正しい共感の仕方
会社で同僚から相談を持ちかけられたり、悩んでいる部下に声をかけて話を聞いたりする時、どのような態度で臨めばいいのでしょうか。
この人と働きたいと思ってもらえるようなコミュニケーション能力にはどのようなものがあるのでしょうか。
相手の感情を理解するためには、まず話を良く効くことが重要です。
それに共感し、その事実を確認して整理し、選択肢を見せ、決断を促し、行動に移すというような流れです。
この共感を正しく行わないと、共感疲労に陥ったり、逆に「この人は話をしても理解してくれない」といって反発を招いてしまいます。
正しく共感するにはどうすればいいかが今回のテーマです。
<正しい共感の仕方>
共感の基本は、「今そう感じているんですね」と、相手の感情をそのまま受け取ることです。
そして、「それはつらかったですね」と、その感情を言葉にして返します。
この時は話を注意深く聞き、途中で遮ったりせず、急かすようなこともせず、同意はしないで、修正もしないで、評価もせず、アドバイスもなしで、正論を言うこともしないで、ただ受け止めることです。
つまり、相手の気持ちを理解しようとする姿勢が大事なのです。
共感は、相手が理解されたと感じるようにする“技術”なのです。
「それは~でしたね」、これが共感の基本です。
相手が「わかってもらえた」と感じれば成功なのです。

定番の言葉を他にいくつか挙げておくと、
「それはしんどかったね」、
「大変だったね」、
「聞いてるだけで大変さが伝わってくるよ。」、
「悔しかったんだね」、
「そう思うのも無理ないよ」、
「何と言えばいいか分からないけど、話してくれてありがとう。」、
「分からないと不安になるよね」、
「最初からできる人はいません、ここでつまずく人が多いんですよ。」
何かアドバイスをするかどうかは、共感を終えた後、相手に聞いて「いい」と言ってからにすることです。
「もしよかったら、私の考えを言ってもいいですか?」、
「何か力になれることはある?」

<共感しなくてもいい時>
共感することが優しいということではありません。
逆に共感しないことが冷たいということでもないのです。
時には共感しない方がいいこともあります。例えば、
〇 相手が攻撃的な時。
この時に「そんなに怒っているんですね」と、共感してはいけません。
「そんな言い方では、話をするわけにはいきません」と、線引きします。
〇 相手が責任転嫁している時。
その行動は肯定してはいけません。
「それはつらいですね」ではなく、「つらい気持ちは分かりますが、ただ~は」と、同調しないようにします。
〇 相手がこちらを操作しようとしている時。
何度も同じ愚痴を言ったり、「でも」、「だって」と言って解決を嫌がったりする時は、「どうしたらいいかは、あなたが決めることです」と言って、共感を打ち切ります。
<共感のNGワード>
言ってはいけないNGワードをいくつか挙げてみます。
「でも、~すればよかったんじゃない?」、
「あなたのためを思って言うけど」、
「みんなそうだよ」、
「それは考えすぎだよ」、
「つまり、~が悪いということ」、
「私だったら気にしないけど」、
「それはかわいそうだね」、
「次から気を付けよう」、
「それくらい我慢したら?」、
「それくらいのことで泣くなよ」、
「気合でいけ」、
「仕方ありません」、
「なんでわからないの?」、
「前にも言ったよね」、
「仕事だから」、
「私も同じで~」
<NGワードを言ってしまったら>
これらのNGワードをついうっかり言ってしまっても、安心してください。リカバリーできます。
「今の言い方よくなかったね」と言ってズレを認め、改めて正しい共感を言い直すのです。
「そんなつもりじゃなかった」、
「誤解です」、
「でも、正論を言うと」
これらを言うと傷口をさらに広げてしまうので注意です。
こういうことは度々起こるので、これを立て直せる人が信頼される人になるのです。
完璧を求めるのではなく、修復力を鍛えるのです。
<共感と混同されやすいこと>
共感と一番間違われやすいのが同情です。
英語でも共感は“Empathy”、
同情は“Sympathy”と後半は同じになっています。
共感は相手と同じ穴の中に入って一緒にいる状態で、
同情は穴の上からのぞき込んで声をかけている状態です。
共感は上下を作りませんが、
同情は上から目線で「かわいそうにね」というようになります。
研究者ブレネー・ブラウンも、
「共感は『私も一緒にここにいるよ』と言うこと。
同情は『少なくとも私はここに居なくてよかった』と思うこと。」
と言っています。名言ですね。

他にも、同意は、「あなたの考えは正しい、私もそう思う」ということですが、共感は正しいも間違いも言いません。
「大丈夫だよ」とか、「頑張って」という励ましも共感にはありません。
いきなり解決しようと「こうすればいいんだよ」と急ぐことは共感にはありません。
<ビジネスシーンでの共感>
ビジネスシーンで使う代表的な共感としては、クレーム対応が挙げられます。
まず、クレームしてきた相手の話を聞いて、
「ご不快な思いをさせてしまったのですね」、
「お気持ちは理解しました」
と言って興奮した感情を落ち着かせ、相手の呼吸がゆっくりになってきて落ち着いてきたら、
「おっしゃることは分かりました。では具体的にはどうすればご満足いただけますか」、
「どこがいちばん問題でしたでしょう」
と事実確認をした後に、
「では、~のように対応させていただきます」
と解決策を示します。
クレームの8割が「理解されたい」ということなので、共感力がものを言うのです。
この時「規則なので」、
「普通は~」、
「他のお客様は」
といった言葉は火に油を注ぐことになるので注意が必要です。
社内で共感力のある上司だと、指示が命令に聞こえず、部下も本音が出しやすくなります。
厳しい指摘も期待に変わるということもあります。
チーム内のゴタゴタも、どちらが正しいかではなく、共感力を生かして何に引っかかっているかを論点にして建設的な議論が生まれます。
「人は論理で納得し、感情で決断する」といいます。
接客時も
「一番不安に感じておられるのはどこでしょう」、
「中々決められないのも無理ないですね」、
と共感力があれば、「この人から買いたい」となるのです。
共感力のある職場は、ミスの発見共有が速く、助けを求めやすいので、生産性・定着率・創造性が向上するのです。
正しい共感は、人を動かし、摩擦を減らし、信頼を生み、離職を防ぎ、結果を出す、つまり成果を出すための強力なツールなのです。
<共感疲労にならない>
共感しすぎて疲れてしまうということがあります。共感疲労の状態です。

自分も同じように感情移入してしまって、つらくなるのです。
「私が何とかしなくては」、
「断ったら嫌われるかも」と思ってしまうのです。

こんな時は、主語を私からあなたにして、
「あなたはとてもつらいんですね」とすることです。
「これは相手の問題で、自分の問題ではないのだ」と意識することです。
「私にもできることとできないことがあるんだ」と認め、
「~さんに相談してみてはどうかな」と言ってみることです。
また、長時間長々と聞かないで、「30分なら話を聞けるよ」と言って、時間を区切ったり、休日や夜は「また今度でもいいかな」と、応じないようにしたりすることもいいでしょう。
そして、共感疲労してきたなと感じたら、少しその場から離れて外の空気を吸ったり、顔を冷たい水で洗ったり、深呼吸したりするとよくなります。
飛行機に乗った際に聞く安全説明の中に、
「ご自分の酸素マスクを先にお付けください」というのがあります。
まず自分が元気でないと相手を助けることはできないのです。
逆に言うと自分が元気であることが、周囲の人への最大の貢献となるのです。
<まとめ>
共感は、相手に寄り添い続けることではありません。
一時的に横に立ち、相手が自分で立てるような状態に戻す手助けをすることなのです。
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