#652 AI時代に価値が上がるのは「質問力」かもしれない。〜メルカリの組織改革から考えた管理職の役割〜
7月20日付日経新聞10面「経営の視点」という欄で「人とAI溶ける境界線」というコラムを読んで思ったことを、メモ。
1、どんな記事?
メルカリの人事に関するもので、6月1日付で、技術部門トップの木村俊也氏に最高人事責任者(CHRO)を兼務させたという内容です。
AIがエージェント機能を持ち、自律的にタスクをこなす「AI社員」が誕生しつつある中で、「人事」と「AI・デジタル」を別々の部門で扱う従来の常識が崩れ始めている、という指摘でした。
記事では、米製薬会社モデルナの先行事例や、「GPUを買うのか、社員を新たに雇うのか」という現場の選択、そしてメルカリの木村氏が語る「人とAIの分業」の考え方が紹介されています。
2、「人事」と「AI」を一緒に考える時代
「AIは管理職を不要にする」という話を、最近よく耳にします。
この記事を読んで感じたことは、むしろ逆で、AIは、管理職を「管理職らしくする」のではないか、ということでした。
CIOがCHROを兼務する、という内容から、このコラムを「AI部門が強くなった」「AIが人の仕事を奪う」という文脈で読む人も多いかもしれません。
私が気になったのは、そこではありませんでした。人事とAIを、一緒に考える時代になったということです。
3、AI時代の管理職の仕事は「答えを持つこと」ではなくなる
これまで管理職には、知識があること、経験があること、正しい答えを知っていることが期待されてきました。
しかしAIは、情報収集も資料作成も、驚くほど速く正確にこなします。知識の量だけで言えば、もう人間はAIに勝てません。
では、管理職の価値はどこへ向かうのでしょうか。
メルカリの木村氏はこう整理しています。
新規のサービスを計画したり、リスク感覚で投資を決めたりするのはあくまで人間。AIは人の指示に沿って類似のサービスを調べたり、各種リスクを洗い出したりする役割を担う
「調べる」「洗い出す」はAIに任せられる。残るのは「何を、どちらの方向で決めるか」という判断そのものです。
4、AIは答えを出す。でも、問いは作れない
部下を育てるときに大切なのは、答えを教えることではなく、良い質問をすることでした。
1on1でも「最近どう?」ではなく「今、一番時間を使っている仕事は、本当に成果につながっていますか?」と問いかける。
AIも同じです。「市場分析をしてください」と指示すれば、それなりの市場分析が返ってきます。しかし「競合との違いではなく、お客様が意思決定するときの心理から考えると何が見えてきますか」と聞くと、まったく違う深さの答えが返ってきます。AIの能力を決めるのは、AI自身ではなく、質問する人の力なのです。
部下を育てる質問も、AIを使いこなす質問も、本質は同じです。
相手から答えを引き出す技術ではなく、自分が何を考えたいのかを明確にする技術だからです。
5、まとめ 〜「管理」から「編集」へ〜
いかがでしたでしょうか?
メルカリの組織改変のコラムを読んで思ったことをメモしました。
以前、「管理職は茶人であれ」という記事を書きました。
茶人は自分が主役ではなく、道具を選び、花を生け、その場に集まる人が心地よく過ごせるように整える役割です。
AI時代の管理職も同じではないでしょうか。
人が得意なこと、AIが得意なことをそれぞれ見極め、組み合わせ、成果が生まれる場を設計する。
答えを知っている人から、何を問うべきかを考えられる人へ。
AIは答えを出す。だから、人には「問いを設計する力」が残る。
管理職の仕事は人とAIが成果を生み出す場を編集すること。
管理職の価値は、そちらへ移っていくように思います。
最近ではAI活用のプレッシャーがすごい企業も多いと聞きます。私の勤務する企業も同じです。
新しい業務が発生したとき、それをAIに任せるか人に任せるか、誰がどんな問いを立てて決めていくのか。
そろそろそんなことを考えないといけない、それが管理職の役割であり能力の一つになる、のではないでしょうか?
最後までお読みいただきありがとうございます。
例によってコラムを読んで個人的に思ったことをメモしたものですが、どこか参考になるところがあれば嬉しいです
