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「ザ・オーケストラマッチ」私的レポ ~プロレスとオーケストラの共演が唯一無二すぎた~

プロレスラーとオーケストラが、同じ舞台に立つ——。目にしたとき、正直、「おお!」と思った。プロレスの試合観戦の空気は大好き、一方で、生のオーケストラのサウンドをがっつり浴びる感覚も個人的に大好物だ。その二つが交わるなんて、俺が行かなきゃ誰が行く、という気持ち。とはいえ、いったいどんな光景を見られるのか、まったく想像がつかない。8割の期待と「どうなんの…?」という2割の不安を抱えたまま、とんでもない猛暑の中を都会まで乗り込んだ。

インパクトがすごいポスター

会場は東京国際フォーラムのホールA。高級感あふれるコンサートホールに詰めかけたのは、選手のTシャツやタオルを首から掲げた大勢の新日ファン——という、控えめに言っても異様な光景だった。フルオーケストラ用に組まれたステージはいつ見てもワクワクするが、そこにリングは無い。なのに、開演前からもう空気は試合会場そのもの。指揮を務めるのは柳澤寿男さん、演奏は京都フィルハーモニー室内合奏団特別交響楽団。プログラムには「世界初の異種格闘技コンサート」とある。これは前代未聞だ。

開幕、いきなり刺さる「The Score」

まずは新日本プロレスのオープニングでおなじみ、Emerson, Lake & Powellの「The Score」。これがオーケストラによるゴージャスなファンファーレにアレンジされてスタート。……おお、いい!耳になじんだあのイントロが、生のオーケストラで分厚く鳴らされると、音が耳からではなく頭の真ん中へ直接ぶつかってくる。客席はもちろん手拍子でノリノリ。
続いて、司会の吉野真治アナウンサー(テレビ朝日)のコールで選手が入場。入場曲はすべてオーケストラの生演奏、しかもいつもより高級感マシマシのアレンジ。真壁刀義選手の「IMMIGRANT SONG」、本間朋晃選手の「KoKeShi」、マスター・ワト選手の「Way to the grandmaster」、天山広吉選手の「テンザン 時空」、そして棚橋弘至社長の「LOVE & ENERGY」。ステージ上にリングは無いはずなのに、いつものコスチュームでたっぷり時間を使って登場する面々を見ていると、もう完全に試合会場の音だ。個人的には天山選手の「テンザン 時空」のオーケストラアレンジがめちゃくちゃかっこよくて、鳥肌が立った。棚橋社長は現役時代と変わらぬ「Go Ace!!」のコール。……にしても、スーツがパッツパツでふっくらしたなぁwと、しみじみ。
「今日はとにかく、自由に声出しもしながら楽しんでください!」と真壁選手。ニコニコ楽しそうに話す本間選手に、全員から「え、何?何?」と突っ込みが入り、わちゃわちゃしたまま進行していく。

選手たちの歌、そして猫耳ピアノ

前半のハイライトは、選手による歌の披露。
初っ端から、本間朋晃選手が「愛は勝つ」を熱唱。……これはもう、色んな意味で言葉がいらない。ただただ衝撃と感動、それだけだ
続いて、天山広吉選手の「夜空ノムコウ」。歌声は知っていたけれど、生で、しかもオーケストラの切なくゴージャスなアレンジに乗ると、渋さが五割増し。思わずしみじみ聴き入ってしまった。
そして、可愛い猫耳とシッポ、蝶ネクタイをビシッと決めた真壁選手がピアノの前へ。披露したのは「ねこふんじゃった」——ただしピアノ協奏曲風Ver.。緊張感もありながら、オーケストラを従えて堂々と弾き切り、感想を求められると「ガキの頃、小学校でねこふんじゃったの速弾きが流行っててさぁ、できんだよ!」とドヤ顔。さすがです。
ここで前半終了。盛り沢山な内容に、すでに満足気味。とにかく後半も非常に楽しみになってきた。

後半戦——指揮、和太鼓、そしてレジェンド

後半の幕開けは、真壁・本間・棚橋の3選手による「指揮」体験。課題曲はブラームスの「ハンガリー舞曲第5番」、指揮の見本としてよく取り上げられる、定番のあの曲だ。基本に忠実な真壁選手、大胆(?)な独自アレンジの本間選手、最後にしっかり決めポーズをとろうとチャレンジして、結果あたふたしちゃった棚橋社長。客席の拍手投票の結果、勝者は真壁選手。指揮者の柳澤さんから、賞品としてタクト(指揮棒)が贈られた。

続いてはマスター・ワト選手が和太鼓で登場。坂口征二さんのテーマ「燃えよ荒鷲」を、和太鼓とオーケストラで硬派に。コスチュームも相まって、ワト選手の太鼓がやたらと様になっていた。
そして、個人的に一番グッときたのが、レジェンド選手の入場曲オーケストラメドレー。スクリーンに過去の名勝負映像が流れる中、スケールの大きなアレンジが重なっていく。ドラゴン・スープレックス(藤波辰爾)、THE ROOM(小林邦昭)、Martial Arts(蝶野正洋)、パワーホール(長州力)、そしてINOKI BOM-BA-YE(アントニオ猪木)。世代のど真ん中ではない自分でも、映像に残る熱く激しい闘いは、まったく色褪せない。むしろ、いま活躍する選手たちも含め、多くのプロレスラーがこの闘いに憧れ、その道を目指したんだよな——と思う。本当、かっこいい。
演奏後、選手たちが往年の名試合に熱くなった思い出を語る中、真壁選手は長州力選手の入場の早さをネタに。かつて長州さん本人がテレビで語ったエピソードを生で聞けて思わず感激w
続いたのは、棚橋弘至社長のデビューからの歴代入場テーマ曲メドレー。STRANGE、DO IT MYSELF、HIGH ENERGY、LOVE & ENERGYと立て続けに演奏され、ペンライトの揺れる客席からは棚橋コール。社長はオーケストラに合わせてエアギターで煽るも、途中から感極まって目を赤くする。演奏後は目をこすりながら「いやぁ…ちょっと…」と言葉に詰まっていた。久しぶりに浴びるコールと声援は、やっぱりたまらないんだろう。
そしてラストは、往年のプロレス中継でおなじみ「朝日に栄光あれ」。自分は世代ではないけれど、昭和からプロレスに熱狂してきたオールドファンには、たまらない一曲だったろう。
全曲終了後、棚橋社長の計らいで、全員が並んで記念撮影。バックにはオーケストラ。この絵面が個人的にはたまらない!そして締めは、社長が音頭を取って…となると、もちろん会場全員で「あいしてまあああああす!!」。本当に久しぶりに、生で聞けた決め台詞。これだけでも、来た意味があったようなものかもしれない。

なんちゅう光景だ。。

リングの外でも、みんな愛されている

今回のコンサートは、小児がんの子どもたちとご家族を支援する「ゴールドリボン活動」のチャリティーでもあった。終演後にはロビーで、棚橋社長や選手たちが自ら募金活動をする姿も見られた。ファンと笑顔で言葉を交わすその光景に、みんな本当に愛されているんだなあと、じんわり。

「異種格闘技」というコピーは、大げさじゃなかった

コンサートホールのステージに、楽器を抱えた演奏者の方々をバックに新日の選手が並ぶ。その画がとにかく新鮮で、理屈抜きに楽しい時間だった。
最後、棚橋社長が「プロレスほど、選手のイメージと闘いの記憶が音楽で固く結びつくものはない」と仰っていたが、確かにその通りだと思う。オープニングの「The Score」も、各選手の入場曲も、聴くだけでファンの脳裏に多くのシーンが蘇るのは間違いない。
結局のところ、プロレスも音楽も、「人間が、自分のパフォーマンスでどこまで人を熱くできるか」の勝負なんじゃないだろうか。リングの上で個性を爆発させる選手も、ステージの上で世界をつくるミュージシャンも、やっていることの根本は、案外近い。ジャンルの壁を超えて、その二つが本気でぶつかった時間。世界初の「異種格闘技コンサート」という大げさなコピーは、少しも大げさじゃなかった。
また、こんな催しがあったなら——きっと行くだろうなと、はっきり感じた一日だった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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