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金は貯まれど飯まずし

「お金」ではなく「誰と食べるか」で人生は決まる


金は貯まる。

だが、飯がうまくない。飯マズ。

この言葉ほど、現代の独身男性の精神を端的に表すものはないかもしれない。

朝から晩まで働き、節制し、投資を学び、資産は右肩上がり。

それでも夜、一人で食べる外食やUberの容器の中には、何の味もしない。

スマホの画面の中では他人が集団旅行を楽しみ、恋人と笑い合い、大勢で誕生日を祝っている。

自分には資産があり、自由もある。

それでも、「誰と食べるか」がいない食卓ほど、静かな戦場はない。



改めて、人間的繋がりの重要性


結局のところ、人生とは「対人交流の質と量」で幸福度が決まるということを、誰もがどこかで知っている。

心理学の研究でも、「社会的つながり」は幸福度を最も強く予測する要素だとされる。ベストセラー『The Good Life』においても同様の結論である。

年収でも、健康でも、学歴でもない。目に見えるものは効用逓減する。

「誰と食べ、誰と笑い、誰と沈黙を共有したか」が、人間の幸福を決める。


その媒介こそが「食事」だ。

ご飯を共にするという行為は、単なる栄養摂取ではない。

人と人とが腹を割って語り、互いの存在を確かめ合う、最古にして最も原始的な儀式だ。

人間関係の多くは、食卓から始まり、食卓で終わる。

家族も、友人も、恋人も。

「飯を共にできる相手」がいるかどうかが、人生の豊かさを決めている。



独身男性の実態


しかし、日本の現実は厳しい。

統計的にも、未婚男性は既婚男性や女性よりも圧倒的に幸福度が低い

社会的孤立率も高く、孤独死の多くは中高年男性に集中している。

理由は単純で、男性は「友達をつくる回路」が女性よりも少なく、

職場を離れた瞬間、交流が極端に減るからだ。

そもそも男性においては、コミュニケーション様式が「共感」と「受容」ではなく、「情報交換」と「議論」であるが故に、原理的に対人関係のハードルは高い。
そして一度転落したら容易に相手にされない。

それは男にも女にもであるが、女性の場合は転落しても豊富な同性および異性の人脈及びセーフティネットが存在しているため、いわば男性よりも”失敗しやすく”、”転落しやすい”。
つまり転落によるリスクが男性より低いのであり、それが人生設計の自由度に反映されている。男性はそのジェンダーにおいて失敗や敗北や転落があまり許されていない。
常に「努力」「勝利」が求められている(社会人以降においては、「友情」は成立しにくい)。つまりは競争とその結果にフォーカスしており、女が同調と過程を重視するのとは異なる世界を生きている。


経済的には成功していたとしても。

高級マンションに住み、確定申告必須の年収を貰い、株や不動産の資産が毎月右肩上がりに増えていく。

しかし、一緒に飯を食う相手がいない。

休日に一人で高級レストランに行っても、

美味しい料理は「味」だけであって「思い出」にはならない。

思い出には、他者の存在が必要なのだ。



Die with Zero


ビル・パーキンスの名著『Die With Zero』では、

「お金は使わなければ意味がない」と説かれている。

人生の目的は資産の最大化ではなく、思い出の最大化だ。

老後に貯まった金よりも、若い時に体験した旅や友情、恋や食事こそが人生の本質。

つまり「金は思い出のための燃料」であり、

貯めすぎれば、燃料タンクばかりが満タンで、走り出せない車になる。

私たちは、いつの間にか「資産形成」という言葉に呪縛され、

“今ここ”を味わう力を失っている。

誰かと笑い合う夜の居酒屋、

何気ない昼下がりのカフェ、

好きな人と食べたありふれたラーメン。

それらこそが、のちに振り返ったとき「生きていてよかった」と感じる瞬間になるのかもしれない。

人がいつ死ぬかなんて、病気でもなければ、結局誰にも予測できない。

毎日”最後の晩餐”になる可能性だってある。



資産形成と幸福度


もちろん、金は必要だ。

金がなければ、自由も選択肢も得られない。

しかし、金が幸福を保証するのは“人と使う”時だけだ。

孤独の中では、金はただの数字にすぎない。

日経平均株価が上がっても、米FRBが利下げを決定しても、
LINEが鳴らない夜は静かすぎる。

飯がまずい理由は、味覚ではなく「共有の欠如」だ。

同じ皿を囲み、笑い合う相手がいれば、

たとえインスタントラーメンでも、飯ウマ。

そしてその記憶こそが「人生の資産」になる。



さいごに


これからの時代、真に豊かな人とは、

資産だけでなく「思い出資産」を積み上げた人のことだと思う。

金を稼ぎ、守り、増やすのは大切だ。

だが、それと同じくらい、いやそれ以上に、

「誰と飯を食うか」を大事にしたい。


金は貯まれど飯まずし。

だからこそ、金を「思い出を作る道具」として使う勇気が必要だ。

人生の幸福度は、財布の厚みではなく、

「誰と笑って飯を食ったか」で決まるのだから。


…そんなわけでしばし、海外で現地民と現地メシを楽しんできます。

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