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消えない駐車番号


これは私が三年ほど前に体験した話です。

私は医療機器メーカーで営業をしています。

病院やクリニックを回り、機器の点検や新製品の案内をする仕事です。

三年ほど前、人手不足だった地方営業所への異動を命じられました。

会社から月極駐車場を借りてもらい、営業車で毎日取引先を回る生活が始まりました。

全部で二十台ほど停められる小さな駐車場で、一区画ごとに番号が振られています。

私が使っていたのは「12番」でした。

毎朝そこへ車を停め、夕方戻ってくるだけだったので、特に気にしたことはありませんでした。


ある日、営業から戻ると、私の区画に軽自動車が停まっていました。

管理会社へ電話しようと思いましたが、運転席には人が乗っています。

私が近づくと、その男性は慌てたように車を出しました。

謝ることもなく、そのまま帰ってしまいました。

「間違えたのかな」

それくらいに思っていました。

翌週も同じことがありました。

今度は違う車です。

白いワゴン車でした。

やはり私が近づくと、無言で出ていきました。

管理会社へ相談すると、

「そんな苦情は初めてですね。」

とのことでした。


その後、一か月ほどで五回くらい同じことがありました。

全部違う車です。

共通しているのは、

運転手が皆、驚いた顔をすることでした。

まるで、

そこに私がいることがおかしい

という表情でした。

ある日、とうとう気になってしまい、出ていく車を追いかけました。

信号で止まったので窓をノックすると、中年の男性が少し青ざめた顔で窓を開けました。

「すみません。」

私が言うより先に、

その人はこう言いました。

「ここ、ずっと空いてましたよね?」

意味が分かりませんでした。

「いえ、私が借りています。」

そう答えると、

男性は困ったように駐車場を見返しました。

「いや…。

昨日も一昨日も空いてました。」

そう言って帰ってしまいました。


それから管理会社へ頼んで、防犯カメラを確認させてもらいました。

私も一緒に見ました。

朝七時二十分。

私の車が入ってきます。

十二番へ駐車します。

そこまでは間違いありません。

十分後。

別の車が入ってきます。

十二番へ向かいます。

そして。

何もない場所へ車を停めようとしているような動きをしたあと、

慌てて車を出していました。

その映像が何台も続きます。

管理会社の人が首をかしげました。

「皆さん、何を見てるんでしょうね。」

私は何も言えませんでした。

そこには確かに、

私の車が停まっています。


その年の秋、駐車場は閉鎖されました。

土地が売却されたそうです。

それ以来、あの場所の前を通ることはありません。

ただ、一度だけ会社の同僚が言いました。

「あそこの跡地、駐車番号だけ残ってるらしいよ。」

建物は建ちました。

アスファルトもありません。

それでも地面には、

「12」だけが薄く浮き出ているそうです。

私は確かめに行っていません。

行けば、また誰かが私を見て、

「ここ、ずっと空いてましたよね」

と言うような気がするからです。


長野県 Kさん

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