8ページに吠える
五月の晴れた日。
乾いた風がさらっと吹くだけで真っ白なエゴの花がぽたぽたと とうに花の終わった雪柳の上に落ちて、もう一度花を咲かせたようだ。
朝からひとり、家でのんびりと過ごす。
午前のうちにnoteを書いた。今日は早くに眠ろうか。そのままnoteの探索を続けていたらうっすらと眠くなり、思うままにリビングで犬と一緒にうたた寝をした。
なんの拍子にかふいっと目が覚め、ぼんやりとした。きのう図書館から借りてきた数冊のうち、最も大きな一冊をパラパラとめくっていた。1700年代から1920年代までの『絵本の世界 110人のイラストレーター』の絵を集めたもの。時代も色あいも、なにもかもがさまざまで見ていて楽しい。犬の背を撫でながら「うへー!」などと声を上げて見ていた。
ひとり時間の贅沢よ。それでもまだゆったりとした時間がある。
もう一冊。短編集らしい。手を伸ばして読み始めた。その冒頭の一編で、がらっと心持ちが変わってしまった。でも閉じることはできない。これはなに? どうなるんだろう。8ページのお話。最後には、「……ぐぐぐっ。ふぃ、うぅ……わあーん」と声を上げて泣いてしまった。ちっ……。そうなんだよ。うっかりと触れられてしまうと、まだダメなんだ。わたしが「愛」という言葉を熱をもって使えるのは犬に対してだけなのだ。この本のお話は、大切な大切な飼い犬を失った当日とその翌日のことが描かれていて、犬が「愛」を言ったんだ。『童話集』とあるから、ちょっと不思議な話なのだけど、だめなんだよ、そこはまだ自分でもあまり触らないようにしているんだ。見ないわけにはいかないけれど、深く立ち入ったら、もってかれる。だから今はそっとして、時間に任せてあるんだ。
先代犬を見送ってから一年半。見えないけれど消えないのを少しずつ少しずつ奥へ追いやった。もういまは忘れているときもある。
そこを突然に撫でられて、ちょっと驚いただけだ。そこには形を残して厳然とあることを思い出してしまった。そんな「わあーん」だって、ものの90秒。その最後の20秒は、鼻をぐすんぐすん言わせながら、目次やら本の奥付けやらを舐め回していた。両の掌底でぐりぐりっと瞼を擦って、「忘れぬうちにnoteだ」とこれを書いている。
おっと、予定より早くうちの人が帰ってきた。本日の収穫。いい香り。

ふふふ。お気づきだろうか──。
わたしには今日、記事のストックがあるのだ。
ふふふふふふ…………。


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