ネット環境が悪い宿は嫌ですよね。だから52歳おじさんが最新Wi-Fi 7を導入しようとするもリタイア寸前の話し
「ネット環境が悪い宿には、皆さんがっかりしますよね」
今や旅行や出張先を探すとき、Wi-Fiの安定性は食事やベッドのクオリティと同じくらい重要な「インフラ」であり、「あたり前のおもてなし」の一部になっています。
だからこそ、私の実家をリノベーションしてオープン準備を進めている2拠点居住の宿「エブリディINN(仮)」でも、ネット環境だけは絶対に妥協したくないと考えていました。
しかし、そのスタートは謎解きから始まります。
まずは実家の固定電話がどうなっているのか、毎月届く「NTT の電話料金の案内」をじっくりと調べることから始まりました。手元の書類を紐解いていくうちに、どうやら回線事業者としてMarubeni光(マルベニ)が関わっているらしいぞ、と割り出すことに成功。
さっそくマルベニのホームページを探し当て、そこにあった「お問い合わせフォーム」からメッセージを送ってみました。すると後日、私のスマホに1通のメールが届きます。「よし、これで進められる」と、記載されていた連絡先に電話をかけてみたものの、電話口に出てくれたオペレーターの若い女性から飛び出すのは謎の専門用語の数々。
「プロバイダの契約はどうされますか?」
プロバイダという言葉単体なら、さすがに私も分かります。しかし、それが他の専門用語とどう繋がっているのか、どういう仕組みでネットが動くのかという「つながり」が全く見えてこない。必死に食らいつく52歳のおじさんに対し、まるで娘のような年代のオペレーターさんはとても親切に、しかし容赦なく最新のネット事情を教えてくれました。
その時に彼女の口から飛び出したのが、後に宿の通信環境を左右することになるであろう、「IPv6」でした。
謎の「V6」の正体と、150平米の壁
オペレーターさんは真面目なトーンで「これからはIPv6(アイピーブイロク)の時代です」と言うのですが、昭和のモータースポーツ全盛期を生きてきた私にとって、「V6」という響きはネットの規格ではなく、あのセナとプロストが世界を驚愕させたマクラーレン・ホンダのV6ツインターボエンジンを想わせるものでした。
頭の中で、当時のF1中継のテーマ曲だったT-SQUAREの『TRUTH』のあの甲高いシンセサイザー音が鳴り響いた瞬間、私の脳内ジャッジは一瞬で下りました。
「V6。それは絶対に速いに違いない!」
専門用語のつながりはよく分からないけれど、「ホンダのV6エンジン並みに速いインフラが手に入るなら」という、男のロマン大爆発の理由でその場でプロバイダ契約を即決しました。
後からオペレーターさんの解説を要約すると、まさにそのイメージ通りでした。これまでのネット(IPv4)が「誰もが通る大渋滞の一般道」だとすれば、新しい「IPv6」は「混雑を避けて、マクラーレン・ホンダのごとくすいすいブチ抜いて走れる専用の高速道路」のようなものかと。複数人が同時にネットを使う環境には、この方式が絶対に欠かせないとのことでした。
さらにオペレーターさんは、宅内にあるNTTの機械(ONU)に、自分でWi-Fi機器を購入して繋ぎさえすれば、すぐにでもその爆速の世界が使えるようになるところまで丁寧に教えてくれました。
「よし、やるべきことは分かった!」
無事に「V6」という強力なエンジンを手に入れた私。次の課題は、建物全体のカバーエリアでした。「エブリディINN(仮)」は1階が100平米、2階が50平米という、実家ならではの堂々たる広さがあります。
当初は「安心の国内メーカーであるバッファローの強力なルーターを1台、1階の真ん中に置いてみて、現地で速度テストをしながら足りない場所に中継機を足していこう」という合理的な作戦を立てていました。
スマートロックと監視カメラが、すべてを引っくり返した
ところが、宿の「未来のスマート化」をリアルにシミュレーションし始めた瞬間、その作戦は大逆転を迫られます。
「無人チェックイン用のスマートロックは、電波を遮断しやすい分厚い金属製の玄関ドアにつく」 「防犯用の監視カメラは、建物の外壁や軒下に設置する」
1台のルーターから一番遠く、しかもある壁の向こう側にある「セキュリティの要」となる機器たちに、果たして電波は届くのか? 機器の接続台数が跳ね上がっても耐えられるのか?
「これは1台置きじゃ、絶対に足りなくなるのでは?」
そう確信した私は、1台の親機から電波を延ばす従来の方法ではなく、複数の機器が連携して1つの巨大なWi-Fiエリアを作るという「メッシュWi-Fi(2個パック)」を最初から導入することを決意し、地元のケーズデンキ下妻店へと車を走らせました。
店頭の売場で店員さんと長い目で見た未来の投資について熱く語り合い、気がつけば最新規格のWi-Fi 7対応モデル「TP-Link Deco BE25(BE3600)」に決着。店頭で叩き出した価格は「税込26,000円」。おそらく、ネットの最安値と比較しても遜色ないであろうコスパで、快適通信環境の心臓部を無事に購入しました。
そして現場へ。しかし、古舘伊知郎がトラブルを実況する結果に
最強のエンジンを助手席に乗せ、実家へ。ちょうどこの日は職場の同僚の皆さんが集まり、BBQを開催する予定でした。私のシナリオでは、みんなが到着する前にサクッとこの怪物Wi-Fi 7を開通させ、お肉が焼けるのを待ちながら「見てよ、うちのWi-Fi。マクラーレン・ホンダ並みのV6エンジン積んでるから爆速だよ?」と、スマホのスピードテストをこれみよがしにひけらかして驚かせてやろう。接続作業しながら、頭の中ではあの『TRUTH』のイントロが完全に脳内で繰り返されていました。
大元であるNTTの機械(ONU)と、ピカピカのDecoをLANケーブルで繋ぐ。 物理的な接続は完璧。Decoのランプも点灯した。
「よし、これでスマホを繋いでスピードテストだ!」
とおもいきや、スマホの画面をいくらタップしても、一向に通信速度が計測できない。Wi-Fiのマークは出ているような、出ていないような。
焦って配線を見直し、電源を入れ直しているうちに、同僚たちが約束の時間に到着し無情にもタイムアップの瞬間が訪れ、開通を断念せざるを得ませんでした。
自慢の「爆速V6ターボ」をひけらかすどころか、ネットの「ネ」の字も披露できないまま、私はただただ悔しさを噛み締めながら肉を焼く網の前へと向かうことに。
ONUとDecoは確かに繋がっている。なのに、なぜ上手く環境設定ができないのか!? おじさんのデジタル格闘記は、同僚たちの「お肉美味しいですね!」の歓声の裏で、まさかの泥沼編へと突入なのか、、、。
頭の中で古舘伊知郎が、勝利を目前にガス欠でストップしたフェラーリのごとき私のトラブルを実況する声が聞こえてきそうです。勝利のチェッカーフラッグは待っているのか?おじさんのV6の話しは続きます!
