元彼の恋文を添削する夜
先日、仕事から帰ると元彼から電話があった。
私と別れるきっかけにもなった、気になっている女性(元彼はバイである)と何度目かの食事に行ったが、告白に至れなかったという旨の電話だ。
何を聞かされているのか、と思いつつも話を聞いてしまった。
気になっている女性については
・若い
・元気
・顔がいい
・よく走る
という薄っすい情報しか持っていないのだが、ルッキズムの激しい元彼が顔がいいというのだから、さぞ顔がいいのだろう。
もう何度も2人で食事に行って、今回は「結婚して子どもできたら仕事辞めようかな」なんて話もしていたぐらいで、脈がないとは思えないが、元彼は確信が得られず告白する勇気がないらしい。情けない。
どうするか悩みつつ「こんな行動があったら脈アリ!」という役に立てなさそうなショート動画や、恋愛リアリティショーをみて、気になっている女性との関係性について、考えているらしい。
また、ちょっとした共通項を見つけては「運命かも」とすぐに運命だと思おうとしているらしい。
私と元彼が付き合ったのは流れというか「付き合ってると思ってるけどあってる?」という会話からだったから、きちんとした告白のプロセスを踏んでいない。
だからこそ、元彼の中学生のような、幼い恋愛観を知らなかった。
もうLINEで告白しようかな、という元彼を制止しつつ、面白くなってしまって、LINEのメモに残っているという告白文の下書きを送ってもらったら、あまりに酷い恋文であった。
・「!」の多用
・一文に二度も相手の名前が入る
・一文に二度も「だけど」が入る
・「好きです」という主題が最後まで出てこない
・形容しがたい思春期感
言葉で飯を食っている私からすると絶句する文章で、失礼だがこれを送られる女性の気持ちを思うと気の毒にすら思えた。
元彼はかなり頭のよい人間なのに、恋というものは人をおかしくする。
衝撃を隠せないでいると元彼から「夏井先生みたいに添削してよ」と依頼が。
何が楽しくて元彼の恋路が上手くいくようにサポートせねばならんだ、と思いつつも悪文を見るとすぐに校正する習慣がついている私は言われずとも添削を始めていた。
「!」や相手の名前の登場頻度を減らし、主題を序盤に移動させ、全体を整えてみたところ「このセリフで今日告白すればよかった」とご満足いただけた。
明日告白してしまおうか、また日を改めて食事に誘って告白しようか…とうだうだ悩む元彼の話を聞きながら夜が更けていき、元彼の寝落ちにより通話は終了した。
どこまでも勝手で人の気持ちを考えられない人だけど、惚れた弱みというやつである。
よりを戻したいという気持ちはないが、長年生活を共にした仲間として、またほんの少しのミーハー心で今後も様子を見ていきたいと思う。
