【二十四節気/大暑】夏が、燃え尽きる前に。大暑の色と、日本人が暑さに見出してきた美しさ
二十四節気 ―大暑(たいしょ)― 2026年7月23日(木)〜8月6日頃
一年でもっとも暑い、季節の頂点です。
大暑——文字通り、暑さが最大になる節気。暦便覧には「暑気いたりつまりたるゆえんなれば也」と記されています。暑さが、極まる。
2026年の大暑は7月23日。
土用の丑の日もこの時期に重なり、うなぎを食べる習慣はこの頃から始まっています。
立秋(8月7日)まであと二週間——夏はいよいよ最後の盛りへと向かいます。
大暑は、極まることの季節です。
夏至で光が極まり、大暑で熱が極まる。そこからは、少しずつ秋へと向かっていく。
日本の季節の感性は、「極まった場所からの下り坂」を、終わりではなく次の始まりとして捉えてきました。
緋色——夏の「赤」の頂点
大暑の色を語るとき、まず向き合わなければならないのが「赤」の系統です。
緋色(ひいろ)

緋色(ひいろ)は、鮮やかな黄みがかった赤。
炎の色、強い日差しの色、血の赤——緋色は日本の赤の中でも最も力強く、生命力に満ちた色です。平安時代には高位の装束にも用いられ、神事・祭事の色としても長く使われてきました。
大暑の頃の太陽は、赤みを帯びます。朝焼けも夕焼けも、夏のそれは他の季節より深い赤です。
一年でもっとも高温に達した大気の中で、光は屈折して赤く染まる——緋色は、その極まった熱と光の色です。
茜色(あかねいろ)

茜色(あかねいろ)は、茜草の根から染めた、暖かみのある赤。
日本最古の染料のひとつとされる茜は、万葉集にも「茜さす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る」と詠まれるほど、古くから日本人の暮らしに根ざしていました。
大暑の夕暮れ、西の空が一面の茜色に染まる瞬間——あの色の名前が「茜」であることは、偶然ではありません。
珊瑚色——赤と橙の間
珊瑚色(さんごいろ)

珊瑚色(さんごいろ)は、深海の珊瑚の色——やや薄みを帯びた橙赤色です。
大暑の頃の海は、珊瑚の色に似た豊かさを持っています。強い紫外線の下で輝く水面、白い波、砂浜の色——そこに差し込む夏の光が橙を帯びる。珊瑚色は、夏の海の持つ色彩の核心に触れています。
珊瑚は日本でも古くから縁起物として珍重され、帯留めや簪(かんざし)など夏の装飾に用いられてきました。夏の強い色の中に、珊瑚色の豊かさを見つけることができます。
「涼」の色——夏の白と青
大暑の極まった暑さの中で、日本人はいつも「涼」を探してきました。
扇風機も冷房もない時代、涼を感じるための工夫は色彩にもありました。
白・水色・薄藍——これらの色を纏うことで、視覚的な涼しさを生み出す。夏の装束や調度品に涼しい色を用いる習慣は、日本の色彩文化の独自の知恵です。
白練(しろねり)

白練(しろねり)は、絹糸を精練してつくられた、つやのある白。
生絹とは違う、精練によって純化された白の美しさです。夏の白は他の季節の白より輝いて見えます。強い光が当たるからです。大暑の頃の白は、視覚的な涼を最も届けてくれる色です。
浅葱色(あさぎいろ)

浅葱色(あさぎいろ)は、葱の若葉のような薄い青緑。
新選組の羽織の色として有名になりましたが、本来は夏の涼しさを視覚に届ける色として愛されてきました。夏の着物や団扇に浅葱色が多く使われたのは、その涼感のためです。
黄蘗色——夏の黄色の深み
黄蘗(きはだ)色

黄蘗(きはだ)色は、黄蘗の木の内皮から染めた、鮮やかな黄色です。
黄蘗は染料であると同時に、防虫・抗菌効果を持つ薬木でもありました。古くから仏典の写経紙の染料として使われ、虫食いを防ぎながら美しい黄を保つ——色と機能が一体になった染料です。
大暑の頃の太陽は、黄蘗色に近い強い黄を持っています。
夏の光の中で植物の緑が輝くとき、その緑の中に黄蘗の黄が混じって見える——夏の野外の色彩には、この鮮やかな黄が溢れています。
「盛夏」の美しさを、受け取ること
大暑は、夏が燃え尽きる前の最後の盛りです。
この頂点の熱さを、日本人は嫌いながらも愛してきました。暑中見舞いという習慣は、この時期に人を気遣う文化であると同時に、夏の盛りを共に生きているという連帯感の表れでもあります。
緋色・茜色・珊瑚色・黄蘗色——これらの色を知ると、大暑の景色の見え方が変わります。ただ「暑い」と感じるのではなく、「今日の夕焼けは茜色だ」と気づく目が生まれる。その気づきが、感性をひらいていきます。
大暑の頃の、京都洛柿庵の作品たち
夏が極まるこの季節、京都洛柿庵の作品の中で特に目が向くのは、夏の力強さと涼しさを同時に持つ作品たちです。
赤富士——

黒地に赤富士と金彩が映えるこの豆タペや koyomiフレームは、緋色の持つ力強さと夏の盛りの太陽を映しています。大暑の頃に飾ると、夏の最後の輝きをそのまま空間に迎えることができます。
大正三色(瑠璃色)——

夏の強い色の対比を一枚に持つこの細タペは、大暑の色彩の豊かさを最もよく伝える作品のひとつです。
季節が「極まる」場所にある美しさ

穀雨の萌黄、立夏の藤色、小満の紅花色、芒種の早苗色、夏至の白橡、小暑の露草色、そして大暑の緋色——。
春から夏にかけての色の旅は、ここでひとつの頂点に達します。次の立秋(8月7日)からは、暦の上では秋が始まります。
でも、大暑の熱さはまだしばらく続く。
暦と体感がずれているその時間——「もう秋のはずなのに、まだ夏だ」という感覚の中に、日本の季節の細やかさがあります。その微細な移ろいに名前をつけ、色をつけ、感性で受け取ってきた——それが二十四節気という暦の文化です。
大暑の強い日差しの下で、今日の夕焼けの色を見てみてください。
▼京都洛柿庵 オンラインショップ・三条店にてお取り扱い中
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京都洛柿庵 三条店
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