🧹06. 散らかる家の共通構造|お嬢様
─ 机は“滞在禁止”にする ─
朝のリビング。
今日はメイが遊びに来る日だというのに、
お嬢様は机の前で固まっていた。
「どうして……、昨日片付けたはずなのに」
机の上には、読みかけの本、レシート、チラシ、ヘアゴム、食べ終わった食器。
見事なカオスである。
「性格かしら……
わたくしが、だらしないから……」
その時、隣の部屋から音もなく双子メイドが現れた。
「いいえ、これは片付かない構造ができてしまってるだけです!」と、テキパキ。
「散らかるべくして、散らかっている」とシレット。
お嬢様は瞬きをした。
「構造……ですの?」
テキパキはヘアゴムを持ち上げる。
「この子、“帰る場所”あります?」
沈黙。
「……ない、かもしれませんわね」
「それです」
テキパキは机を軽く叩く。
「机の上が散らかる家には共通点があります」
シレットが短く言う。
「“仮置き”が最終地点」
お嬢様は、はっとした。
机は食事や作業をする場所のはずだった。
けれど今は、通過した物の終着駅になっている。
シレットが宣言する。
「机は、滞在禁止」
「……滞在禁止?」
「机の上に置いていいのは、“今使っている物だけ”」
テキパキが続ける。
「それ以外は、5歩以内に帰れる場所を作ります」
「5歩……」
双子は動き出した。
・読みかけの本は本棚の左端へ
・レシートはレシート保存袋へ
・ヘアゴムは小皿へ
・チラシはまとめて紙袋へ
・鍵は玄関の靴箱の上へ
完璧じゃない。ざっくりでいい。
帰る場所を決めるだけ。
10分後。
机の上には、本とペンだけが残っていた。
「まぁ。視界が急に開けた気がしますわ」
テキパキが笑う。
「空間が空くと気持ちまでスッキリしますよね。次は同じ場所に戻すだけでOKですよ」
シレットが静かに続ける。
「片付けは気合いじゃない。帰る場所の設計のみです」
お嬢様は机を撫でた。
「……わたくしのせいじゃなかったのね」
「性格のせいにすると、設計を直せなくなります」
双子は同時に言う。
「家は、仕組みで回ります」
◆
午後、チャイムの音と共に扉が開いた。
「やっほー、遊びに来たよ。
って、あれ?今日なんか綺麗じゃない?」
メイが目を丸くする。
「あ、その、テキパキとシレットが……」
「えー、良いなーうちも来てほしい〜。
あ、頼んでたんだった」
その声を聞きつけたかのように軽いノック。
「メイさん、今週末はどうですか?」
「いいの?やったー♪
なんか急にやる気出てきたかも。
玄関くらいは綺麗にしとこうかな」
双子は、静かに視線を交わした。
🔜次回は、メイの家
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