暮らしの森|お日さまの匂い
森の空気は、春の日差しでふわふわしていた。
「よーし、今日はちゃんと洗ったぞー!」
メイは大きな洗濯カゴを抱えながら、
えっちらおっちら歩いていた。

「……ん?」
途中で少し首をかしげる。
「今日なんか、重くない?」
「洗濯物、こんな量あったっけ……?」
でも、最近しばらくため込んでいた気もする。
「ま、いっか」
そのまま木の近くまで運び、シーツを広げる。
ぱんっ。
シーツが風を含んで大きく膨らんだ。
「うわー、いい天気〜」
次はタオル、その次はシャツ。
洗いあがった洗濯物からは、
石けんとおひさまの混ざった匂いがした。
「よしよし、いい感じ」
ぱちん。ぱちん。
洗濯バサミを止めながら、メイは満足そうにうなずく。でも、その手が途中で止まった。
「あれ?」
カゴをのぞく。
「洗濯バサミ足りないや」
「んー、取ってくるかぁ……」
そう言いながら、一度家の方へ戻っていった。
白いシーツが、風に揺れて
ふわり、ふわり。
その横に置かれたままの洗濯カゴが、
もぞもぞと動き出した。
「……ぷはっ」
突然、モコがぴょこっと顔を出した。
きょろきょろと辺りを見回す。
風に揺れるシーツを見つけると、そのまま近づいていった。
モコはシーツへ顔を埋める。
「おひさまの匂いがするモコ」
ふわり、と風が吹く。
シーツが揺れて、モコの顔を包んだ。
「ふわふわモコ〜」
嬉しそうに笑いながら、モコはそのまま両手でシーツを掴む。
ぷらーん。
「わあ! 」
もう一回。ぷらーん。
「わーい!」

そこへ、通りかかったハヤトが足を止めた。
しばらく無言で眺める。
「モコ……何してるの?」
「ブランコだモコ!」
なるほど、と思いながら、ハヤトはモコの手元を見る。
「それ、手が辛いだろ。
ちゃんと結んだらもっと楽かも」
「ほんとモコ!?」
ハヤトはシーツの端を二箇所結び直した。
即席の布のブランコができあがった。
「すごいモコー!」
モコは目をきらきらさせた。
そのまま、ぽすん、と座る。
ハヤトが後ろから軽く押した。
ゆら。ゆら。
「わーーー!たのしいモコー!」
楽しそうな声が、森へ広がる。
その時。
「洗濯バサミあったよ……と……」
戻ってきたメイが固まった。
風に揺れるシーツと、即席ブランコ。
満面の笑みのモコと、その横で笑ってるハヤト。
「ちょっ!?!?」

モコは揺れながら笑っている。
「たのしいモコー!」
ハヤトもちょっと笑っている。
「ははっ。うまく行った」
メイの声が森に響いた。
「もーー!せっかく洗ったのにーーー!!」
でも、風に揺れるモコを見ているうちに、だんだん怒る気が抜けていく。
「んー……」
メイは頭を軽くかいた。
「でも楽しそうだし……ま、いっか」
シーツは太陽の匂いがして、
モコは楽しそうで、
森の空気はのんびり暖かかった。
次は誰の道に進む?

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