子供の睡眠障害④-「寝ぼけ」「夜中に叫ぶ」「夢遊病」は大丈夫?子どもの睡眠時随伴症
📖 睡眠シリーズ
① 子どもに必要な睡眠時間
②小児不眠症
③閉塞性睡眠時無呼吸症候群
④パラソムニア(今回)
⑤睡眠相後退症候群
⑥ むずむず脚症候群
「夜中に突然叫び始めた。」
「目を開けているのに話が通じない。」
「朝になると本人は何も覚えていない。」
このような様子を見ると、「てんかん?精神的な病気?」と心配になる保護者は少なくありません。実は子どもでは比較的よくみられる睡眠現象で、多くは成長とともに自然に改善します。
今回はその原因である睡眠時随伴症(パラソムニア)について解説します。
パラソムニア(Parasomnias、睡眠時随伴症)
睡眠中や眠りにつくとき、目覚める途中に起こる、普段とは違う行動や体の反応の総称です。
寝ぼけや寝言もこの仲間に含まれます。
子どもの脳や睡眠の仕組みは発達途中にあるため、成人より睡眠時随伴症が起こりやすいと考えられています。
子どもの代表的なパラソムニアに、錯乱性覚醒、夜驚症、睡眠時遊行症(夢遊病)、悪夢障害があります。
ほとんどの場合、思春期までに自然に解消しますが、一部の人は成人期まで持続する可能性があります。

ノンレム睡眠、レム睡眠それぞれで起きやすいものがあります。
錯乱性覚醒、夜驚症、夢遊病(睡眠時遊行症)などは深いノンレム睡眠中に起こることが多く、睡眠の前半にみられます。
悪夢障害はレム睡眠で起きるため、睡眠の後半にみられやすいです。

錯乱性覚醒 Confusional arousals
いわゆる「寝ぼけ」です。
深いノンレム睡眠(特に睡眠前半)で起こりやすいです。
有病率はおおよそ18%と推定されています。
症状が持続する時間は、数分から1時間ほどです。典型的には、5~15分くらいです。通常、完全に目が覚めることはなく再び眠ります。
無理やり覚醒させると暴れることがあり、外部の状況を理解できず混乱した行動をとります。
典型的には、寝たと思った子どもが、がばっと起きて数分間変なことをする、という状況です。

夜驚症 Sleep terror
夜驚症は、睡眠の前半で起きやすく、入眠後1~3時間ほどで眠っていたところ突然覚醒し、身体を激しく動かしたり叫んだりします。
有病率は約1割と推定されています。
4~12歳の子どもに多く、5歳から7歳がピークを迎えます。
典型的な発作では、子どもは睡眠から突然目覚め、ベッドに座ったり、ベッドから飛び降りたり、恐怖から叫んだりします。パニックになり、怯えた様子をみせます。時に、見えない危険から逃れようとしたかのように、家具や壁に必死にぶつかるなど自傷や危険行動につながることもあります。
自律神経系の過活動を認め、頻脈、頻呼吸、発汗、顔面紅潮、瞳孔散大、興奮、振戦、筋緊張亢進がみられます。
基本的には起こさず、自然と再入眠するのを待ちます。
翌朝になって起きると忘れていることが多いです。
発作中は保護者の呼びかけに反応しないことが多く、本人も周囲の状況を理解できていません。保護者が抱きしめたり起こそうとすると、さらに混乱して抵抗することがあります。
通常数分で終わりますが、1時間続くこともあります。
子どもは成長とともに自然となくなることが多いので、薬物治療は必要ないことが多いです。
重症で生活に支障がある場合には、専門医の判断で薬物療法が検討されることがあります。
使用されるのはベンゾジアゼピン系の薬剤やラメルテオンであることが比較的多いですが、小児では専門医による慎重な判断が必要です。

睡眠時遊行症(夢遊病) Sleep Walking
睡眠時遊行症は、睡眠中の人が自覚のないまま半ば無意識の状態で歩き回る現象です。
有病率は約7%とされています。
4〜8歳頃に多く、学童期に最もよくみられます。
睡眠時遊行症の人は、歩きながら繰り返し何かをつぶやいたり、障害物にぶつかってけがをすることがあります。
ほとんどの人は起きたときには睡眠中に歩き回ったことを覚えていません。
通常、睡眠時遊行症によって危険な行動をしたり、怪我をしたりするのではない限り、特別な治療は不要です。
無理に起こす必要はなく、安全を確保しながら寝室へ誘導する程度で十分です。
カフェインを控えるなど、睡眠不足や不規則な生活など、睡眠を乱す要因を減らすことが大切です。
また、起きてしまった場合に危なくないよう、ドアや窓の安全対策をすることや、危険物を取り除いておくことも重要です。
一般的な対策で効果がなければ、ベンゾジアゼピン系薬剤を使用することがあります。しかし、ベンゾジアゼピン系薬剤の長期的な使用は、薬物依存をもたらすことがあり注意が必要です。

悪夢障害 Nightmares
悪夢障害は、繰り返される悪夢によって強い苦痛や日中の生活への支障が生じる状態です。
上の三つの疾患と違い、レム睡眠時に起こるため睡眠の後半で起きることが多いです。
悪夢の内容が目覚めた後も年齢相応に記憶に残ります。そのため、再び眠りにつくことへの恐怖など、大きな苦痛や日常的な支障を引き起こす可能性があります。
片頭痛、気管支炎、喘息などの慢性疾患を持っていると起きやすいようです。
また、抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やアルコールも悪夢を引き起こす可能性があると考えられます。
治療としては、まずは睡眠習慣を整えたり、不安やストレスへの対応を行うことが基本です。
改善しない場合には、イメージリハーサル療法(IRT)などの心理療法が検討されます。PTSDに関連した悪夢では、成人を中心にプラゾシンが使用されることがあります。
小児では専門医による慎重な判断が必要です。

まとめ
子どもの睡眠時随伴症は決して珍しいものではありません。
多くは脳の発達過程で起こる一時的な現象で、思春期までに自然に改善します。
大切なのは無理に起こさず、安全を確保することです。
一方で、病院を受診したほうが良いケースもあります。
次のような場合は、小児科や児童精神科への相談をおすすめします。
毎晩のように繰り返す
怪我をする危険がある
日中の眠気が強い
思春期以降も続いている
発作中に手足のけいれんや失禁がある
てんかんとの区別が必要と思われる

参考文献
Sateia MJ.
International Classification of Sleep Disorders – Third Edition (ICSD-3).
American Academy of Sleep Medicine. 2014.Paruthi S, et al.
Recommended Amount of Sleep for Pediatric Populations: A Consensus Statement of the American Academy of Sleep Medicine.
Journal of Clinical Sleep Medicine. 2016.Parasomnias: An Updated Review.
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