【上賀茂神社】賀茂曲水宴
世界遺産・上賀茂神社の「渉渓園(しょうけいえん)」で開かれた賀茂曲水宴。ここには単なる伝統行事の枠を超えた、五感を揺さぶる体験が待っています。
「曲水宴」とは
庭園を流れる小川のほとりに歌人が座り、上流から流れてくる「羽觴(うしょう)」という鳥の形の盃が自分の前を通り過ぎるまでに和歌を詠み、お酒をいただく……。
これは現代で言うと「究極の即興クリエイティブ・バトル」。

究極の「即興」を楽しむ、雅なクリエイティブ
スマホもメモ帳もない時代、流れる水のリズムに合わせて言葉を紡ぐ。
それは、現代の私たちが忘れてしまった「一期一会の集中力」そのものでした。

鼻先をかすめた、平安貴族の「推し」の香り
今回の体験で心を奪われたもののひとつが、会場に漂う「薫物(たきもの)」。
2026年は、宇治平等院を建立したことで知られる藤原頼通が好んだ「侍従(じじゅう)」という香りが再現されました。
沈香を贅沢に使い、冷暗所でじっくり熟成されたその香りは、甘く、どこか凛としていて、深呼吸するたびに平安時代の空気が肺に満ちていくよう。
「内容量の五割近くを沈香が占める、大変高価な原料……」
パンフレットに記されたその一文に、当時の貴族たちがどれほど「目に見えない美」に情熱を注いでいたのかが透けて見えます。

現代の知性が詠む、今年の歌題「春夢」
2026年の歌題は、どこか儚い響きを持つ「春夢(はるのゆめ)」。

歌人・永田和宏先生や、翻訳家のピーター・J・マクミラン先生といった現代の「言葉の使い手」たちが、古の装束に身を包み、この瞬間のためだけに歌を詠みます。
ここでピーター先生の一首をご紹介いたします。
「覚めぎわに 聞きしは誰の 言の葉か 春の夢より たづさへきたる」
夢の中で聞いた言葉を、現実の世界に持ち帰ってきたかのような一首。1000年前の藤原道長が、息子の頼通の晴れ舞台をソワソワしながら見守っていたというエピソード(栄花物語)とも重なり、歴史という名の長い夢を見ているような気分になります。

曲水の宴を盛り上げるアイテム「羽觴(うしょう)」
この和歌をしたためている間、ふと景色に目を移すと、長い棒を手に盃を流す童子たちの姿がなんとも可愛らしく映ります。

この酒盃をのせて遣水(やりみず)に流される台のことを「羽觴(うしょう)」と言います。 「羽」は鳥の羽根、そして「觴」は盃(さかずき)。
お酒や景色に酔いながら和歌をしたためる。
現代でいうと宴席のカラオケやかくし芸になるのでしょうか。
平安時代はなんと雅な遊びをしていたのだろうかと感じます。

「雅(みやび)」をアップデートし続けるということ
斎王代の鮮やかな十二単、新緑に映える朱色の傘、そして水のせせらぎ。
それらはすべて、誰かが守り、継承しようと決意したからこそ、令和の今もここにあります。
効率やスピードが重視される現代だからこそ、あえて「盃が流れてくるのを待つ」という贅沢。
そんな、心をゆっくりと調律してくれる時間が、今の私たちには必要なのかもしれません。

来年の春、もし京都を訪れるなら。
1000年前の香りと、即興の言葉が交差するこの場所で、あなただけの「春の夢」を探してみてください。

伝統行事を支える保存会や関係者の皆様に敬意を。
上賀茂神社の緑の中で嗅いだあの香りは、きっとしばらく、私の記憶から消えそうにありません。

また当日境内では裏千家ご奉仕による野点も開催。
贅沢な時間を過ごすことが出来る祭典です。

賀茂曲水宴(かもきょくすいえん)
毎年4月第二日曜
午後1時開宴(平安時代和歌披講は12時30分~)
場 所:境内“渉渓園”
初穂料:1,000円
受 付:午前11時開始。渉渓園入口特設天幕。満席になり次第受付終了。
寿永元年(1182)3月3日、当時の神主 重保(しげやす)が催したことに起源を持ち、境内にある庭園 渉渓園(しょうけいえん)の小川に盃を流し、自分の前に盃が流れてくるまでに和歌を詠むという平安時代の雅な宴が当代一流の歌人により再現されます。平成6年に復活より2026年で33回目の賀茂曲水宴となります。
また当日境内では裏千家ご奉仕による野点も催されます。

奉 行 垣内 永次(株式会社スクリーンホールディングス 特別顧問)
披 講 公益財団法人 冷泉家時雨亭文庫
主催 賀茂曲水宴保存会 賀茂別雷神社(上賀茂神社)
後援 京都紫野ロータリークラブ
協賛 裏千家、(株)山田松香木店、京都なり田
上賀茂神社 Kamigamo jinja Shine・行き方・Access
交通:bus「上賀茂神社前」下車
住所:京都市北区上賀茂本山339 map
TEL:075-781-0011
拝観時間:24h
URL:上賀茂神社(賀茂別雷神社) Facebook
拝観料:境内無料 (特別拝観は有料)
主要行事:1/16武射神事、2/11紀元節、4月第2日曜 賀茂曲水宴、
5/1賀茂競馬足汰式、5/4(隔年)斎王代女人列御禊神事、5/5賀茂競馬、
5/15葵祭 加茂祭 社頭の儀、6/30夏越神事・夏越大祓式、9/27賀茂観月祭

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