第七章|雨の中、僕が歩き続けた“たった一つ”の理由
大会まで、残り1ヶ月。
これまで僕の記憶をベースに、嘘偽りなく書いてきたけど、
正直、この「最後の1ヶ月」だけ、記憶があまりない。
15年以上も前のことだから…そう思えば仕方ないのかもしれない。
でも、それ以前のことは鮮明に思い出せるのに、この部分だけ思い出せない。
自分でも、違和感があった。
ただ――理由は、なんとなくわかる。
**「キツすぎた」**笑
たぶん、大会までのラストスパートが、想像を絶するくらいキツくて、
僕の脳がトラウマとして“記憶を削除”したんじゃないかって、今は思う。笑
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初めての減量で、何kg減らしたと思う?
「−24kg」
4ヶ月で−24kg。
なかなかすごいでしょ?
でも、ここまで落とさないと、ステージに立てるコンディションにならなかった。
今ならもっと上手くできたかもしれないけど、当時はただ、がむしゃらだった。
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学校の皆も、びっくりしていたと思う。
大会が終わってから聞いた話だけど、
「國井がどんどん痩せて、元気もなくなって、黒くなっていく…」
高校生がボディビルの大会に出るなんて前例もなかったし、
「なんかの病気なんじゃないか」って、心配されていたらしい。笑
担任の先生にも。笑
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さて、減量もいよいよ最終段階。
当時の1日のスケジュールは、こんな感じだった(記憶ベース)。
減量メニュー
朝:目玉焼き3個+納豆1パック+ご飯200g
→ 毎日の楽しみ間食:プロテイン50g
→ 友達がシェイクまでしてくれるようになった昼:鶏肉200g+ブロッコリー
→ ご、ご飯が〜間食:プロテイン50g+おにぎり1個
→ トレーニング前はちゃんと食べますトレ後:プロテイン50g
→ ご褒美の一杯夜:鶏肉200g+ブロッコリー
→ 相変わらず少なっ!就寝前:プロテイン50g
→ 明日も頑張るか…
炭水化物の摂取は、朝とトレ前だけ。
そりゃあ、エネルギーもなくなるわけで。
歩く時の一歩が、本当に重い。
トレーニングはもちろん、学校生活もキツくなってきた。
授業? 全然、頭に入ってこない。(先生ごめん!)
体育の授業ですら動かず、体力温存。
放課後になると“無”の状態でジムへ。
そこから、その日のメニューを淡々とこなす。
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そしてここで、**「有酸素運動」**が追加された。
これまでは夜、トレ後に1時間のトレッドミルだったけど、
朝一にも1時間のウォーキング(家の近所を歩く)が追加。
なぜ朝なのか?
■ 脂肪が燃えやすい
起床直後の空腹時は糖質が枯渇気味。
→ 体脂肪がエネルギー源として使われやすくなる。
■ 1日の代謝が上がる
朝に体を動かすと、交感神経が活性化。
→ 日中の総消費カロリーが増える。
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実は僕、めちゃくちゃ朝が弱い。
でもこの時期だけは、目覚ましなしで5時に起きられた。
というより、寝れなかった。
なぜ、寝れなくなるのか?
■ 交感神経の過剰な働き
減量末期の体は「飢餓状態」。
→ 交感神経がフル稼働し、布団に入っても頭は冴えっぱなし。
■ 低血糖による覚醒
炭水化物制限により、血糖値が下がりすぎて夜中に目が覚める。
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夜は寝つけない、朝は早く目覚める――そんな毎日。
でも、身体がどんな状態でも、
僕を引き上げてくれたのは、**「絶対にやり切る」**っていう気持ちだった。
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ポージングも最初はかなり苦戦したけど、
しっかり脚のコントロールもできるようになってきて、
身体のコンディションも、なんとか中村さん・氏家さんのOKが出た。
今思えば、**全然OKじゃない。**笑
もっともっと絞れるはずだし、ポージングも上手くなれるはずだけど、
1年目でここまでできれば上出来ってことだったのかな。
ずっと見守ってくれていた二人の優しさだったのかもしれない。
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今は、SNSやYouTubeで選手の情報が簡単に手に入る。
でも、当時は違った。
大会の2〜3週間前に、公式HPで
名前・年齢・身長・体重・学校名が載るだけ。
検索しても、もちろん出てこない。
今も昔も、**「自分との戦い」**って意味では変わらない。
でも、あの時代は、もっと孤独だった。
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ある朝、土砂降りだった。
傘をさしても濡れるくらい、風も強い。
「今日はさすがに歩かなくていいよな」
普通に考えたら、その方がいい。
1日くらいやらなくても、大して変わらない。
でも、僕は思った。
「もし負けた時、今日サボったことを後悔する気がする」
だから、びしょ濡れになりながら歩いた。
表彰台に立つ自分を、頭の中でイメージしながら。
それを“現実”にすることが、僕の原動力だった。
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自分がキツいと思ってても、
見えない誰かは、もっとキツイことしてるかもしれない。
ラストスパートは、そんな
「見えない相手」との戦いだった。
⸻
そして――
ついに、出場選手が発表された。
全国から16名の高校生。
名簿を見たとき、少しだけ緊張した。
ダンベルを買って、家でがむしゃらにやっていた頃には、想像もできなかった。
自分が、ステージに立つなんて。
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全ては、この日のため。
居場所がなかった僕が、「高校日本一」になる――!

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