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液冷と指先、AIの身体を支えるミネベアミツミ

AIサーバーの中で、水と電気が同じ箱に入ろうとしている。

高校の理科室なら先生がいちばん先に注意する組み合わせだ。それが今、生成AIを動かす巨大なサーバーの中で、ほとんど避けられない選択肢になっている。GPUが熱くなりすぎるからだ。空気だけでは冷やしきれない。だから冷たい液体を熱源の近くまで通す。

もちろん、そこに必要なのはGPUだけではない。液体を送るポンプ。水圧を見るセンサー。漏れを見つけるセンサー。風を送るファン。ファンを静かに回すベアリング。異常な熱を読む赤外線センサー。大量のデータを通す光コネクタ。電源を安定させる半導体。

AIという言葉から、読者が最初に思い浮かべるのはエヌビディアのGPUだと思う。ぼくもそうだった。演算する頭脳。巨大な半導体。データセンターの主役。そこまではわかりやすい。

ただし、フィジカルAIの話になると、主役の位置が少し変わる。AIが画面の中で文章を書く段階から、現実の機械を動かす段階へ進むと、熱、振動、摩擦、重さ、音、電池、配線、液体、落下、故障が急に前に出てくる。つまり、AIが身体を持つ。

この記事で扱うのは、その身体の側にいる会社だ。ミネベアミツミ。小径ボールベアリング、モーター、センサー、アナログ半導体、コネクタ、電源部品を持つ会社である。祖業の顔は精密部品メーカーだが、今の顔は少し違う。AIサーバー、ヒューマノイド、LiDAR、ドローン、車載、医療のあいだに散らばる「小さな物理の問題」を、まとめて引き受ける会社になりつつある。

この記事で見るのは三つだ。

  1. フィジカルAIとは何か。なぜAIが現実世界へ出ると、ソフトウェアだけでは足りなくなるのか。

  2. ミネベアミツミの部品がどこに入るのか。ベアリング、モーター、力覚センサー、液冷センサー、光コネクタ、電源ICが、どの痛点に効くのか。

  3. この話を投資テーマとして読むときの注意点。技術発表と量産採用は違う。

では、AIが身体を得るとき、いちばん先に壊れやすいのはどこなのか。

フィジカルAIは頭脳の話だけでは終わらない

フィジカルAIという言葉は、少し大げさに聞こえる。けれど中身はそんなに難しくない。AIが文章や画像を作るだけでなく、カメラで見て、センサーで感じて、モーターで動き、現実のものを押したり、運んだり、握ったりする話だ。

人間でたとえると、これまでのAIは頭の中で考えるのが得意だった。テストの問題を解く。文章を書く。画像を見分ける。けれど、現実の世界でコップを持つには、頭だけでは足りない。指がいる。関節がいる。力加減がいる。落とさないように触る感覚がいる。

フィジカルAIは「AIに体育の授業を受けさせる」ようなものだ。数学の点数が高くても、バスケットボールを投げるには腕の使い方を覚えないといけない。スラムダンクの山王戦で、桜木花道が最後にジャンプシュートを決める場面を思い出す。あれは頭で「入れたい」と思うだけでは終わらない。足の踏み込み、手首の角度、身体の記憶がいる。

AIも同じだ。倉庫で箱を持つロボット、工場で部品を組み立てるロボット、病院で人を支える機械、自動運転で周囲を見るセンサー。どれも、頭脳だけではなく身体がいる。

そして身体を持った瞬間、ソフトウェアの世界では見えにくかった問題が押し寄せる。関節は摩耗する。モーターは熱を持つ。センサーはノイズを拾う。電池は切れる。ケーブルは断線する。水は漏れる。振動は映像をぶらす。小さなズレが積み重なる。

AIが賢くなれば、ロボットも一気に進むと思っていた。違う。AIが賢くなるほど、身体側の未完成が目立つ。

ミネベアミツミは小さな物理の会社である

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