誘導話法の正体と使いこなし
先日ネット動画で、「FBIが捜査で誘導話法を利用している」ことを知りました。
「誘導話法?誘導尋問のことじゃないの?」と思い、誘導話法とはどんな技法なのか調べてみることにしました。
<誘導話法とは>
誘導話法とは、
相手の思考や感情、判断の流れを、自分の意思で決めたと思わせながら、あらかじめ自分が用意した結論に導く、心理誘導のための話し方です。
命令や説得とは異なり、相手が心理的に抵抗しにくいという特徴があります。
<誘導尋問との違い>
先ほど出た誘導尋問とはどう違うのでしょう。
どちらも相手をある方向に導くという点では似ていますが、
誘導話法が相手の感情や判断の流れを自然に導いており、答えを指定しているわけではありません。
これに対し誘導尋問はこちらが用意した欲しい答えを直接相手に言わせる技術です。
誘導話法は心理の流れを作るのに対し、
誘導尋問は答えを特定方向に寄せる技術と言えます。
このため誘導尋問は裁判では問題視されます。
このためFBIなどの捜査機関では誘導尋問ではなく誘導話法が用いられるのです。
<誘導話法の種類>
FBIの利用方法については後回しにして、一般的な誘導話法にはどのようなものがあるのでしょう。
〇 二者択一法(ダブルバインド)
「今日やりますか?」、「来週にしますか?」と、やる前提で聞く方法です。
選択肢を限定すると、人はその枠内で考えやすくなります。
〇 共感先回り型
「不安ですよね、最初はみんなそうです」と言うと、「この人は自分のことを理解してくれている」と感じやすくなり、信頼を得やすくなります。
〇 ミラーリング
相手の話し方やテンポに合わせることで、自分に似ているとして安心感を生みやすくなります。
〇 オウム返し
相手の言葉を同じように繰り返すことで、理解してくれていると感じ、心を開かせます。
「最近仕事がなかなか進まなくて」、「仕事が進まず悩んでいらっしゃるのですね」という具合です。
〇 イエスセット
「今日はいいお天気ですね」、「効率化って大事ですよね」などと、小さなイエスを積み重ねることで、本命の要求にもイエスと言いやすくする方法です。
〇 タグクエスチョン
語尾に「~ですよね」と、同意を求める言葉をつける方法です。「これは便利だと思いませんか?」を、「これは便利ですよね」というように、確認の形をとることで反論しにくくなります。
〇 前提提示
特定の事実がすでに決まったこととして会話に組み込むのです。
「もし導入されたら、どなたがメインで使われますか?」というように、導入するかどうかを飛び越えて、導入後の運用をイメージさせて心理的ハードルを下げるのです。
〇 否定暗示
「今の段階ではまだ決めないでくださいね」と言われると、逆にそれを意識してしまい、早く決めたくなります。
〇 権威利用型
人は全部自分で判断することを減らしたいので、専門家や有名人を使うと参考にしやすくなります。
〇 希少性誘導型
「限定品」、「今だけ」、「残りわずか」と言われると、「なくなるかもしれない」という損失回避心理から判断を急ぎやすくなります。
<FBIはどのように利用しているのか>

FBIが実践しているテクニックには次のようなものがあります。
〇 ラポール信頼関係形成
人は追い詰められるより、安心させた方がよく話します。
「北風と太陽」と同じですね。
「この人は敵ではない」、「自分のことを理解してくれている」と思わせるのです。
〇 オープンクエスチョン
イエスやノーで終わらず、説明させるような質問にします。
「怒ってたのか?」ではなく、「どんな気持ちだった?」と言って相手にしゃべらせるのです。
〇 沈黙の利用
相手が話し終わった後、敢えて沈黙するのです。
すると、その気まずさを埋めようとして、さらに追加で話し始めるのです。
嘘や隠し事がある時ほど、沈黙には耐えにくいのです。
〇 ベースライン観察
最初に雑談をして、相手の話の速さ、声のトーン、目線、瞬き、姿勢など普通の状態をよく観察しておき、特定の話題でそれらが急変するのかどうかを見ます。
急に早口になったり、視線が泳いだり、必要以上にしゃべりだしたり、逆に黙り込んだりという変化です。
〇 ミラーリング
先程も出たミラーリングですが、特に相手の最後の言葉を繰り返します。
「追い詰められて~」、「追い詰められた?」という具合です。
すると相手は自然に続きを話し出します。
〇 「ノー」と言わせる質問
人はイエスと言う時に、責任や罠を感じて警戒するといいます。
これに対しノーという時は、自分が主導権を握っているとリラックスします。
「今お話ししてもいいですか?」というと、相手は拘束されるかもしれないと警戒しますが、「今お話しするのは迷惑ですか?」というと、「いえ大丈夫です。」と答えやすく、自分の意志で会話を許可したと感じます。
〇 「That’s Right」と言わせる
「You’re Right」(あなたの言う通り)は、会話を終わらせたいときの決まり文句なので、相手が心の底から納得した時の「That’s Right」を引き出すのです。
<なぜよく効くのか>
人間の脳は、「早く判断したい」、「間違えたくない」、「孤立したくない」、「損したくない」などと思っているので、そこを突いて自然にその気にさせるので強力なのです。
また、自分が一度イエスと言うと、態度を矛盾させたくないという心理から、次もイエスと言いやすくなります。
自分で考えているようで、実は選択肢は絞り込まれているのです。
<誘導話法の使いこなし>

(実践テクニック)
「口先三寸」の怪しい人と思われることなく、誘導話法を使いこなすためには、
〇 信頼関係(ラポール)の形成が大事なので、まずは相手の話をしっかり聞いて、この人は見方だと思わせることです。
〇 ゴールを明確にすることです。
相手にどう動いてほしいかを事前にはっきり決めておくとブレずに済みます。
〇 相手のメリットを優先させることです。
〇 自信のある落ち着いた声のトーンで、相手に考える時間の「間」を空けることです。
〇 誘導話法を使いすぎず、自然な会話の流れを保つことです。
〇 人は長い説明が苦手なので、結論から言うこと。
(ビジネスシーンでの活用)
ビジネスシーンでもこの技術は活かせます。
〇 小さな合意を積み上げる、合意点積み上げ法
〇 選択肢を限定する二者択一法ダブルバインド
〇 一度相手の意見を受け止め、共感を示してから提案する、肯定法
〇 交渉の最初に示した価格や条件が基準になる心理効果を利用したアンカリング法
〇 最初に意図的に大きな要求をして相手に断らせ、その後に本命の小さな要求をする、ドアインザフェイスという手法。
一度断ったという罪悪感から、その後の小さい要求を受け入れやすくなります。
〇 松竹梅の法則は有名ですね。
3段階の選択肢を用意すると、人は中間のものを選ぶ傾向があるため、最も売りたいものを真ん中に設定するのです。
〇 新近効果といって、複数の提示をする場合、最後に紹介されたものが記憶に残りやすいので、「最後のこちらが最もおススメになります」と付け加えて提案するのです。
(その他の利用シーン)

その他様々な場面で利用されています。
営業セールス、接客、高級サービス、広告、CM、SNS、インフルエンサー、政治、宗教、カルト、恋愛、教育、面接、採用、ニュース、報道など、ごく普通に使われているのです。
<誘導話法のリスク>
この誘導話法は、詐欺やカルト教団の勧誘に利用される恐れがあり、危険な一面もあります。
● 考える時間を与えないで強く迫る。
● このままだと危険だといって不安を煽る。
● みんなやっているといって、思考停止させる。
● 断れない雰囲気を作る。
などです。
(使う時の注意点)
〇 自分が誘導されていることに気づかれた途端に、強烈な不快感を抱くため、信頼関係は崩壊してしまいます。
〇 強引に誘導した場合、あとで相手が冷静になって、「無理やり買わされた」と思われると、キャンセルやクレームにつながってしまいます。
<誘導話法を受けていると見抜くには>
自分が誘導話法を受けているかどうかを見極めるには、
〇 本当に自分の考えで決めているかどうか
〇 急かされていないか
〇 不安を利用されていないかどうか
〇 他の選択肢はどうなのか
を、よく考えてみると冷静になれます。
<他にはどんな話法があるのか>
誘導話法以外にも、実に様々な話法があります。その名前だけを紹介します。
● 傾聴話法
● ソクラテス話法
● PREP話法
● ストーリーテリング
● アサーティブ話法
● ディベート話法
● ラベリング話法
● サンドイッチ話法
● 雑談話法
● コールドリーディング
● リフレーミング
● ネゴシエーション話法
● ティーチング話法
● コーチング話法
などなど
<本当に話が上手い人は>
本当に話が上手い人というのは、話し続ける人ではありません。
「相手を見る」、「空気を読む」、「感情を動かす」、「話法を使いわける」ことが上手く、
何を話すかよりも、どのようにすれば相手に届かせることができるかをよく理解している人です。
ここでも、「相手の気持ちをよく考える」ということがいかに大事かがわかりますね。
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