エアギター、ダンスだけ、コント乱入……それって「演奏権」?「上演権」?
昨日は台風一過でした。
意外に進路の関係で期待が外れたくらいの普通の雨でしたね。
頭は痛かったけど。
上演権・演奏権の話が出てきたので、その話でふと思い出したことがあります。
かなり昔にテレビかなんかで見た衝撃的な話です。
「僕たち、誰も楽器ひいてませんからね。ipodの再生ボタン押すだけです。口パクの時もありました」
え? 歌手なのに?
そういうの、エアーバンドっていうらしいです。
「弾いていないのに演奏」って、どういうこと?
著作権法には「演奏権」という権利があります。
ざっくり言うと、「音楽を公の場で披露する権利」です。
前述のバンドは、バンドを名乗りながら誰も楽器を弾いていない(という設定の)、いわゆるエアーバンドです。
では、彼らのライブは「演奏」と呼んでいいのでしょうか。
実は、著作権法(第2条第7項)では「演奏」の定義の中に、楽器を弾くことだけでなく、「歌うこと(歌唱)」や「音源を再生すること」もちゃんと含まれています。
最悪口パクでも「音源の再生ボタンを押した」なら、それは「演奏行為」になるってことなんですね……。
ボーカルが生歌を歌っている、これが法律上の「演奏」です。
バックでiPodなどの音源を再生している、これも法律上の「演奏」です。
よしんば生歌でなくても、歌声が音源から流れていれば、これも法律上の「演奏」になります。
ということは、ボーカル以外が台風の影響で羽田で足止めされて沖縄ライブがワンマンライブになろうとも、メンバーがステージ上でスイカを食べていようとも、どんな奇行に走っていようとも、「スピーカーから歌を含む音源が流れている」という事実そのものが「演奏権(第22条)」のコントロール下にあるわけです。
法律ってドライっていうか、意外とシンプルっちゃあ、そう。
じゃあ「上演権」はどこに登場するの?
「演奏権」と似た響きの「上演権」という言葉もあります。
ざっくり言うと、「お芝居や劇を公の場で見せる権利」です。
演奏権は音楽を「聴かせる」ことがメインで、上演権は芝居やドラマを「見せる(演じる)」ことがメインになります。
この違いを一番わかりやすく説明してくれるのが、某ダンスユニットと某歌劇団の比較です。
某ダンスユニットのライブは、どれほど激しく美しいダンスが繰り広げられていても、ステージの根底にあるのは「音楽を聴かせること」です。
生歌と大音量の音源が流れている時点で、法律上は「演奏権」の扱いになります。
一方、某歌劇団はどうでしょう。
もちろん素晴らしい生オーケストラや歌がありますが、お客さんが観に行く最大の目的は「物語(お芝居やレビュー)」を観ることですよね。セリフや身振り手振り、物語の進行が主役のステージは「上演権」が適用されます。
「耳を主役にしているか(演奏権)」「目を主役にしているか(上演権)」と覚えると、すっと腑に落ちます。
ちなみに歌劇団は、実際は上演権と演奏権の両方を処理しています。
言わば法律的な「権利の幕の内弁当」状態であります。
総合芸術って、大変。
ナイン○ィナインの岡○さんがEXILEに乱入したら、どっち?
さらに面白いのが、以前、○村さんがEX○LEのライブに乱入してともに踊るという企画です。あれはどうなるのでしょうか。
番組の1企画ですから岡○さんは芸人としてあるわけで、彼の漫才師としての芸の一環ならば上演権となるんじゃないかな、と思ったりしたんですよね。
結論から言うと、あの乱入も全体としては「演奏権」のコントロール下にあるらしいです。
「○村さんは歌ってもいないし、踊っていただけなのに?」と思いますよね。
でも、あの企画はE○ILEの音楽コンサートという空間の中で行われたものです。その場を支配しているのは、あくまで「音楽を聴かせること」を目的としたEXIL○の音源と生歌です。
岡村さんがどれだけキレッキレのダンスで会場を沸かせても、イベント全体のベースが「音楽コンサート」である以上、法律の分類は「演奏権」の枠から外れないらしいです。
法律と常識の認識のズレ
「踊っているだけでも演奏権」「楽器を弾かないでも演奏権」というのは、最初は「おや?」となりますよね。金出したコンサートでやられたらキレるレベルですが。
でも、法律の定義を一度知ると、「あ、音楽を届けることが目的なら、形がどうであれ演奏権なんだな」とすんなり理解できます。
心情的に納得できるかどうかは別ですが、まあ、そういうことなのです。
エアーバンドという前代未聞のスタイルであっても、法律の網の目の中ではきっちり「演奏」の枠に収まってシステムが回っている。知れば知るほど、法律ってなかなか粋なものだなと思います。
まあどっちにしろ、大体はまるっとひとまとめで契約書には書かれるみたいですけどね。
※本記事は知的財産検定3級の学習記録をもとに、著作権法の条文と各社の調査報告書を参照してまとめたものです。
法的な判断・アドバイスを提供するものではありません。
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