第三章|放課後、ゴールドジムにて
「……ボディビル、やってみない?」
そのひと言を、僕は今でも忘れない。
高校1年の終わりごろ。
ただひたすら、目の前のトレーニングに向き合っていた僕に、
突然かけられた“人生を変える言葉”。
それは、自分でも気づかなかった“可能性”の芽を見つけてもらった瞬間だった。
誰かに認められること。
自分を信じてみること。
これは、僕が**「高校日本一」になるまでの、始まりの物語。**
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4月。高校生活がスタートした。
新しい環境に慣れるために、みんながバタバタしている中――
僕はというと、ジムに慣れるのに忙しかった。
夢にまで見たゴールドジムでトレーニングできる毎日が、ただただ嬉しかった。
雑誌や映像でしか見たことのなかったマシンを、実際に自分が使ってトレーニングしている。
それだけで感動ものだった。
そして何より、
高校生でここまで本格的にトレーニングしている人なんて、他にいないだろうという自信があった。
誰かと競っているわけじゃない。
でもその自信が、自然と「自分」という存在を高校の中でも際立たせてくれていた。
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当時のゴールドジム仙台は、ダルマ薬局というドラッグストアがフランチャイズ経営していた。
スタッフの方も、会員の方も、とてもアットホームで、
僕が制服のまま毎日通っていることもあって、すぐに顔馴染みになった。
制服姿で通っているのは、やっぱりかなり目立っていた(笑)
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高校生活も半年が経つころには、
少しずつ慣れてきて、友達もできて、楽しく過ごしていた。
“筋肉キャラ”もすっかり定着していた。
2時間目の休み時間にプロテインを飲むのが日課だった。
寝ていると、友達が「國井!プロテインの時間だぞ!」って起こしてくれるようになっていた(笑)
僕が通っていた高校は、宮城県の中でもスポーツが強い学校だった。
周りの友達も、それぞれの競技でインターハイや全国大会を目指していて、いい刺激をもらっていた。
でも、僕は違った。
ただ自己満足でトレーニングしているだけ。
ただ、普通の高校生より筋肉があるだけ。
世の中に何か「結果」を示しているわけじゃなかった。
だからこそ、どこかで物足りなさも感じていた。
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そんな、ある日のことだった。
いつものように放課後にジムへ行くと、受付でスタッフの方に声をかけられた。
「國井くん、絶対に素質があるよ。
……ボディビル、やってみない?」
それが、僕の師匠――
中村静香さんとの出会いだった。
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中村さんに声をかけられたのは、高校1年生の終わりごろだったと思う。
それまでは、すれ違いざまに挨拶を交わす程度だったけど、
いつも笑顔で、スタイルも良くて―― 「いかにもトレーナーさん」という印象だった。
でも実は、
オールジャパン・ミスフィットネスを3連覇した本物のトップ選手で、
“フィットネスの女王”と呼ばれるほどの人だった。
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「……ボディビル、やってみない?」
そう言われたとき、正直、戸惑った。
ボディビルという競技があるのは知っていたし、
当時の僕なりに真剣にトレーニングに向き合ってはいたけれど、
“自分がその舞台に立てるのか”という疑問はあった。
不安というより、ただの現実的な感覚だったと思う。
でも――
「國井くん、絶対に素質があるよ」
中村さんのその言葉は、僕の心の奥にまっすぐ刺さった。
なぜなら、
それは生まれて初めて誰かに“可能性がある”と言ってもらえたから。
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だからこそ、信じたかった。
信じた先に、何かがあるなら――
もっと、遠くに行ける気がした。
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「はい!やってみたいです!」
ここからだ。
高校日本一への道が始まったのは。

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