短編 | 丸い球
目の前に丸い球がある。サッカーボールより大きくて、バスケットボールより小さい。触るとぶよぶよして、少し湿っている。目を凝らすとかなり細かく模様のようなものが見える。
気持ちわるいと思わなくもないけど、それよりも好奇心が勝って家に持って帰えることにした。しばらく観察していると、初め見た模様とは違う模様になっているように感じる。動いてるのか?おもしろい。
台所に行き、熱してみる。少し温もったように感じる。次は風呂場に行き、シャワーを浴びせてみた。膨らんだような気がする。
「...踏んでみるか」
球に足の裏をつけ、体重をかけて行く。少し変形したが、すぐ元に戻った。靴を履き、外に出て、思いっきり踏んでみた。だめだ、割れない。屋上に上がる。下はコンクリートだ。ここから落としたら割れるだろう。ふと、この球は誰かの大切なものかもしれないと頭に浮かんだ。
「ま、でも今は俺のだし好きにしていいか」
球から手を離す。
パリーン
予想よりあっけなく球は砕けた。
階段を降り、割れた球を見にいくと、水と石とが周りに散らばっていた。なんだ、何か珍しいものでも出てくるのかと思ってたがそんなものか。模様ももう見えない。微かに悲鳴のような声を聞いたが気のせいだろう。これなら片付けも不要だし、家に帰るか。
...最近は異常気象だ。世界中で温暖化が観測され、地球全体の気温が少なくても5℃は上がったらしい。今日は大雨である。研究者によると、いま降っているこの雨はおかしいらしい。この雨の総量をどう計算しても今まで観測された地球全体の水の量よりも多く、宇宙から雨が降ってると考えるしか説明がつかないとのことだ。何を言っているのだろうか。
やっと雨が止み、晴れ間が見えてきた。ふと空を見上げると、黒い影が迫ってきていた。どことなく足の裏を想起させる影だ。なんだか少し揺れた気がする。
-fin.-
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