私、こんなものを観てきました〜岩井俊二編
児玉さんがリクエストしたのは、Remediosの「Forever Friends」だった。
思わず「おぉー!」と声が出る。
児玉さんというのは、お笑いコンビ・サルゴリラの児玉さんのこと。聞いていたのは深夜ラジオ『又吉・児玉・向井のあとは寝るだけの時間』。3人のなかでは“ガサツ系”(失礼!)の児玉さんが、この曲を好きだというのがかなり意外だった。
このアーティスト名と曲名でピンとくる方は、かなりの岩井俊二監督通だと思う。
この曲は、少年たちと少女のひと夏の日々を切なく描いた、岩井監督の初期の名作『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』のテーマ曲だ。このサントラは何回となく繰り返し聞いた。
ガサツなようでいて、少年の心も持っているのね❤️児玉さん!
岩井監督と言えば中山美穂さん主演の『Love Letter』が有名で、漏れなく私もそこから数々の岩井作品にハマったクチである。
『undo』『スワロウテイル』『PiCNiC』『リップヴァンウィンクルの花嫁』……。
その独特な映像美や、どこか無国籍風な浮遊感漂うストーリーが魅力だが、私は作品の中にチラチラ見え隠れする「不穏感」に、なんだかいつもぞわぞわさせられてしまう。
そしてそのぞわぞわの極地で、私が最も好きな作品が、芳本美代子さんと浅野忠信さん主演の『FRIED DRAGON FISH』だ。
◇
インターネットの黎明期、とある探偵事務所に、情報収集ツールとしてのコンピュータ導入の営業(なんと、田口トモロヲさんである)がやってくる。
お試し期間のインストラクターとして登場するのが、芳本美代子さん演じる「プー」。
ピンクのベスパに乗って、アバンギャルドなスタイルで颯爽と現れる。名前からして中華系の女の子という設定のようだが、見かけに反してシゴデキなIT女子なのだ。


探偵が抱える「生物学者の熱帯魚・ドラゴンフィッシュ盗難案件」を例に情報収集のノウハウを伝授するのだが、調査を進めるうちに、探しているドラゴンフィッシュはただの熱帯魚ではないことが判明していく。
インストラクターという立場も忘れ、案件に夢中になるプーの前に現れる不思議な青年(浅野忠信)。倉庫のようながらんとした部屋で、彼はたくさんの熱帯魚を飼っていた——。
チャキチャキとおきゃんなプーを演じる芳本美代子さんが、とにかくめちゃめちゃかわいい。
(余談だが、のちに劇団☆新感線の代表作『髑髏城の七人』(1997年版)に彼女が出演した際も見に行ったのだが、そこでもおてんば娘ぶりが発揮されていて、最高にかわいかった)

とてもキュートでした
「髑髏城の七人」より
ドラゴンフィッシュ目当てで青年へと近づくプー。しかし、どこか浮世離れした得体の知れない彼に、次第に彼女は惹かれていく。そして彼もまた……。
純粋でありながら、同時に狂気を併せ持つ浅野忠信さんの不穏感が半端ではない。


彼の正体は最後まで解明されないが、特殊な境遇に置かれているのであろうと予測される孤独感は、大友克洋の『AKIRA』(最近Eテレで再放送されてましたね)や、昔懐かしい豊川悦司&武田真治の超能力ドラマ『NIGHT HEAD』に通じるものがある。
ラストシーンのオチだけを見ればコメディと言ってもいいはずなのに、しっかり極上のサスペンス・ロマンスに昇華させてしまう岩井俊二監督は、さすがだなぁ…
