化学|22.4と22.7を間違えるとどうなるのか?:希少なヘリウムの場合
今年の共通テスト化学追試の第5問に,液体ヘリウムの希少性,そして医療における,液体ヘリウムの冷却剤としての実用性の観点から,気化したヘリウムの回収に関する問題があった.
具体的には,密度$${1.20 \times 102}$$ g/Lの液体ヘリウム$${0.100}$$ L,つまり密度$${1.20 \times 102}$$ [g/L]$${\times 0.100}$$ [L] $${/ 4}$$ [g/mol] $${=3}$$ molのヘリウムが話題となっていた.
ここで気になったのは,問題にある注釈
「0 ℃, 1.00×105 Paにおける 1 mol の気体の He の体積は 22.7 L とする.」
である.
普段は「0 ℃, 1.0 “13” ×105 Paにおける 1 mol の気体の体積は 22.4 L」という方をよく見ると思うので,珍しいと感じた.
さて,ここで終わらずに,さらに考える.もし,22.7 Lをうっかり,22.4 Lと見間違えてしまうと,どのようなことが起こってしまうのだろうか.
具体的に考える.もし 0 ℃, 1.00×105 Paの条件下において22.7 LのHe気体が目の前にあるとする.このとき正しくはきっかり”1 mol”ある,と考えるべきところ, 上記のミスが生じると,1× 22.7/22.4=約1.013 mol”あると考えてしまう.つまり,約1パーセント過大に見積もってしまう.つまりたとえば,今回の3 molのヘリウムの場合,3 mol × 4 [g/mol] ×1/100 =0.12 gの分を過大に見積もってしまう.
12gのうち0.12g過大,というだけなら,勉強における単なる小さな計算ミスだ,となるかもしれない.
ここから,リアルなお金の話に持っていく.折しも,中東情勢の不安定化を受けた,ヘリウムの供給不安がニュースになっているところだ.
少し前の記事だが,2026年04月04日共同通信の記事より.まさに,医療という実用において問題となっているヘリウム供給に関するものだ.
ヘリウム調達に事業者不安 MRIに影響、米国産で補充
「貿易統計によると、日本は2025年にヘリウムの約60%を米国から、約37%をカタールから輸入した。」とある.
まず,実際に貿易統計を見て数字を確認してみる.
財務省貿易統計HP (https://www.customs.go.jp/toukei/search/futsu1.htm )
より “A-1品別国別表”に進み,「輸入」「年内の累計 2025年(1〜12月)」
「品目コード指定 280429100」として検索すると,
輸入の合計は1068109 kg.これに対し,例えばカタールは398759 KG.
確かに,(398759/1068109)*100=37.3‥≒37%となり,記事の数字と一致する.
そして,本題の価格を確認する.輸入の合計1068109 kgに対し,金額は 22287264×1000円 =222億8726万4000円と計算できる.
では,1kgあたりの価格は?
ざっくり,2×1010 [円]/106[kg] =2×104 [円/kg],つまり1kgあたり約2万円.よって,22.4と22.7のミスは,He 1 kgの場合,2万円のうち, 2×104×(1/100)=200円の部分に関わってくるような重大なミスと言える.
単なる問題を解く立場としてではなく,希少なヘリウムの調達に携わる立場になって捉えてみると,Heにおける計算ミスは人ごとではない,ということが想像できたと思う.
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