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まとめて勉強するより、分けて勉強する方が頭に入った話

浪人時代、模試の成績がなかなか伸びなかったころ、自分の勉強スタイルに問題があると薄々感じていた。

やり方はこうだった。週末にまとめて5〜6時間、苦手な科目をひたすらやる。「今日は数学DAY」「今週末は英文法を全部やりきる」という感じで、特定の科目に集中した時間を作ることが「本気の勉強」だと思っていた。やっている間は確かに充実感があった。でも翌週の模試では、先週末にあれだけやった内容が思ったほど取れない。

「なぜ集中してやったのに入らないのか」——その答えにたどり着いたのは、医学部に入ってから記憶と学習の仕組みを学んだときだった。

「まとめてやる」は記憶の仕組みに反している

集中して1つの科目を長時間やる学習スタイルを「集中学習(マスド・プラクティス)」と呼ぶ。対して、同じ内容を時間を分けて繰り返す方法を「分散学習(スペーシング)」という。

研究で繰り返し示されているのは、同じ学習時間でも分散学習の方が長期的な記憶保持率が高いという事実だ。

なぜかというと、脳の記憶定着の仕組みと関係している。何かを学んだとき、その情報はまず「海馬」という短期的な保管庫に入る。睡眠を挟むたびに、その情報が長期記憶の領域へ少しずつ転送される。つまり睡眠を挟まずに同じ内容を繰り返しても、1回の転送チャンスしか生まれない

週末に6時間まとめてやるより、月曜・水曜・金曜に2時間ずつ分けた方が、睡眠を3回挟めて定着のチャンスが増える。それだけじゃなく、「一度忘れかけたタイミングで思い出そうとする」というプロセス自体が、記憶を強化する。

エビングハウスの忘却曲線で言えば、記憶は学習後すぐに急速に落ちていく。その「落ちたタイミング」で復習を入れると、次の落下が緩やかになる。この繰り返しが、長期的な定着をつくる。

浪人時代、自分がやっていた「まとめ勉強」の何が悪かったか

今振り返ると、週末に集中してやるスタイルには複数の問題があった。

まず、「今日やったこと」を翌日確認する習慣がなかった。週末に詰め込んで、翌週末まで何もしない。その間に大半が抜けていく。

次に、「達成感」と「定着」を混同していた。6時間勉強して疲れた感覚が「やった証拠」に見えていたが、疲労と記憶定着は別物だ。長時間やった後の充実感は本物でも、記憶が残るかどうかとは無関係だった。

そして、「まとめてやれる日」を待つことで、平日が手薄になった。週3〜4日分のスキマ時間を使わずに、週末だけに頼っていた。分散学習から見ると、これは最悪の復習設計だった。

「分散」を実際にどう設計するか

分散学習の効果はわかっても、「じゃあどうやって分けるか」が難しい。

自分が試行錯誤してたどり着いたのは、「今日新しく覚えた内容を、翌日・3日後・7日後に確認する」という3ステップの復習サイクルだ。

たとえば月曜に薬の作用機序を5つ覚えたとする。火曜の朝に5分だけ、「あの5つ、何だっけ」と思い出す。木曜にもう一度確認する。翌週月曜にもう一度。これを3回繰り返すと、記憶の定着度が段違いに上がる。

問題は、「何を・いつ復習すればいいか」を自分で管理しようとすると面倒になってすぐ崩れることだ。特に覚える量が増えてくると、「昨日何を覚えたっけ」からして危うくなる。

このタイミング管理を自動でやってくれるのが、スペーセドリピティション(間隔反復)を使った暗記アプリだ。いくつか試して、最終的に自分で作ったアプリに落ち着いた。

カードに覚えたい内容を登録すると、忘却曲線に基づいたタイミングで自動的に復習に出てくる。「いつ復習するか」を自分で考えなくていい分、「覚えること」に集中できる。iPhoneで通学中にも使えるし、iPadで作ったカードがiCloudで同期されるので、端末を選ばずに続けられる。

分散学習が機能しやすい科目・しにくい科目

分散学習は「繰り返し引き出す価値がある知識」に向いている。逆に、一度理解したら終わりのものや、手順を踏む系の問題には少し向きが違う。

向いている: 単語・語句の暗記、年号・人名・定義のような事実知識、薬の作用機序や疾患の特徴、英単語・医学用語など

向きが違う: 数学の問題を解くプロセス、プログラミングのロジック構築、文章読解の読み取り力

医学部の場合、圧倒的に前者が多い。薬理学・生化学・解剖学・病理学——どれも「この疾患の定義は?」「この薬の作用点は?」という事実ベースの知識が山ほどある。分散学習がこれほど効く勉強対象が多い学部も、そうそうないと思っている。

浪人時代の英語・歴史・生物も同様だ。単語や文法事項、歴史の用語は全て「繰り返し引き出して定着させる」類の知識だった。あのころ分散学習の概念を知っていたら、週末のまとめ勉強ではなく毎日の短時間復習に切り替えていたと思う。

「忘れてからでは遅い」というよくある誤解

分散学習の話をすると「忘れる前に復習すれば効率いいのでは?」という疑問が出ることがある。実はこれは逆で、「少し忘れかけてから思い出す」こと自体が記憶を強化する

「あれ、なんだっけ」と引き出そうとする努力のプロセスが、記憶の定着を促進する。スラスラ思い出せる段階で繰り返すより、少し思い出しにくくなったタイミングで「引き出す」方が脳への定着効果が高い。

これを「検索練習効果」または「テスト効果」という。試験形式で繰り返すことが、ただ読み返すよりはるかに効果的な理由もここにある。

だから理想の分散学習は「忘れる直前に思い出す」ではなく「少し忘れかけたくらいで思い出す」だ。スペーセドリピティション方式のアプリが「次の復習タイミング」を自動でずらしていくのは、この原理を使っている。

大事なのは「量より頻度」という発想の転換

分散学習の話をすると「じゃあ毎日少しずつやればいい」という理解になりがちだが、それだけでも足りない。大事なのは「頻度」と「タイミング」の両方だ。

毎日やっていても、常に新しい内容だけインプットし続けて復習を入れないのは分散学習ではない。「覚えたことを適切なタイミングで引き出す」という動作がセットでないと、ただ量をこなしているだけになる。

浪人時代の自分に一つだけアドバイスできるとしたら、「週末のまとめ勉強より、毎日15分の復習サイクルの方が確実に記憶に残る」と言いたい。それを実感するまでに、かなり時間がかかったけれど。

今では分散学習の考え方が完全に身についていて、医学部の膨大な暗記にも何とか対応できている。「まとめてやる」から「分けてやる」へのシフト、これが自分の勉強を変えた最大の転換点だった。

暗記の量が多くて困っている方はぜひ試してみてください。


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