落語日記 飲み仲間を前に落語を披露した馬治師匠
金原亭馬治の会
8月6日 都内某所
馬治師匠の贔屓である料理屋の女将さんが、常連さんたちに声を掛けて開いた落語会。常連さんだけの閉鎖的落語会なので、会場の詳細は省略。
庭が見える和室に、座卓を重ねて高座を設営。この和室に観客が10名のみという非常に贅沢な空間。先日の呉服店の二階での落語会に続き、お座敷での落語という贅沢さを味わう。
この日は、新宿末廣亭昼席の出番を終えて駆け付けた馬治師匠。常連さんたちと笑顔で挨拶を交わす様子は、ホームタウンへ戻ってきたような安堵感を感じさせる。
出演者の馬治師匠もお店の常連なので、観客の皆さんは見知った顔ばかり。この知り合いだけを前に行う落語会は、演者や観客にとって普段の落語会の環境とはひと味違うものだった。
この常連さんたちは、馬治師匠の独演会である馬治丹精会にもよく見に来てくれる。なので、落語家という仕事場での顔と、店の常連客同士で見るオフの顔という馬治師匠の両方の顔を知っている。この日の馬治師匠の落語家としての高座での表情は、店の常連さんたちから見ると、当然のことなのだが、普段の酒席では見られないもの。常連さんたちは、そんな普段見られない落語家としての表情を楽しみながら、暖かく見守っている。
会場には、皆さんが馬治師匠を応援している雰囲気が充満していた。常連さんたちしかいないという閉鎖された空間は、まさに店の延長。演者も観客も終始リラックスした雰囲気で、会場にいるみんなにとって、心地良い空間だった。
常連さんたちが落語会を開いてくれるというのは、馬治師匠がプライベートな空間でも、皆さんから人気があることの証し。落語家という職業としての顔ではなく、お店の常連さん同士という関係で、飲食を共にしながら見せる人間性に魅力があるということ。そんな素顔と高座で見せる表情とのギャップも、常連さんたちが感じる馬治師匠の魅力なのだ。
知り合いばかりの前で披露した落語。しかし、決して手を抜かず、落語家としてきっちりプロとしての仕事をした馬治師匠。この真摯な姿勢が、また一段と常連さんたちを惹きつけた。
「青菜」
まずは、お約束の蜀山人の夏の狂歌の披露から。その狂歌をもじって、常連さんにしか分からない内輪ネタを披露。庭が見えるこの場所に因んだ話をします、と盛夏にピッタリのこの噺。
馬治師匠のこの噺は初めて聴く。
主役の植木屋は、仕事をサボっていた風ではあるが、ずるがしこさのある悪人ではない。気の好い、自分に素直な男だ。その女房も、少し気が強いくらいで、亭主にあまり逆らわない。お人好しの植木屋の長閑な言動に、のんびりした空気が流れる。馬治師匠らしさあふれる青菜、私の好きな先代柳好師の青菜のような一席だった。
仲入り
「景清」
先日も聴いたばかりの馬治師匠の十八番。この噺には、主人公の定次郎を支える旦那が登場する。目を患って自暴自棄になっている定次郎を、辛抱強く励まして物理的にも支援している。そんな二人の関係がこの噺の見どころでもある。
この日に集まった常連さんたちは、みな贔屓でもある。そんな常連さんたちを前に、どんな思いでこの噺をかけたのだろう。間接的に感謝の気持ちを伝えたかったのだろうか。馬治ファンとしては、そんなことを考えながら聴いていた。
