第八章|あの夜、自分を信じてみた
いよいよ大会1週間前。
ここから最終調整に入っていく。
【カーボディプリート&カーボアップとは】
【1】カーボディプリート(糖質枯渇期)
期間:3〜5日程度
炭水化物を極端にカット
タンパク質と脂質中心の食事
トレーニングで全身の筋グリコーゲンを使い切る
→ 筋肉の「糖タンク」を空っぽにするイメージ
僕の場合は、月曜〜金曜までディプリート。
【2】カーボアップ(糖質補充期)
期間:大会前の1〜2日
炭水化物を大量に摂取(消化の良い糖質中心)
脂質は控えめ
トレーニングは軽くパンプさせる程度
→ 空になった筋肉に糖と水が一気に入り、パンプ感UP
僕は土曜日からカーボアップをスタート。
■ 得られる効果
筋肉のふくらみ・ハリ・カットが際立つ
皮下の水分が減り、シャープでドライな仕上がりに
ステージ上で最大限に見栄えが良くなる
もちろん、この最終調整も人生初の経験だった。
減量もキツかったけど、このディプリートは別次元のキツさだった。
体に力が入りましぇん(ガチ)
なんかもう、語尾もおかしくなるくらいヘロヘロ。
学校? 何言ってるの?
授業はまったく頭に入ってこない。
体育の授業では、お地蔵さん状態で立ち尽くすしかなかった(笑)
そんな状態で、
朝とトレ後の有酸素2回+トレーニング。
扱える重量は当然落ちてくるけど、
中村さんからは、
「できるだけ重量は落とさないようにね!」
って言われた。
Wow…笑
ちなみに、地下鉄でジムに通ってたんだけど、
ディプリート後半になると自分がどこの駅にいるのか分からなくなるくらい頭が回らなくて、
切符売り場の前でフリーズしたこと、今でも覚えてる(笑)
—
ここまで来ると、仙人モード突入。
「土曜日に炭水化物が食べられる」
それだけが希望だった。
金曜の夜にはもう完全に廃人状態だったけど、
**「明日ご飯が食べられる!」**って思ったら、嬉しすぎて眠れなかった。
カーボアップ、そして水抜き
土曜からカーボアップが始まる。
それと同時に、**“水抜き”**もスタート。
これは、皮膚を薄くして筋肉のカットや血管を浮かび上がらせるため。
実はディプリートを始めた月曜日から、
中村さんに言われて、1日6ℓの水をがぶ飲みしてた。
これは、体に**「排出モード」**を覚えさせるため。
そこから少しずつ水分量を減らしていって、
大会前日は500ml〜1ℓに制限。
塩分調整をする選手もいるけど、
抜きすぎると筋肉が張らなかったり、脚がつったりする。
今回はナトリウム調整はせず、普段通りでOKとのことだった。
カーボアップの食事(地味につらい)
白米200g+鶏肉150g × 5セット
これを3時間おきに食べていく。
—
最初の1〜2食は、めちゃくちゃ美味しく感じた。
久しぶりの炭水化物に感動すら覚えた。
でも…
水分制限されてるから、口がパッサパサ。笑
そのうち、白米が全然喉を通らなくなってくる。
「水がないだけで、こんなに白米って食べづらいのか」って、本気で思った。
3食目あたりから、逆に食べるのが辛くなってきた。
—
身体が張ってきたような、きてないような…
正直、自分じゃあんまり分からなかった(笑)
そして東京へ
仙台から東京に着いて、前泊のホテルへ。
中村さんに身体を見てもらって、
**「引き続き食べてOK」**とのこと。
—
夜は水を抜くために半身浴を1時間。
そのあと、全身にベビーオイルを塗って
長袖長ズボンを着て体に馴染ませる。
—
最後に中村さんが言ってくれた。
「今日ぐっすり寝れれば、明日には水が抜けて、さらに良くなってるはずよ。」
「喉が渇いてるから寝づらいかもだけど、ゆっくり休んでね。」
—
その言葉を聞いて、部屋でひとりになったとき
やっとここまで来たんだなって、しみじみ思った。
全部、初めてだった
気づけば、全部が初めての経験だった。
自宅での筋トレから始まって、
ゴールドジムに入会して、中村さんに出会って、
ボディビルの大会に出ようと決めて、
初の高校生大会が開催されて——
—
本当に、何が起こるかわからないのが人生だなと思った。
—
それまでの人生で、
自分の選択が「正しかった」なんて思えたこと、1度もなかった。
でもこのときだけは、
少しだけ、自分の決断に自信が持てた。
そして、静かに明日を待った
初めての大会なのに、
不思議と、緊張感はなかった。
—
たぶん、「今の自分にできることは全部やった」って、
胸を張って言える感覚があったから。
その自信が、僕を冷静にさせてたんだと思う。
—
明日、その努力がどう評価されるか。
—
初めて、自分の人生に「期待してみよう」って思えた夜だった。

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