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元服役囚のおかしな弊害

最短出所するための刑務所ハック【ムショの歩き方】を執筆・販売をしています、黒崎六番といいます。

【ムショの歩き方】は現在保釈中の方、裏社会・裏稼業の生業の方、あとは執行猶予中の方も、今後刑務所に行く可能性がある方は、一度読んでおくとかなり助けになると思います。

第一に足を洗って真っ当に生きてみることをお勧めしますが、ムショなんて人生の無駄遣いですから、服役生活なんかしたくないなと、思い返す意味でも読んでもらえると幸いです。

今回のテーマは『元服役囚のおかしな弊害』としましたが、弊害ではなくても、収監前と出所後で変わった点を思いつく限りで記述します。


塀の中では鉄板ジョークとなっている話があります。

とある元受刑者が長いお務めを終えて出所しました。

自宅マンション、とあるデパート、ありとあらゆるエレベーターの前で身体が自然と誰かがボタンを押すのを待ってしまうという話がありました。

塀の中ではエレベーターもありとあらゆる扉も刑務官が開けてくれます。

開けてくれるというか開けてくれるのを微動だにせず、正面を向いて待たなければいけません。

引率者の刑務官、すれ違う刑務官、すれ違う受刑者など人の目も見てはいけません。

正面を向いて歩き、正面を向いて待つ。


コンビニの扉の前、男子トイレの扉の前、人に開けてもらう癖が抜けるまで時間がかかるらしいというお話です。

数年服役して、久しぶりの社会。そんな話を思い出しても、まさか自分はそんなことになるわけないと信じていました。

さすがに扉を開けてくれるのを待ったことはないですが、『あ、自分で開けるんだったな』と思ったことはあります。

それから工場内では脇見が固く禁止されているので、誰かが物を落としたり、目の前で人が転んだりしたとしても手元から視線を外してはいけません。

それは脇見になり、始末書案件です。
始末書は半年で3枚切られると懲罰となり、元の居場所には戻れません。

なので、すっかり脇見をしない癖もつきました。

出所後、某ファミレスに友人と食事をしていました。

『ガッシャーン』

猫型の配膳ロボットとおじさんが派手にぶつかり、私のすぐ隣で配膳ロボットがド派手に倒れました。

倒れた状態で途切れがちの音楽を流し、こちらに向かって寝言のように呻いている猫型配膳ロボットを気にも留めず、黙って食事を続けて、友達に気味悪がられたことがありました。

今では大きな騒音が起きた時に、一瞬無視してしまいますが、ワンテンポ遅れて振り返る程度には回復しました。


それから仕事で大型倉庫に入ったことがありました。

(ムショの工場みたいだな)とは一瞬思いましたが、歩いている時に両手の指先が無意識にピンと伸びてることがあり焦ってグーパーしました。

刑務所では移動の際の指先は耳が腐るほど注意されます。

『五指を揃えて爪先まで集中して指先伸ばさんかいッ!』

五指(ごし)なんて聞いたこともなかったし、今漢字変換しても出てきません。

倉庫型の某有名ディスカウント店でも知らず知らずに指先を伸ばして歩いたことが二度ありますし、逆に五指伸ばして歩いているおじさんを見たこともあります。

なんだアイツ、元受刑者じゃねーの?と思ったのは言うまでもありません。

YouTubeで刑務所の消灯のチャイムを聴くと泥のように眠れたりします。

書道の有段者の女性社員に字が綺麗だと褒められたことがありますが、刑務所で手紙を書きまくっていたおかげです。

結婚式なんかあると友人の祝儀袋の氏名の記入や、郵送物の宛先記入など代わりに書いてくれと頼まれることが増えました。

逮捕された旦那が契約してるものについて問い合わせや、認否を明らかにしないって何?など弁護士に相談に行く前の無料相談所みたいな扱いを受けています。

羽生善治しか知らなかったのですが、刑務所で将棋にハマったおかげで、渡辺九段や藤井聡太七冠などでテンション上がるようになりました。

ハム将棋も龍が如くの将棋もボコボコにできるようになりました。

味噌汁が大好きになりました。
最近になってようやく、『具は一種類の方が素材の違いが味わえていいんだぜ』という馬鹿みたいな呪縛から解き放たれましたが、刑務所以来今でも味噌汁は好物です。

刑務所で一生分聞いたせいで、人脈自慢、喧嘩自慢はみじめったらしくて聞いていられなくなりました。


母親系の感動のお話は聞けないし、観れなくなりました。


とまあ弊害から長所・特技になったものまで並べました。
本当はもっとあると思いますが、今回はここまで。

それでは最後まで読んでいただきありがとうございます。

《消灯》

【ムショの歩き方シリーズ】模範囚が教える刑務所ハック①〜⑤

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黒崎  六番|ムショの歩き方-模範囚のススメ-著者 応援していただける方がいるなら作家活動に励みます。