続・三原由起子歌集を読む
三原由起子さんの第2歌集「土地に呼ばれる」(本阿弥書店)を読んだ。
三原さん初の歌集「ふるさとは赤」の9年後、2022年に世に出た作品だ。
土地が人を呼ぶこともあり わたしもあなたも選ばれし者
偶然は必然だと思う。必然は常に偶然という衣をまとってやって来る。
福島県双葉郡浪江町出身の三原さん。その地に生まれたのは必然であり、言いにくいことだが、東京電力福島第一原発事故に遭遇したのも必然なのかもしれない。そしてそのことを詠む三原さんは選ばれし者。
三原さんは決して原発問題を告発しようとはしていないのだろう。だが、その問題を射抜く眼は鋭い。多くのことばに秘められた真実と思い。
帰る人、帰らない人、帰れない人を抱きてわが浪江町(まち)はある
「まだ何も終わっていない」東京の雑踏歩けば叫びたくなる
責任をさらなる未来に持ち越して「仮設」「中間」便利な言葉
三原さんも「風評被害」を受けているようだ
自らのふるさとを詠めば名を売ると言われるならば詠み人知らズ
そして、こうも詠む
風評の世界で生きる何もかもなかったことにできる人たち
311の後、変わったこと、変わらなかったこと。
変わらなかったことにこそ変わったことを感じているような三原さん。
山なみの青、海の青、空の青 何もなかったように親しい
この歌集には原発関連の歌だけでなく、家族が入院したことやその他もテーマでの歌も多くある。
何食べる?と言い合えること献立が決まらないこと愛しき日常
東京で暮らして気付くふるさとの「何もない」という豊かさに
さりげない日常にこそ本当の幸せがあるということに、人間は皮肉なことに、非日常になって初めてわかるのかもしれない。
