洋楽探訪#16:ポリス『見つめていたい』──優しさと狂気が隣り合わせた美学
ポリスの「見つめていたい(Every Breath You Take)」は、僕にとって、“音楽って、ここまで完成度を追求できるんだ…”と感じた楽曲のひとつですね。
1983年のリリースですが、時代を超えて今もなお、緊張感と美しさを放ち続けています。
この曲、当時ビルボードでなんと8週連続1位。しかもグラミー最優秀楽曲賞まで受賞しましたね。
僕は当時まだ中学生でしたが、あの夏、街のあちこちでこの曲が流れていた記憶があります。暑い日の夜にこの曲のイントロを聞くと、時間がゆっくりと流れるような感覚になったものです。
まず何と言っても、アンディ・サマーズのギターリフ。まるで1本の糸をピンと張るような緊張感があります。
そしてスチュアート・コープランドのドラムがその糸を絶妙に揺らし、スティングのベースが地面を支える。そこに彼の静かで語るようなボーカルが乗ってきて、サビで感情が一気に噴き出す。
ほんの数分の中に、映画1本分のドラマが詰まっているような構成です。
歌詞だけ読むと「ストーカーソングじゃない?」という声も多いこの曲。でも実際、スティング自身も「これは離婚寸前の妻への嫉妬と監視の歌」と語っています。
なのに、なぜこんなに美しい?
それはたぶん、“感情の暗い側面”をも芸術として昇華できる、スティングの知性と狂気があったからだと思うんです。
モノクロのMVも忘れがたいですね。タバコの煙、冷たい視線、黒人の弦楽隊。ストーリーは語られないのに、そこには確かに物語がある。
10ccのゴドレイ&クレームが手がけた映像美は、今見てもまったく古びません。
この曲が収録された『シンクロニシティ』が、ポリスにとって最後のオリジナルアルバムになったのも、なんだか象徴的ですね。
静かに、でも確実に、バンドは終焉に向かっていたのかもしれません。
それでも「見つめていたい」は、今もスティングのライブで演奏され続ける永遠の一曲。
優しさと狂気、そのギリギリの境界線を歌いきったこの曲は、間違いなく音楽史に残る名作です。
※Amazonアソシエイト・プログラムを利用しています。
※ヘッダー画像は僕の私物であるレコード、CDのジャケットを撮影したものです。
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