銀行融資続編 ”◯◯◯◯万円=自由に使えるお金” ではないという現実【開業準備ログ Vol.9】
こんにちは。4月2日に「くるみの森歯科」を開院し、怒涛の1ヶ月を過ごしています。
前回の「内装工事編」から少し時間が空いてしまいましたが、今回は開業の根幹に関わる「融資」について書きたいと思います。
開業真っ只中を経験して、いま改めて思うこと。それは「知らないことばかり」ということです。物件、内装、保健所、消防…あまりに開業(起業)するのに知らない事が多すぎる中で、特に見えにくいのが「お金」の仕組みでした。
今回は、私が直面した融資のリアルを正直にお話しします。
「融資額=自由に使えるお金」だと思っていた。
開業準備前の私は、大きな勘違いをしていました。
例えば、「1億円借りたら、1億円を自分の裁量で自由に使えるんでしょ?」
なんとなく、そんな認識だったのです。 でも実際は、全く違いました。融資されたお金は、決して一つの大きなお財布に入るわけではありませんでした。
融資は “色分けされたお金”
開業融資はシンプルに見えて、実は中身が明確に分かれています。
設備資金
運転資金
この2つです。これらがどう違うのか、開業プロセスを進める中で痛いほど理解することになります。
設備資金=用途がガチガチに決まっているお金、
つまり「医院を作るための費用」です。
内装工事費
ユニット
レントゲンやCT
マイクロスコープなどの大型機器
重要なポイントは、これ「以外」にはに一円も使えないということです。 つまり、スタッフの給与、家賃、求人・集患のための広告費などには回せません。図面と睨めっこしながらミリ単位でこだわったユニットの配置や設備、夢を膨らませて予算を割けば割くほど、ここはあっという間に膨れ上がります。また内装完成後に必要な家具や家電などがここに含まれるかどうかは、銀行担当者と相談が必要になります。
運転資金=経営を回し、生き抜くためのお金
一方で運転資金は、「開業後の厳しい時期を生き抜くためのお金」です。
スタッフの給与
毎月の家賃
歯科材料費
広告宣伝費
ここで初めて気づくのです。 「あれ? 借りたお金、全部自由に使えるわけじゃないんだ…」と。
融資額の “中身” を決めるのは自分
例えば、総額1億円の融資枠を確保できたとします。
設備費:7,000万 + 運転資金:3,000万
設備費:5,000万 + 運転資金:5,000万
この配分を決めるのは、他でもない自分自身です。 そして現実は残酷で、「設備を増やせば、運転資金は確実に減る」というトレードオフの関係にあります。ここが経営者としての最初で最大の分岐点になります。
さらに知らなかった「返済条件の罠」
これだけではありません。資金の性質によって、返済条件も別々に設定されます。
設備資金: 長期(7〜15年)でじっくり返す
運転資金: 短期(5〜7年)で早く返す
これが何を意味するか。 「運転資金の返済が先に重くのしかかってくる」ということです。開業して間もない、まだ患者さんが定着しきっていないタイミングでキャッシュフローが苦しくなる時期が来る。この構造を知っているかいないかで、心の余裕は全く違ってきます。運転資金の割合が多くなると、返済期間が短いため毎月の返済額も多くなってしまいます。
リースという選択肢の使い分け
銀行融資だけでなく「リース会社を使う」という選択肢もあります。リース会社からの融資は、設備だけでなく運転資金に充てることも可能です。これを活用することで、銀行融資の枠をまるごと設備に回す、といった使い分けもできます。
ただし、銀行に比べて金利はどうしても高めになり、支払総額は増えてしまいます。現実的な落とし所としては、銀行からの融資を設備費に当てて、リース会社からの融資を運転資金にあてる、という使い分けもあると思います。
一番大事だったと気づいたこと
開業準備を振り返って
設備は “夢” ではなく “戦略” である。
医院のコンセプトや治療方針、どのような患者さんに力を入れたいか。患者さんが喜んで通院してくれるための導線設計が最重要になります。 インプラント重視の歯科医院なら、CTや外科器具、滅菌器具は優先的になります。一方で回転率を重視するならユニットの台数が最優先になるでしょう。
つまり、「どういう理念で、どう稼ぐか」によって、必要な設備と空間は自ずと決まるのです。
昔の自分に言いたいこと
もし、開業を思い立った日の自分に一つだけアドバイスできるなら、これだけは強く伝えます。
「1億円の使い道を、戦略的にちゃんと分けろ」
まとめ
融資は自由なお金ではない
「設備資金」と「運転資金」で完全に分かれている
その配分は自分で決める必要がある
それぞれで返済条件(期間)も違う
設備投資は、経営戦略とセットで考える
開業前は、どうしても目に見える「内装の美しさ」や「最新の機械」に意識が持っていかれます。それは職人としての歯科医師としての性(さが)かもしれません。
でも、本当に大事なのは「資金の配分」です。 数字を業者やコンサルタント任せにせず、自分で中身を握って理解しているかどうかです。
これから開業を考えている先生方にとって、少しでも参考になれば嬉しいです。
