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【小説】魔王らしくない魔王様 第二十七話 摂政役ディオーナ

第二十七話 摂政役ディオーナ

私の名はディオーナ。
ヴァレール領の摂政役せっしょうやくをしております。摂政役せっしょうやくとは、領主の補佐を行う役職のことを言います。

今は隣のエステンダッシュ領に続く、境界転移陣の宿直所にいます。

「もうすぐ時間だわ。」
私は後ろに立っている銀灰色の髪、桃色の瞳の青年に声をかけます。青年の名はリシア。これからエステンダッシュ領に引き渡す人物です。

「きっと、エステンダッシュ領に行っても、また一から説明しないといけないわね。」
「それは・・わかっています。」
リシアはボソッと呟きました。

彼は先日ここヴァレール領の役場に現れました。私が見つけて声をかけたのです。彼はエステンダッシュ領から通知があった、現在行方不明の摂政役せっしょうやくカミュスヤーナ様に大変似ており、彼の目的も、エステンダッシュ領の摂政役せっしょうやく奥方であるテラスティーネ様に会うことだったのです。そのため、私から領主様にお伝えをし、領主様からエステンダッシュ領の領主様に連絡を取っていただき、今日境界転移陣を使うことに相成あいなったのです。

元々領主様の娘であるシルフィーユ姫様が、エステンダッシュ領の領主アルスカイン様と婚姻しており、その関連で領主様はカミュスヤーナ様の容姿をご存知でした。

リシアと実際対面された領主様は、エステンダッシュ領の領主に連絡を取ることを即決してくださいました。それほどまでに、リシアの容姿はカミュスヤーナ様とうり二つだったのです。

ただ、リシア本人はカミュスヤーナ様ではないと否定しています。

テラスティーネ様に会う算段はあるようなので、こちらとしてはエステンダッシュ領に送り出せば、あとは何とかしてくれるでしょう。

「エステンダッシュ領側では、現在摂政役せっしょうやく代理をしているフォルネス様が迎えに来ているそうです。フォルネス様は、カミュスヤーナ様が領主だったころの摂政役せっしょうやくですので、話は早いでしょう。」

「何から何まで手配していただき感謝します。」
リシアが頭を下げます。

本当に、言動の端々から、ただの傭兵ではないことがにじみ出ています。

一体事故にあってから、何があったのかしら?

リシアは、エステンダッシュ領に向かう目的以外、今までどこにいたのか、何をしていたのかなどは話してくれませんでした。本当に寡黙かもくです。

こちらから提供するといった泊り処も断られ、ミシャの通常の宿泊所を使うし、服も今着ている物でいいと言い張るし。

カミュスヤーナ様はもう少し人付き合いがよかったように思うのに、ほとんど表情が変わらないし。整った容貌ようぼうで表情が変わらないと、本当に彫刻を見ているかのようです。人間味がないというかなんというか。

「どうかされましたか?」
自分の顔をじっと見つめているのに気づいて、リシアは私に問いかけます。

「いえ、私は境界転移陣を抜けてしまうと、こちらに戻ってくるのが大変なので、転移陣の前で失礼しますね。」

リシア本人が聞いていれば、随分失礼なことを考えていました。慌てて言葉を濁します。

「ディオーナ様。お時間です。」
境界転移陣担当の騎士が私たちを呼びに入ってきました。

「分かりました。行きましょう。」
リシアを促して、私たちは騎士を追って、宿直所を出て、境界転移陣の前に立ちました。

境界転移陣には他に隣領に向かう人が列をなしていました。

境界転移陣は、ぱっと見ただの門です。ただし向こう側は見えません。ゆらゆらと青い陽炎かげろうただよっているように見えます。その横には門番がいて、ヴァレール領の役場で発行される通行手形を見せています。

私たちを案内してきた騎士が業務中の門番に声をかけます。門番は一旦業務の手を止め、こちらを向きました。

「話は伺っております。ではこちらの門をお潜り下さい。あちらでエステンダッシュ領の迎えの方がお待ちです。」
私はリシアを見て、門へ向かうよう促します。

「ではリシアさん。目的を果たされることを願います。」
「ありがとうございます。貴方にも幸せがあるように。」

リシアが境界転移陣を通るのを、そのまま足を止めて見送りました。

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