリアル書店が参考になるくらいの存在になって売りまくってやるからな(出版社のみなさまいつも本当にお世話になっております)。
しこたま本を売ってしこたま儲けてやるからな、このやろう。
儲かる本屋が生まれることは、一筋の光だ。
業界への影響力は微々たるものだろうが、一筋の光が生まれれば、新たな二筋、三筋の光も生まれてくる。
もちろん僕だけでなく、全ての本屋が一筋の光になろうと今日も頑張っている。
流され続けた筏は、「めっちゃ儲ける」という単純かつ遠くの目的地を持つに至った。人生で初めて。
これまで以上に力強くオールを漕がないといけないだろうが、決めてしまえばあとはやるだけだ。
家庭円満のための欲しいものリスト
さて、勇ましいことを言ったあとに非常にさもしいのだけど、もうひとつの人生初として「ほしいものリスト」を公開した。
飯田家を家庭円満にするリスト
35歳にもなって Amazon の「ほしいものリスト」を公開するのはためらいが強いが、その分家庭を豊かにできると思えば自身のプライドほど安いものはない。妻に何が欲しいかを聞き取りした結果が ↑ のリストです。
お財布に余裕があり、「飯田家円満をサポートするよ」という奇特な方がいらっしゃれば、どうぞよろしくお願いいたします!!
堂々とサポートのお願いをできるようになったのは、「積読チャンネル」の相方である強欲下ネタ茶々入れ詐欺師の影響もあるのだろう。

右)飯田
今年は彼と、「動画を作る」だけでなく「出版社を作る」という新たな挑戦を共にすることになりそうだ。
時に喧嘩をしつつ、家庭は大事にしつつ、疲れた際はマウントレーニアをちゅうちゅう吸いながら、必死で荒波を漕いでいこう。人生で初めてとなる目標と覚悟をもって。
35歳、本屋で儲けることにした。
