現場のトップが、ほうきとちりとりを持つ理由― 建築を学んでいる学生が、社会に出る前に知っておきたい話 ―
建築学生のみなさんの多くは、
「現場監督=現場で指示を出す人」というイメージを持っているかもしれません。
ヘルメットをかぶり、
図面を片手に職人さんと打ち合わせをする姿。
それも間違いではありません。
でも、ある現場で見た“所長の姿”は少し違っていました。
朝礼が終わったあと、
その人はほうきとちりとりを持って、
現場の外へ出ていったのです。
今回は、佐崎所長の一日の仕事内容に触れながら、「現場をつくる」という仕事の本質についてお伝えしていきます。
1. 現場のトップが掃除をする理由
朝8時。
佐崎所長(新卒で入社し、かねわ歴34年)は少し早めに現場へ入ります。
8時20分からは朝礼。
その日の危険ポイントや注意事項、
過去の"ヒヤリ"とした事例を現場所員に共有します。
そして朝礼が終わると、
ほうきとちりとりを持って現場の周囲を一周します。そして何気ない会話を近隣の方と交わす。
「若い子は忙しいからね。こういう事をやるなら一番上の私がやった方がいい。」
現場は、街中にあります。建物を建てる前に、
まずご近隣の方と信頼関係を築くこと。
掃除は、その第一歩なのだと感じました。
2. あえて“最後まで残らない”という選択
次に佐崎所長の1日の仕事スケジュールについて触れていきます。
日中は、施工図の確認や事業主対応など、事務所での業務が中心になります。16時に終礼を行い、現場を再確認したあと、18時過ぎには退社します。
「所長が残ってたら、下の子が帰りにくいでしょ。」
残業をしないのは、
自分が楽をしたいからでは決してありません。
時間内にやり切る姿勢を所員たちに見せること。
働き方そのものも、現場づくりの一部だという考えです。

3. 現場は“人”でできている
入社のきっかけは、学内で偶然目に入った求人票だったそうです。特別な理由があったわけではない。それでも長く続いている理由は、
「社員がいいから」と即答されました。
どれだけ技術があっても、人間関係が成り立たなければ現場は回らない。
「建物はコンクリートや鉄でできていますが、現場は“人”でできています。」
4. 伸びる人の共通点
佐崎所長が挙げたのは、特別な才能ではありませんでした。
・好奇心があること
・まず自分で考えてみること
・完成だけでなく、過程を大切にできること
「わかりません」ではなく、
「こう思ったのですが合っていますか?」と言える人。そういう人は、確実に伸びていくと言います。
5. 建築の仕事は、日々の姿勢がつくる
住みやすく、使いやすい。でも無駄なコストはかけない。それを実現するのが“施工技術”です。
けれど技術は、ただ現場に立っているだけでは身につきません。
「経験を盗むのも技術やからね。」
日々をなんとなく過ごさないこと。考えながら現場に立つこと。その積み重ねが、やがて“任せられる人”をつくります。

朝の掃除。若手が帰りやすい空気づくり。
派手なリーダーシップではありません。
けれど、確かな背中でした。
これから社会に出るみなさんには、
「どんな建物をつくるか」だけでなく、
「どんな姿勢で現場に立つか」、ぜひ考えてみてほしい。
建築は、図面だけでは完成しません。
人の姿勢が、現場をつくります。
最後までお読みいただきありがとうございました。次回は同じ工事部の若手にインタビューしたいと思います。
お楽しみに!
