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解約増加への対応策は新規獲得の強化じゃない

SaaSで解約が増えてきた。
良いことではないが、そのようなタイミングはある。

しかし、そのときにどう考えるかはとても重要だ。

「新規獲得を強化してカバーしよう」

安易な解決策として、決まって出てくる言葉だ。

もちろん、売上やMRRを維持するという意味では間違いではない。

減った顧客を新規で補えば、売上は維持できるかもしれない。

資料の数字も、それなりに見栄えがする。
会議も平和に終わるだろう。

ただ、それは解約が増えたことへの解決策ではない。

解約が増えているという問題を新規獲得というブルーシートで覆い隠しに行っているだけである。

売上を維持するための対応であって、解約が増えた原因への対応ではない。

解約が増えているということは、何かしら顧客が離れる理由があるということだ。

価格改定かもしれない。
営業による受注の質かもしれない。
オンボーディングかもしれない。
プロダクトそのものかもしれない。

理由は様々あるが、共通していることがある。

解約の原因を放置したまま獲得した新規顧客も、いずれ同じ理由で解約する可能性があるということだ。

原因を特定しない限り、「新規顧客は未来の解約予備軍」かもしれない。

にもかかわらず、解約が増えてきたことに対して、

「営業や広告を強化しましょう」

という流れになる会社は少なくない。

それは解約対策ではない。

ただの補充である。
スーパーの商品棚なら補充で済む。

顧客はそうはいかない。

解約が増えたときに見るべきなのは、契約数の増減ではない。

顧客が、なぜ「もういいです」と思ったのかである。

そこを見ないまま新規だけ増やしても、その新規は半年も経たないうちに、同じアンケートを書いているかもしれない。

数字もある程度は維持できる。
MRRもある程度は維持できる。
経営会議の空気もある程度は維持できる。

でも、問題が解決されたわけではない。

見えている数字を維持しているだけで、顧客が離れる構造はそのまま残っている。

解約は悪い出来事だ。
だからこそ、数字だけを見て安心してはいけない。

しかも、本当に怖いのは解約そのものではない。

解約を「新規で埋めればいい数字」くらいにしか見なくなることだ。

その瞬間から、会社は原因ではなく症状を追いかけ始める。
そして、症状だけを追いかける会社は、だいたい治療が遅れる。

解約が増えてきたなら、やるべきことは、その原因を治療することだ。

なぜなら、解約はある日突然やってくるものではないからだ。
多くの場合、顧客の不満は何ヶ月も前から積み上がっている。

利用頻度が落ちる。
活用されなくなる。
期待と現実にズレが生まれる。

そして、最後に解約という形で表面化する。
つまり、解約は結果であって始まりではない。

だから、解約が増え始めた頃には、すでに問題は進行している。

今見えている解約件数がピークとは限らない。
むしろ、そこから増える可能性の方が高い。

ここで新規獲得を強化しても、その新規顧客も同じプロダクト、同じ体験、同じ構造の上に乗っている。

今月の数字は守れるかもしれない。
来月も何とかなるかもしれない。

しかし、時間差で同じ方向に動く可能性がある。

解約を新規で覆い隠しても、その新規が後から同じように解約し始める。

このレースを、いつまで続けられるのだろうか。

一気に表面化したときには、もう遅い。
その頃には、新規獲得も鈍り始める。

その頃になって、慌てて原因を探し始めても、顧客は待ってくれない。

解約は、たまに未来を少しだけ見せてくれる。

問題は、その景色を警告として扱えるかどうかだ。


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