見出し画像

蒙霧升降(ふかききりまとう)|深い霧に秋の息吹を感じる

早朝、窓を開けると白い霧が庭全体を覆っている。それは夏とは異なる、冷たく、透明感のある霧。足元から立ち上る霧のなかで、夏と秋の呼吸が同時に混在している。

蒙霧升降(ふかききりまとう) は、立秋の末候であり、8月18日から22日頃にかけての約5日間。深い霧が朝と夜に立ちはじめ、山間や水辺に漂う—その光景を表している。「蒙」は覆う、「霧」は霧そのもの、「升」は立ち上がる、「降」は下りてくる。朝霧が山々から立ち上り、夜霧が水面から降りてくる、そうした現象の繰り返しを指す。

霧に包まれる夜明け

立秋から処暑へ向けて進むこの時期、朝方の気温が急速に下がり始める。昼間はまだ陽射しが強いが、夜間の冷え込みが日ごとに深まる。その温度差が大きくなることで、水蒸気が凝結しやすくなり、朝霧が濃くなる。田畑の上、水辺の近く、樹々のあいだ—至る所で白い霧が立ち上り、辺り一面を柔らかく覆う。

秋の幽玄を味わう

霧のなかで音は静まり、視界は限定される。そうした環境が、夏の喧騒から秋の静寂へ心を導く。日本の美学では、ぼんやりとした見え方を「幽玄」と呼び、完全に見えない世界のほうが、想像力を刺激し、心の奥深さを呼び覚ますと考えてきた。霧は決して邪魔な存在ではなく、季節の転換を演出する舞台装置—そのように感じ取ることができる。

霧の中の散策

朝靄のなかでの散歩は格別。いつも歩く道も、霧に包まれると別世界に変わる。足音も自分の呼吸も、いつもより近く聞こえる。周りの景色が見えない分だけ、匂いや音、肌で感じる湿度といった五感が研ぎ澄まされる。秋の霧は、視覚に頼らない感覚を目覚めさせてくれる。

立秋は終わり、次は処暑の初候・綿柎開へ。綿花の蕾が開き、秋の実り支度が本格化していく。


二十四節気や七十二候を手元で楽しめるiPhoneアプリ「暦のたより」、よかったら覗いてみてください。


参考にしたサイト・文献


いいなと思ったら応援しよう!