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【小説】目が覚めたら夢の中 第5話:主はどこに

主はどこに

まったく面倒なことになったものだ。
黒髪の青年は机に肘をつき、組み合わせた手の甲に額を置いて、大きく息を吐く。

自分のみであれば、このままでもよかったものの、テラにまで干渉するとは。
人の美醜には興味はないが、テラの容貌は奴の興味を引くものであったか。
これは政務にかまけて、放っておいた自分への当てつけか。
それとも、わざと遠ざけておいたため、逆に気を引いてしまったか。

魔王の人への干渉は、自然災害のようなものだ。
その圧倒的な力の前には、魔法を使えるとしてもなすすべはなく、運が悪かったと思うほかない。
カミュスヤーナも色が奪われ、視力が低下したのには閉口したが、他の能力で補えたこともあり、領政が落ち着くか、他の者に引き継いだ後に対応を考えようと後回しにしていた。
なのに、また身近なところに干渉したのか。取り返そうとあがいたほうがよかったのだろうか。

カミュスヤーナが自分の考えに浸っていたところへ、ノックの音が響いた。
「カミュスヤーナ様、今お時間よろしいですか?」
「何用だ」
「テラスティーネ様の侍女が面会を申し出ておりますが。急ぎの用件とのことです」
カミュスヤーナは、その言葉に顔を上げ、通せと言葉を紡いだ。

「お忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます」
カミュスヤーナと机を挟んだ向かいの床に跪き、少女が言う。
「よい、顔をあげよ」

カミュスヤーナの言葉を受け、顔を上げた少女は、あらという感じで首を傾げた。
「目が見えるようになったのですか?しかも、そのお目の色合いは、テラスティーネ様にそっくりですね」
普段は両目を覆っている布が取り払われている。少女に向けられているのは青い瞳。

「テラスティーネについて、急ぎの要件があるとのことだが」
自分の目のことには答えず、カミュスヤーナは少女に、ここに来た用件について尋ねる。
「そうでした。テラスティーネ様とここ数日連絡が取れず困っているのです。カミュスヤーナ様は主の居場所をご存知でしょうか?」
私はてっきりカミュスヤーナ様とご一緒だと思っていたのですが、と少女は言葉を続ける。

「アンデンテ。私はテラスティーネを監禁する趣味はない」
「別に側において愛でていただく分には全く問題ありませんけど」
「アンデンテ。口を慎みなさい」
机の脇に立っていたカミュスヤーナの摂政役であるフォルネスが、口をはさむ。

「テラスティーネ様の居場所をご存知ですよね?」
フォルネスの言葉をスルーして、カミュスヤーナが知っていることを断定するかのような口調で、アンデンテは彼を見上げた。アンダンテの碧の瞳がカミュスヤーナを射抜く。
カミュスヤーナは青の瞳を眇めた。

「知らぬと言っても、信じないのであろう?」
カミュスヤーナの言葉を受けて、アンダンテはニッコリと笑った。
「命に別状はないが、今そなたの前に姿を見せることはできぬ状態だ」
「まさか、主に無体なことをなさっているのではないでしょうね?」

「アンダンテ」
フォルネスの低い声がかかる。
アンダンテはフォルネスの方に目をやると、軽く息を吐き、目を伏せた。
「私のお力になれることがあれば、おっしゃってください」
ひとまず方々への調整はしておきます、と言い、アンダンテはその場を辞した。

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