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声を届けぬ人々

ボイスメッセージが普及しない。

古くはドコモの
「プッシュトーク」というサービスから、
現在でもLINEの基本機能に一応採用されているが
まあー日常的に使われることがない。

プッシュトークは20年くらい前のCMを憶えている。
ストリート系の匂いをぷんぷんさせるローアングルな演出と
『PLAY PUSH TALK』と動くブロック体の文字が、
画面いっぱいに躍動感を出していた。
「二言三言の短い用件なら、
 メールと電話いいとこ取りの
 ボイスメッセージでしょ」
ということがよく伝わる、いい広告だった。

当時僕がケータイ(最初はボーダフォンだった)を
持っていたかどうかは覚えていないが、
(どうせドコモ独自のサービスだし)
便利そうだな、いいな、と思っていた。
しかし、CMはひと月もしないうちに流れなくなり
プッシュトークを使って声を吹き込んでいる人も
それを聞いている人も見ないまま
早々にサービスは終了したようだ。

外国でどうか知らないが、
少なくとも日本人にボイスメッセージは馴染まない。
それは何故か。

スピーチに慣れていないからだと思う。


気のおけない友達同士なら、電話はするだろう。
でも繋がらなかった時に留守電に声を入れるかと言ったら
少なくない人がそうしないと思う。
はじめから心の準備をしていれば別だが、
突然「一方的に喋れ」と言われても対応できない。

相手がいないのに、短い時間で、淀みなく、端的に、朗らかに…
それは最早〝演技〟なのだ。
日本人の多くは、スピーチに慣れていない。
「リアクションのない環境での一人語り」の練習をしてきていない。

もちろん、日本人の気質や教育が今と変わったとしても
メールやメッセージといった
文面でのやりとりが主流になっているところから、
声や音での連絡手段がそれに取って代わるとは思えない。
文面には「情報の確認がしやすい」というメリットがはっきりある。


僕は少し前からLINEのボイスメッセージを常用している。
先日いつものように録ろうと思って開いたら、
仕様が変わってものすごく使いにくくなっていた。
詳細は省くが、明確な改悪だった。
「日本人がボイスメッセージ使わないから…」と嘆き
相手にも「使いにくくなったから今後送れないかも」と
半分愚痴の報告をして、
ここまで書いてきたような考察をして、
翌々日LINEを開いたら元通りになっていた。

あれほど規模の大きいサービスで
マイナーな機能の仕様変更を1日2日で戻す
なんて、かなり珍しいと思う。
なんか名誉会長とかの
「オイあれ直せバカ、俺使っとんねん」という
鶴の一声で是正したのだろうか。

定かではないけど、
やっぱりマイノリティが生き残るには金か権力だろうな
と当たり前のことを想い、
僕のような持たざる者は
戦々恐々としながら日々声を震わすのだ。

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