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【掌編小説】ゆっくりと、メテオ

ゆっくりと蒼炎を纏った流星群が迫ってくる。
空気が温められ、その灼熱の威力を理解すると同時に、間に合わない。と思った。体がうまく動かない。相手の魔法使いが一枚上手だった。私が防壁を貼る前に、メテオにやられるのが先だ。

これは詰んだな。どう考えても避けられる算段が浮かばない。連れてきてくれた仲間に申し訳ない気持ちになる。初めての戦場で私は、あまり活躍できなかった。
もう諦めて体を預けようと力を抜こうとするが、すくんでいるのか動けない。マヌケなままリタイアかなとゆっくりと私は目を閉じた。

どすんと体を突かれた衝撃で目を開ける。焼けた空気がチリチリと肺に入り苦しい。舞っている土煙から目を凝らすとランバートが私に抱きつく格好で倒れていた。
彼は素早く立ち上がり、「無事か?」と言った。答える間もなく、私の視界が揺らされる。彼はいつのまにか私を抱えて走り出していた。

がっちりと脚と背中を抱えられていることで、自分がお姫様抱っこをされている、と気づいた。鎧を通して胸板の厚さを感じる。毎朝うんざりしていた彼の鍛錬の音を少し思い出した。

揺れに合わせて体の節々に痛みが響き始めた。直撃を避けたがダメージは相当だろう。苦痛に顔をゆがめていたらしく、ランバートが「大丈夫か?」と聞いた。うまく声を出せずに首をゆっくり縦に振る。これはやられているな、と彼は独り言をつぶやいたあと、「ペース上げるぞ」と言って真っ直ぐ前に向き直った。
ランバートの顔。普段柔らかく癖のある金髪が装具から少し見えている。倒れた時についたのか頬には泥がついていた。
長いまつげに青色の瞳。あれ、コイツこんなに鼻も高かったっけ?と戦場では似つかわしくないことを考えている自分に驚く。呪文の詠唱や剣が交わる音は遠くかすかに聞こえ、心臓だけが大きな音を立てている。
ああずっとこうしていたいな。このままでいい。私は鎧に額をつけるようにして目を閉じた。

宿屋に戻り、回復した私はランバートを探すも姿が見えなかった。

「どうしたの失恋したような顔をして。」僧侶のシンシアが尋ねてくる。下の酒場から取ってきたであろうビールを二本ひらひらとさせている。
事情を話すとシンシアは、ブワワと吹き出してひとしきり笑ったあと、ため息交じりに続ける。

「ああ、たまにあんだよね、素早さを下げるデバフをくらった時、世界がスローになるから。走馬灯を見た気になるのよ。それが恋ならあたしは100人に恋したね。」

私は耳が真っ赤に変わっていくのを
ゆっくりとゆっくりと感じた。


#シロクマ文芸部


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