視線の罠と欲望の設計〜男心を突く広告の解剖学
Facebookを何気なく眺めていたとき、ある広告が目に留まり、思わずクリックしてしまった。

内容としては、Webサイトの校正などをブラウザ上で簡単に行えるツールの紹介だった。
共有もスムーズで、使ってみるのも悪くなさそうだと感じたのだが、実のところクリックした理由は機能面に惹かれたからではない。
そう、察しの良い方ならもうお気づきだろう。
ビジュアルに釣られたのである。
ノースリーブのニットを着た女性が、やや斜め上からこちらを見つめるビジュアル。体のラインがはっきりと分かるその構図に、まんまと釣られてしまった。
完全に、IT業界で働く中年男性―いや、おそらく年齢に関係なく、男性全般と言っても差し支えないだろう―に向けた広告だった。
サービスの本質とは無関係なビジュアルを採用することで、広告としての効果を最大化しようとしていることは明らかで、きちんとペルソナが設定されているのだと感じた。
実際、PCの前で作業をしているような層の「目のツボ」を心得た、よくできた広告だと思った。
少なくともここに一人、その内容を確認する前に思わずクリックしてしまった人間がいたことは、間違いない。
(なお、遷移先のページにこの女性の姿はなかった。たしか。)
この広告を見たとき、どこかで似たような構造の広告を見たことがあると感じ、すぐに思い出したのが、最近話題に上ることの多いマッチングアプリの広告だった。
今回目にしたブラウザアプリの広告と同様、マッチングアプリのプロモーションにも、ある種の一貫した構造が見られる。
表面的には異なるサービスでありながら、訴求の方法には驚くほど共通する特徴があり、それは偶然ではなく、極めて意図的に設計されたものであることが分かる。
その共通点を少し丁寧にたどってみると、広告における「視線の誘導」のあり方、ある種の“暗黙のコード”、そしてターゲットの感情に対する働きかけの仕組みが、浮かび上がってくる。
以下では、そうした視覚的構成や感情設計の共通項について、いくつかの具体例をもとに掘り下げていく。
ここから先は
¥ 300
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?
