映画「菊豆」を観た
中国映画の巨匠・張芸謀(チャン・イーモウ)のデビュー作にして傑作「紅いコーリャン」に続く第二作目「菊豆(ちゅいとう)」を観た。
1990年中国=日本合作映画。
中国人が作る映画には歴史を背景にした人間の深みと厚さを描く作品が多いような気がする。中国、台湾映画ともにだ。香港映画も1997年の中国への返還前までは佳作が少なくなかった。
そして「菊豆」、これまた傑作だ。
第63回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート。第43回カンヌ国際映画祭ルイス・ブニュエル賞受賞など高い評価を得た。

1920年代の中国。染物屋を舞台に菊豆(コン・リー)という一人の女性の人生を辿ることで運命ということを考えさせられる。
年老いた不能の染物屋に嫁いだ菊豆。
毎晩のように折檻を受ける。それは自分が不能であることへの仕返し。
菊豆はその老人の甥で使用人のように働かされている天青と不倫をする。
菊豆と天青は子どもを授かる。
そして老人は半身不随となる。ここで話は好転したかと思う。
が、子どもが自分の子でないことを知り、菊豆と天青には彼らの仲を見せつけられた老人は復讐に打って出る。
放火したのだ。だが、寸でのところで消し止める。
始まった菊豆の復讐
そして菊豆の復讐が始まる。
二人の仲を見せつけようというのだ、老人が死ぬまで。
これこそまさに因果応報だろう。
そして成長してゆく子ども天白。
菊豆と天青と天白は幸せのようにみえた。

老人はある時、天白を布を染める水に落とそうとする。
しかし、今まで口をきいたことがなかった天白はいう。
老人に対して「お父さん」と。ショックを受ける菊豆と天青。
天白3歳の誕生日の宴会。楊家の後継ぎだ。
すっかり「復権」した老人。
このままでは耐えられないという菊豆。
老人を殺そうという菊豆に対し「俺の伯父さんだ」とためらう天青。
そして何より天白は老人の子どもであるとして、菊豆らに冷たい視線を投げかける。これも何かの因果応報なのだろうか。

すっかり親子の老人と天白。だが、桶に入った老人は、天白が桶についていた縄を引っ張ったとたんに水の中に転落してしまう。
笑みをうかべながらながめる天白。
老人は亡くなったが・・・
老人は亡くなる。だが菊豆と天青の関係が崩れてゆくのだ。
あくまでも老人の甥である天青。それに納得いかない菊豆。
葬式の後、楊家の長老に指示で天青は家を出る。菊豆は再婚を禁じられるのだ。二人は離れ離れになる。何という運命だろう。
封建的なしきたりが残る田舎であり由緒ある染物屋。
そこで懸命に生きようとした若い二人だが勝てなかったのだ。
後に菊豆を訪ねる天青だが、天白は彼に冷たい。
天青が帰ると天白が戸を閉めて内側から錠をかける。
象徴的だ。
天青が家を出て10年。菊豆は再び3人でどこかへ行こうという。
天青に乱暴する天白。怒り狂う菊豆。
恐ろしい子どもだ、天白は。
幸せが来るかと思えば遠ざかる。運命。
「これからますます辛くなるな」と天青。
燃え盛る炎の中の菊豆
そして菊豆と天青は地下蔵で生き絶え絶えになる。
2人を外に出した天白。
菊豆をベッドに。だが天青を水に落とす。
這い上がってこようとする天青を棒で叩く天白。
泣き叫ぶ菊豆。
天青の上に落ちてくる赤く染められた布。
万事休すと思ったか、家に火を放つ菊豆だった。
滅びの美学ではないが、燃え落ちる家が美しい。
