ギターケーブルについてよく聞かれる話
ちょりっす。
永久不変の優しさに包まれていたい、いのくまです。
このワードでピピッときた方は親友になれます。
自分はアーティスト向けにギターケーブル製作のお願いを受けていたのですが、会話の中で中でよく聞かれることが多い内容がいくつかありましたので、ここで記事にまとめます。
もし、シールドを変えたいと思ってらっしゃる方はご参考にどうぞ。
そもそもギターケーブルを構成する部品は?
ギターケーブルの構成要素は大きく3つです。
これは超簡単で
シールドケーブル
プラグ
はんだ
当たり前ですが、これだけです。
まずは、これらの構成要素を分解して考察してみましょう。
シールドケーブル
一般的には芯線とその周囲に絶縁体があり、さらにシールド層が被っている構造の同軸ケーブルが一般的です。
一部では2芯や4芯のマイクケーブルを用いる場合もあります。
代表的な同軸シールドケーブルとしては
Mogami 2524
Belden 9395
CANARE GS4
OYAIDE G-SPOT
などがあります。
一方で多芯では
Belden 2524
OYAIDE 222G
MOGAMI 2534
等が用いられますが、これらはマイクケーブル用途のものをギターに転用している側面があります。
ではさらに細かくそれらを考えてみましょう。
芯線の構造
芯線に作用する要素は大きく二つあります。
一つは断面積、もう一つは導体の表面積とその処理です。
導体の断面はずばり抵抗値に作用します。
言わずもがな、抵抗値が低いほどに原音伝達率は高くなります。
そして、シールドを長くした際の減衰を回避できます。
意外にも導体の断面積でいうと優秀なのはMOGAMIとBelden、CANAREです。
一方既製品化して売っている多くのブランドものケーブルよりも断面積は圧倒的に太いです。
表面処理
次に導体の表面積です。
これは後述するめっき処理も関係するのですが、表面積が多いほどに高周波特性はよくなります。
理由は表皮効果にあり、高い周波数の電流ほど導体表面を通る傾向にあるためです。
つまり、同じ銅であった場合、細い線を本数をたくさん束ねて太くしている撚り線構造が最もハイファイになりえるということです。
ある有名メーカーでは芯線はMOGAMIやBeldenほど太くはないものの、細い線をたくさん束ねていたメーカーがありました。
これは表皮効果の改善を狙ったアプローチといえます。
最後に表面処理、具体的にはめっきです。
銅線は酸化(錆びる)ほどに抵抗値が上昇します。
つまり、表皮効果として表面が酸化するほどその抵抗値が上がると言えます。
逆に最表面を銅よりも抵抗値の低い、そして酸化に強い金属でメッキした場合、長期的な酸化によるリスクは少なく、そして高周波特性が良くなります。
Belden 9395やSOMMER The Spirit XXLなど表面をめっき処理した導体を使ったケーブルと、MOGAMIの2524など非メッキのケーブルでギターの生音シグナルを比較すると僅かに「チリチリ」「キラキラ」とした成分に差が生まれます。
一方でMOGAMIなどの非メッキ線はそれはそれで、自分は好きなのですが、製作時から徐々に酸化していくことを考えると、外気に触れるプラグとの接合点の一部ではんだメッキされていない個所に関してはフラックスの塗布など対策のひと手間があるとよいのでは?と考えています。
私は現在のレシピはSETTEN No1.を少しだけ塗布しています。
構造的な音質変化
最後に構造的な音質変化があります。
難しいことはおそらく多くの人を混乱させるリスクがあるのでザックリ解説しますが・・・
等間隔の導体と導体はコンデンサを形成すると物理で習った方は少なくないと思います。
芯線とシールド線ではまさにこの関係が発生します。
メーカーがきちんとデータを公開しているケーブルでは「静電容量」という数値が記されています。
これは具体的にはコンデンサ成分になります。
つまりどう作用するか?でいうとずばりハイ落ちです。
静電容量の値の大きさが大きいほどにケーブルを長くした際のハイ落ち成分が増えます。
逆算すると以上のパラメーターからある程度サウンドは狙えることになります。
プラグ
プラグに関しては、ミュート機能が付いたプラグやソルダーレスなど様々なプラグがあります。
プラグに対して、どこに重きを置くか・・・が需要かなと自分は考えていて、自分は音質以上に
耐久性
信頼性
篏合
が重視されるべきだと考えています。
よく用いられるプラグメーカーとしては
SwitchCraft
Neutrik
Amphenol
CANARE
OYAIDE
HKM(日の出光機製作所:廃業)
が選択肢として著名でしょうか。
音質の変化以上に構造の強固さなど、安全の為の部品と捉えることを私は重視しています。
定番といえばSwitchCraftでしょう、バランスよく堅牢でシンプルな構造は目立つこともなく、使いやすく、そしてジャンボサイズやショートサイズなどの展開の多さも魅力です。
こちらで多い問題としてはTip端子が中折れしてすっぽ抜けてしまう故障が散見されます。
とはいえ、そうそう易々と壊れるものでもないですが・・・
組み込み構造の堅牢さという意味ではNeutrikは通信機器用のプラグを手掛け、リヒテンシュタインという小国家でありながら世界に名が知られるだけのものはあります。
使い続けるとグランドのパイプが空転してしまったり、プラグ部分がほかの部分と比べて曲がってしまいやすかったりと、シェルの剛性のわりに押し出し成型箇所がわずかに弱く感じられる部分があります。
一方で多機能で、作りやすく使いやすく、色分けなどもユーザーフレンドリーであり、XLRコネクタでは覇権を録っているだけあるなと感じさせるものがあります。
更にもう一つの定番としては国産のCANAREです。
スプリングによるケーブルの根元折れストレスの対策が国産らしいプラグです。
シンプルな構造に対してどっしりとした重量感があり、こちらも長く親しまれているだけのことはああると感じさせるプラグです。
最後に、HKMについて触れておきます。
惜しまれつつも廃業してしまった日の出光機製作所のプラグです。
削りだしソリッドボディで圧倒的な耐久性と低抵抗値を誇っていました。
現在その構造はOYAIDEが引き継いでいますが、廃業する前にもっと普及してほしかったメーカーでした。
但し、欠点としてソリッドボディ故に熱容量の高さからはんだ付け性が悪いという問題がありました。
グランドはきちんとフラックスを塗布して加温、呼び半田しておく必要があります。
最後に一番大事な選び方ですが、自分は「迷ったら自分のギターにさして一番食いつきがよく抜けずらい方」が正解としてチョイスしています。
ジャックとプラグの篏合は以外にも相性があるので効いてくる部分でもあります。
はんだ
はんだについては大きく鉛フリーと共晶はんだ(なまり入り)の二種類があり、さらに鉛フリーでは様々な組成のものが存在します。
そして、同時に触れておきたいのはフラックスの質です。
はんだの濡れ性に大きく影響しますし、はじけたフラックスはLEDの樹脂外装を侵してしまうものも存在しており扱いが難しいです。
ちなみに鉛の有無ばかりではんだは語られがちで、ギターではその濡れ性の高さによる作りやすさの影響からか鉛入りがもてはやされますが、鉛フリーはんだには幾つかの種類があり、それによる音質比較は誰かやらないのかな?と常々思っていたりします。
ちなみに自分ははんだの質は重視していません。
どちらかというとはんだごての温度管理と適切な接点の確保が行われているかが大切かなと感じています。
ただし、その中でもちろん濡れ性が低いものより高いものの方が作業面でメリットがあるので、結果的にケーブルの樹脂部分へのストレスなどを考えると質の高いケーブルが作れる気はしています。
ちなみに私のチョイス
私のシールドのチョイスはMOGAMI2524にHKMのプラグのデッドストックを基本としています。
はんだで音が変わるとはそこまで考えていないので基本的には適当な鉛フリーはんだを使っています。
ケスターのどれがいい・・・みたいな比較は行っていません。
しいて言うなら製造で使っていることの多かった千住金属が一番身近に感じて好きです。
ちなみに今のところこの構造で熱容量の問題に起因するはんだ不良が起こりやすい以外の問題は感じていません。
むしろ、強固過ぎて重く感じる程度です。
MOGAMIをチョイスする理由は北米のCAEがMOGAMIを使用しているから、この一点に尽きます。
相談を受ければBeldenなども提案しますが、コストパフォーマンスに対する品質と安定性は最も高いと感じています。
取り留めなく終わる記事ですが、疑問点はコメント欄へどうぞ。
おそらくケーブルをレビューでしかとらえていない方が大多数かと思いますので、この辺りはインプットしててほしいなと思った今日この頃でした。
はんだに関する参考
自作派の人はこちらの記事をどうぞ。
中身を濁す(原理現象原則の話しができないのではぐらかす)オカルトに騙されんなよ。
