空想書店45:戦国の書状サインは現代にも生きている【花押の文化】
人文コーナーを盛り上げよう!
華やかな文芸書、ビジネス書、児童書などと比べると、やや地味さを感じる「人文コーナー」を盛り上げる企画第二弾です。
前回の記事でも触れましたが、人間に関わる書籍のコーナー、というあまりにも「寄せ集め感」が半端ない「人文コーナー」の応援企画です。
古文書のサイン
今回のテーマは、「古文書のサイン」です。日本史を学ぶ中で何度か目にしたことがあると思います。古文書や書状などの最後にサインが書いてあります。それを「花押(かおう)」といいます。 一見しただけでは読めません。草書をさらに崩したり、自分の願いなどを込めデザインをしているからです。 これは、真似のされづらいオリジナルであることに意味があります。

出典:国立公文書館デジタルアーカイブ
(『飯田半兵衛宛徳川家康書状』より)

いろいろ書状などを見ていると、誰が書いたのか、わかるものも出てきます。 血縁関係や派閥によっては、形を継承していたり、はたまた、独創的な形のデザインがあったりするので、本当に奥が深くて面白いです。
花押とは
花押(かおう)
花押とは 東アジアの歴史の中で発展したサインです。 日本では平安時代中期から武将や貴族、僧侶が「この文書は間違いなく自分が書いたものである」と証明するために書き添えました。
平安時代中期、自分の名前を草書でオシャレに書くのが流行し始め、デザイン化していったのが花押の始まりです。
「偽造防止」のセキュリティ対策
戦国時代など乱世になると、他人が名前を騙って偽の手紙を出すケースが増えました。「絶対に他人には真似できない、自分だけの複雑な一筆書きのデザイン」が必要になり、花押は急速に進化しました。
そこには戦国武将たちのアイデンティティや願いが込められています。 こちらの文庫本は今は中古しか手に入りませんが、実際の花押がたくさん載っており、解説も詳しくとても面白いです。

著者:佐藤進一
今も生きている花押の文化
花押は昔の文化と思いきや、実は現代の日本政府でもバリバリ現役のルールです。 内閣の最高意思決定である「閣議決定」の書類には、総理大臣をはじめ、すべての国務大臣が最後に署名をします。このとき、ボールペンで普通に名前を書くのではなく、「全員が自分の花押を墨と筆で書く」という慣例が明治時代から今(2026年現在)に至るまで続いています。 そのため、政治家の方は大臣になるタイミングなどで、My花押を作ります。

(閣議の概要ページより引用)
もちろん、高市首相も、石破茂前首相も今も続いている文化です。(個人的には麻生太郎さんの花押が粋で好きです。載せられなくてごめんなさい。)
「花押」は作れる
大臣や首相がMy花押を持っているということは、今も自分で作れるということです。実は花押には、基本となるベースの形があります。 基本はまず、上と下に太い横線を引きます。これが「天」と「地」を表す枠組みになります。 その上下の線の間に、自分の名前(例えば「太郎」なら『太』の文字など)を激しく変形させて配置します。 この「上下の線でサンドイッチする」というルールを知っているだけで、一気にそれっぽい、引き締まったデザインになります。
My花押を作ってみた
ここで恥ずかしながら、BAKU空想書店の花押づくりを紹介させていただきます。 (専門家さんに指導していただいたわけではなく、普通に先程ひとりでつくったため、オリジナルすぎる旨ご承知おきください)BAKUは夢を食べるバクです。漢字で書くと「貘」です。これを草書に崩し、更に長い鼻と目を足し、下にはロゴとリンクする開いた本の要素を盛り込みました。

バクの鼻と目と本の要素をモリモリ盛り込みました


花押スタンプ
芸能人(武将)になったつもりで花押の練習をノートいっぱいにされるのもよいでしょう。少し難しいという方には、スタンプをつくります。

My花押づくりワークショップ
日本史好きの方に「My花押づくりワークショップ」 を開催します。お城めぐりや資料館が好きな歴史好きの方は、きっと「花押」の奥深さも知っているはずです。そんな方はぜひワークショップにご参加ください。もちろん、これを機に渋いサインをつくりたい方も大歓迎いたします!
※実在しない書店の空想企画です
「蔵書印」としてのMy花押
願いを込めて作った花押の用途のご提案です。
手紙の最後に。
閣僚のサインに。
そして、「蔵書印」としての利用方法です。
1000年以上も前から、自分の本に「これは私の本です」と証明するためにハンコを押したりサインを書いたりする「蔵書印」の文化があります。 現代では本を売ることを考えて綺麗に保つ人が多いですが、印刷技術が発展する前は、本は家を買えるほどの貴重なものでした。自分の物だと証明するために蔵書印を押していました。現代風にいえば、「漫画喫茶が所有する証明スタンプ」のようなものです。ご友人と本の貸借りをされる方にはとても粋な印になるのではないでしょうか。
私には、My花押がある。 これで、いつでも首相になることができます。(他の準備が皆無すぎる)

ちなみに…スタンプではなくちゃんと筆で書きたいという方のために。まだ書き慣れていないと「小学生のノートの端のサイン練習」のようになってしまうと思うので、“ガイド”スタンプもご用意いたしました。
薄くガイドがあれば、筆で美しく書けます!

