【PREP研究評】世界は、教育における生成AIの利用について「事前検証」が必要である【ブルッキングス研究所】
読書の世界をもっと楽しみたい、でも何を読めばいいのかわからない――そんなあなたのために、「PREP研究評」をご提供します。
この企画では、私が読んで勉強になった研究の概要やポイントをわかりやすく紹介し、皆さんの読書、noteやブログの執筆に役立ててもらうことを目指しています。
具体的には、PREP手法(Point(主張)・Reason(理由)・Example(具体例)・Point(再主張))を使って、研究の魅力をわかりやすくお伝えします。
今回ご紹介するのは、ブルッキングス研究所に掲載された『世界は、教育における生成AIの利用について「事前検証」が必要である(The world needs a ‘premortem’ on generative AI and its use in education)』という記事です。
実は私も最初、このテーマには正直そこまでピンときていませんでした。
しかし、この記事に書かれている主張や事例を読み、実際に自分の授業でも少しずつAIツールを活用してみた結果、「これ、教育を大きく変えるかもしれない」と確信するに至ったのです。
Point(主張)
AIの光と影を“あらかじめ”把握するための「プレモーテム」が必須!
AIが教育現場に広く普及しはじめると、「授業準備の効率化」や「学習内容の自動最適化」など、どうしても明るい要素に注目が集まりがちです。
しかしブルッキングス研究所の記事は、この新技術のデメリットやリスクを先に検証する「プレモーテム(事前検証)」こそが重要だと強調しています。
なぜなら、新しいテクノロジーはその革新性ゆえに急激に広まる一方で、初期には見えてこなかった問題が数年後に深刻化するパターンが多いからです。
特に生成AIは、文章作成や画像生成など多岐にわたるタスクをこなし、人間の学習や仕事のやり方を根本から変えるほどの影響力を持つ可能性があります。
そのメリットに目を輝かせつつも、まだ私たちが想定しきれていない課題について、今のうちから「もし問題が起こったらどう対処するのか?」を考えておくこと。
これが本記事の最大の主張と言えます。
Reason(理由)
スマホ普及で見えた「最初の熱狂」と「後の弊害」を繰り返さないため
ブルッキングス研究所の記事では、2007年にiPhoneが登場したときのエピソードが象徴的に語られています。
スマートフォンが初めて広く世に出たころ、教育面でも「ポケットに入るコンピュータ」という革新性が大きく注目されました。
実際、インターネットへの常時接続が可能になり、学習コンテンツや調べ学習のハードルが大幅に下がったのは確か。
また、マルチメディアを使った学び方も増え、障がいを持つ学習者の方にとっては音声入力や画面読み上げ機能が助けになるなど、大きな進展がありました。
ところが、その“熱狂”を経て数年がたつと、「スマホ依存」という深刻な問題が噴出してきます。
生徒がSNSやゲームにのめり込んで授業に集中できなくなったり、保護者や教師も含めて常時スマホを手放せない状態に陥ったり……。
さらに精神面への悪影響も指摘されるようになり、世界各地で「スマホをどう制限するか」が主要議題となってしまいました。
こうした流れは決してスマホに限らず、テレビやSNSなど、過去のテクノロジー導入の歴史でも繰り返されています。
「当初は期待感が高まり一気に普及するが、後になって“こんなはずじゃなかった”という課題が噴出する」――これは私たちにとっても他人事ではありません。
生成AIは、スマホ以上に多様な活用の可能性を秘めている分、その裏で発生しうる問題もまた、想像以上に複雑かもしれないのです。
だからこそ、あらかじめ負の側面を想定し、対策を講じる「プレモーテム」が欠かせないというわけです。
Example(具体例)
「プレモーテム」タスクフォースが提示する2つの大きな問い
ブルッキングス研究所のCenter for Universal Education(CUE)は、約2年をかけて「生成AIが教育にもたらすリスク」を先取りするタスクフォースを立ち上げました。
このタスクフォースが取り組む中核的な問いは、大きく2つあります。
1つ目は、「生成AIが子どもたちの学習や発達に与える可能性があるリスクは何か」。
2つ目は、「そのリスクを知った上で、どうやって生成AIを教育現場で活かし、学びの質を高めていくか」という点です。
たとえば、教師の仕事の一部をAIが自動化してくれることで、授業準備や課題の採点にかかる時間は減り、教師は生徒とのコミュニケーションにより多くのエネルギーを割ける可能性があります。
しかし同時に、レッスンの設計やフィードバックをすべてAIに任せてしまうと、教師が得られるはずの「生徒のつまずきポイントへの直感」や「クラスの空気感を肌で感じる力」が育たなくなる危険性もあります。
私自身も試験的にAIを使った教材づくりをしてみましたが、一見スムーズに教材ができあがる反面、「この問題を本当にこの子たちに与えて大丈夫かな?」「AIが提案する解説文って、子どもたちのリアルな理解度に合うかな?」と迷う場面が結構ありました。
要は、「教師としての専門性を発揮する余地」と「AIがカバーする部分」のバランス調整が非常に繊細だと感じています。
また、生徒サイドから見ても、AIを使えばレポートを高速で仕上げられるかもしれませんが、それが「本当に自分の力になるか?」という疑問はつきまといますよね。
このように、メリットとデメリットが表裏一体となっている以上、教育現場におけるAIの導入は慎重に進める必要があります。
しかも、ユネスコ(UNESCO)の調査によれば、AIを含む教育テクノロジーの活用に関する明確なガイドラインや研修制度を整備している国は、まだまだ少数派。
Teach AIのような組織が「AIを導入する際は人間の判断が最終的に優先されるべき」といった原則を示していますが、世界的にはどう活用すべきか模索中の段階といえます。
現実には、「使い方がわからないから禁止」「自由に取り入れてみたら問題続出」といった両極端に走るケースも耳にします。
だからこそ、このタスクフォースのように「先に問題を想定し、その上で最適な使い方を考えよう」とする取り組みは、大いに参考になるはずです。
Point(再主張)
「教育の主体」は人間――だからこそ、今こそ積極的にAI活用のルールづくりをするべき
まとめると、ブルッキングス研究所の記事が示す「プレモーテム」アプローチは、私たちがこれから迎えるAI時代の教育をより良いものにするためのキーポイントだと感じます。
テクノロジーの歴史を振り返るとわかるように、新しい道具は「驚きと熱狂」を引き起こす一方で、時間が経ってから私たちの想像を超えた弊害をもたらすことも多いですよね。
その“後悔”を繰り返さないためには、今の段階から「もしこうなったらどうする?」という視点で予防策を考えておく必要があります。
一方で、私自身が感じているのは「AIが教育を豊かにする可能性を持っている」というポジティブな面。
だからこそ、一部で言われるように「AIを全部排除する」のではなく、むしろ積極的に「どう使えばいいか」を考えるべきだと思います。
教師がやるべき仕事、AIに任せてもいい仕事の線引きをしつつ、教師と生徒両方の「学びやすさ」「教えやすさ」「主体的な学び」を実現していく――これはすごくやりがいのあるテーマではないでしょうか。
たとえば、AIが大量の情報や補助的な資料を短時間でまとめてくれれば、それをベースに教師が生徒一人ひとりにカスタマイズした指導を行う、といった新しい授業スタイルも考えられますよね。
もし、この記事を読んで「生成AIのメリットとリスクをもっと深く知りたい」「導入するときに注意すべき点を具体的に知りたい」と思われたら、ぜひ原文や関連リソースに触れてみてください。
教育は本来、人間が主体となって作り上げるものです。
しかし、その人間が上手にAIの力を引き出すことができれば、私たちがまだ想像していないような創造的な学びの場が広がるかもしれません。
そうした未来を現実のものにするかどうかは、私たち自身がどれだけ先手を打って対策を講じ、ルールづくりに関わっていくかにかかっているのだと、私は強く感じています。
きゅうさんの本棚:さらに研究に興味をお持ちの方へ
この記事を最後までお読みいただき、もし『世界は、教育における生成AIの利用について「事前検証」が必要である(The world needs a ‘premortem’ on generative AI and its use in education)』に興味を持たれた方は、ぜひ下記のリンクから原文をご覧ください。
きっと新たな発見があるはずです。
