映画「スティング」 THE STING
はじめてスティングを観たのは、高校の映画鑑賞行事で、だった。当時でも古い映画で、何も期待していなかった。ところが、その緻密に計算されつくしたストーリー展開で、観客をもチートする痛快な大どんでん返し、ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードが素敵すぎて、その日をもって、私は洋画にはまりこんだ。名画座で、VHSビデオの廉価版で、これまでこの作品を何度観たかわからない。近年は、さまざまな動画配信サービスでスティングを配信しており、いつでも視聴できる安心感から、さすがにスティングの鑑賞頻度は低くなっていた。ところが最近、「午前10時の映画祭」で、この作品が取り上げられた。上映館の少なさに加え、午前中の上映がメインなので、行けないな〜と思っていたら、TOHOシネマズシャンテで、18時半からの回があった!私は、前の人の頭が邪魔、トレイホルダーがないなど、ネガティブ要素が多すぎるシャンテが嫌いだが、デジタル化されたスティングを、大きなスクリーンで見られるのならと妥協した。最後列の通路側に座ったが、案の定、前の人の頭がスクリーン下部にはみ出て、イラッとした。この映画館、観客に、なるべく深く腰掛けるよう啓蒙してほしい。だが、そんな不満をはるかに凌ぐ面白さで、夜間に午前10時の映画祭をやってくれてありがとう。
さて、これは詐欺師たちが、仲間の復讐のために、ギャングのボスに、壮大な詐欺を仕掛けるストーリーだ。
舞台となった1930年代のイリノイ州ジョリエットからシカゴには、ゴミゴミして、いかにも犯罪の温床といった雰囲気が漂っている。いわゆるアメリカの暗黒時代だ。
でも、1930年代の風俗、ファッション、鉄道駅や長距離列車内の様子なんかも、興味深い。とりわけ、当時のクラシックなファッションに身を包む男たちは、みんな伊達男に見える。
そして、とにかく素晴らしい俳優陣。
なんと言っても、ヘンリー・ゴンドーフを演じるポール・ニューマンは、イケおじの決定版で、チャーミングという言葉がぴったり。
ジョニー・フッカーを演じるロバート・レッドフォードは、この時、すでに36-7だったはずだが、若さと軽薄さと不思議な純粋さを実にうまく表現している。
とにかく、この主役二人の青い瞳は最強である。
特に、ロバート・レッドフォードという人を、初めてスクリーンで見た時には、アメリカには、なんてかっこいい人がいるんだろうと思った。いかにもザ・アメリカ人なスタイル、青い瞳、金髪と、日本人が思い浮かべる、欧米人の素敵要素を全て兼ね備えていた。ブラピがレッドフォードの若い頃に似ているとよく言われるが、ブラピの方が、荒削りに私には見える。
続いて、この映画における敵キャラのドイル・ロネガン役のロバート・ショウ。ロネガンは、表向きは銀行家、実態は、冷酷なマフィアのボスなのだが、いい具合にカモになってくれるからか、極悪なのに憎めない不思議なキャラだ。
主役3人だけではない。
アイリーン・ブレナンが演じるゴンドーフの情婦ビリー。この、決して美女とは言えない、ビリーネキの、機転もきくし、何事にも動じない姐御っぷりがかっこ良すぎる。この映画における嫌われ者、チャールズ・ダーニング演じる腐り切ったシュナイダー刑事もいい味出してくるが、ビリーvsシュナイダーの攻防戦にはクスっと笑えるものがある。
また、脇を固めるシカゴ中の詐欺師のオジサマたちが、世をしのぶ仮の姿で一般人のように暮らしていても、ゴンドーフが姿を見せれば、ツーカーな感じで、取るものもとりあえず、喜んで集まってくる、人情家たちなのがよい。おじさんたちには、それぞれに得意な詐欺ジャンルがあり、存分に敵キャラたちをカモってくれる。
詐欺、窃盗、ギャング。扱っている題材は犯罪そのもの。マフィアの親分である敵も、詐欺師集団である味方も、双方犯罪者。にもかかわらず、弱者が強きをくじく爽快さ。
スティングのテーマ曲はいつ聞いても心地よいし、役者もストーリー展開もオチもパーフェクトなのだ。初見では、カモられる各登場人物同様、私も場面場面でだまされたものだが、そのカラクリが全てわかっている今となっても、気がついていなかった伏線回収ができたり、まだまだ楽しめる。公開から50年以上経っても色褪せない、本当によくできたエンターテイメント作品である。それに、アナログな時代ならではの、温かみが全体にあるのも良い。本当に、1973年最強、20世紀屈指の娯楽映画だ。
