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「野火」(備忘録的感想)

この作品も、終戦80年企画として角川シネマ有楽町で上映された。
この作品の評判は聞いたことがなかったが、監督が市川崑という事で観ることにした。

舞台は第二次大戦中のフィリピンのレイテ島。
田村(船越英二)は肺病を患ったことで、分隊から診療所に行くように分隊長に命じられていた。
しかしたいした症状ではないため診療所から追い出され、分隊に戻ったところで分隊長からなぜ戻ってきたのかと叱責される。
まともに戦う事が出来ない兵士は足手まといになると、田村は再び診療所行きを命じられる。
診療所に戻るものの、やはり田村は診療所に入れてもらえなかった。
診療所の外の森には、田村同様症状が軽いために診療所に入れてもらえない兵士たちがたむろしていた。
田村はしかたなくそのグループに参加する。
やがて米軍の攻撃が始まり、診療所は炎に包まれた。
田村たちのグループ、そして診療所の兵士たちは逃げ出すが、重症の兵士たちは逃げられずにそこで命を落とした。

その後田村は森をさまよい、現地人の家や村落を訪れる。
そこで現地人から食料を奪ったり、命を奪ったりした。
そして別の部隊の日本軍と出会って合流し、他の兵士たちと一緒に撤退命令の集合地点に向かう。
その道すがら、診療所の森の中のグループだった安田と永松と再会するが、二人は集合地点には向かわず留まると言った。
兵士たちは川を渡る難所までたどり着くが、そこには米軍が待ち伏せしており、ほとんどの兵士はそこで殺されてしまう。
白旗を振って投降した兵士も、錯乱した現地語を話す米兵に射殺された。
行き場を無くした田村は、やむを得ず安田と永松が隠れている場所に戻る。

感情を表に出さず、上官の命令に素直に従う田村だが、ストーリーが進むにつれて少しずつ常軌を逸脱していく。
無人の村で現地人と鉢合わせし、つい射殺してしまったところから、彼の中で何かが変わったのだろう。
その後別の部隊と合流したあたりから、キャラ変してやや饒舌になっている。
そしてラストは安田、永松との殺し合いとなる。

原作は大岡昇平で、大岡の従軍記「俘虜記」を補足する作品として発表されたらしい。
ただ、「俘虜記」が大岡の実体験をベースにしているのに対し、「野火」は完全にフィクションとの事だ。
後半、安田、永松と合流した際、この二人は死んだ兵士を「猿」と称して食べている。
銃撃音の後に「猿を逃した」と言うセリフがあるので、あるいは死んだ兵士ではなく仲間を銃撃して食べていたのかもしれない。
原作では、そのあたりははっきり表現されているらしいが、映画では直接的な表現にはなっていなかった。

とは言え、戦時中の狂気と言う部分はしっかり描かれていた。
この映画では、戦争モノによくある「お国のため」などというタテマエは登場しない。
全員が、自分が生き残るために必死である。
主役の船越英二は、「時間ですよ」や「熱中時代」の穏やかなイメージしかなかったため、こういう演技をする役者なのかとかなり驚いた。

2015年に塚本晋也が自ら主演でリメイクをしているらしいので、機会があればそちらも観て見たいと思う。

102.野火

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